コロナ禍で変化?躍進する女性映画監督たち

2022/03/30
内藤 みか

アカデミー賞で女性が監督賞を受賞するのは今回のジェーン・カンピオン(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)で3人目。彼女は1993年に『ピアノ・レッスン』で女性監督初のカンヌ国際映画祭パルムドールも受賞しています。最近話題の女性監督作品をご紹介します。

カンヌでも28年ぶり受賞

近年、女性監督作品の受賞が相次いでいます。アカデミー賞でも2020年にクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』が作品賞と監督賞を受賞、2021年にはカンヌ国際映画祭で28年ぶりに女性監督作品がパルムドールを受賞しました(ジュリア・デュクルノー監督の『TITANE/チタン』)。

たとえば日本人だと河瀬直美監督作品の『殯の森』(カンヌ国際映画祭のグランプリ)が世界的に有名ですが、その作品には四季折々の美しい風景が盛り込まれていることが多く、味わい深いものになっています。女性監督ならではの演出のきめ細やかさは観ていてとても心地いいものです。

日本人女性監督で私が次の作品を心待ちにしているのは『あみこ』の山中瑤子監督です。女性だからこそ、女の子の心の中のエネルギーを描き切ることができるかただと思っています。そして『オルジャスの白い馬』の竹葉リサ監督も、海外ロケに果敢に挑戦するなど、作品を創り上げるパワーが並大抵のものではないと思っています。

世界はコロナ禍で変化した?

多くの女性監督の作品は、繊細な画像と物語で構成されていて、深みがあります。

迫力やアクションはそれほどなく、静かに、けれど深く人生について掘り下げていく作品が多いというのが個人的な印象です。そして、世界はこうした作品を求めるようになったのかもしれません。

大勢で集まり飲食する華やかな場は激減し、私たちは自宅で家族と過ごす時間が増えました。そうすると、日常のささやかなことに幸せを見つけ出したり、人生について深く静かに考える機会も増えたのでしょう。そして女性監督の作品には人々のそうした求めに応えることができる力があるかもしれません。

『ELLE』 2022年4月号は映画特集号。そのなかに女性監督の作品を紹介するページもあります。91歳の女性監督であるラナ・ゴゴベリゼの作品『金の糸』は、日本の金継ぎをヒントに作られた作品。欠けた茶碗を修復する金継ぎから人生の修復に思いを馳せるような物語が紡ぎ出されているようです。余韻がじわじわ沁みる作品も多い女性監督作品。今後の活躍も期待できそうです。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

内藤 みか
この記事を書いた人

内藤 みか

作家/脚本家/イケメン評論家。著書80冊以上。ケータイ小説時代から電子書籍の自著も多数。脚本担当のラジオドラマ『婚活バスは、ふるさとへ』(YBS)が文化庁芸術祭優秀賞&日本民間放送連盟賞優秀賞。 ツイッター https://twitter.com/micanaitoh ブログ https://plaza.rakuten.co.jp/micanaitoh/

内藤 みかが書いた記事

あなたへのおすすめ

カテゴリー記事一覧

pagetop