【解説動画】アカデミー賞8部門ノミネート映画『バイス』を町山智浩が徹底解説

2019/02/20
マガジンサミット編集部

(YouTube動画:https://youtu.be/Yk73m8yVoCA)

クリスチャン・ベール主演×アダム・マッケイ監督×ブラッド・ピット製作の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』チームが再集結したアダム・マッケイ監督最新作『バイス』が、4月5日(金)TOHO シネマズ日比谷ほかにて全国公開されます。

来週25日に開催される映画の祭典アカデミー賞直前企画として、18日に行われたトークイベントで、アメリカ在住ジャーナリストで映画評論家の町山智浩さんに、オスカー最有力作品『バイス』を徹底解説!!

アメリカ史上最強で最凶な副大統領

映画『バイス』は、アメリカ史上最強で最凶な副大統領、チェイニー䛾裏側を描く前代未聞、仰天実話映画。

本作をアメリカで鑑賞し、アダム・マッケイ監督、クリスチャン・ベール、エイミー・アダムスにインタビューを行った町山さん。

トークイベントの冒頭で、観客に感想を募った町山さん。「全体がコントみたいで楽しかったです。」と話した男性に対して「ほんと、そうですよ。実は(「バイス」の監督である)アダム・マッケイはお笑い出身の人なんです。アメリカのTVで『サタデーナイトフィーバー』という番組があって、当時の政治関係のニュースをコメディアンが政治家に扮してコントをしている。今でもやっているんですけど、これが本当に馬鹿げてるんですよ。2000年ごろにね、ちょうど大統領選でブッシュかゴアかという時に、茶化して『これからブッシュが大統領になったら、戦争を起こしちゃうからな!』なんてネタにしてたのが、マッケイ監督。本当に当たっちゃった。」と笑顔を見せた。

その他、本作でチェイニーがたびたび、フライフィッシングをしているシーンが出てくるが、ルアーをモチーフとして使用していることに対し、「なんの象徴ですか?」という質問に「ルアーを餌のふりして、魚を釣るのがフライフィッシング。9.11 テロの黒幕のイラクじゃなかった。チェイニーは 9.11 テロの“フリ”をしてイラクを攻撃させたり、ブッシュを釣っていました。(チェイニーは)国民やブッシュを“釣る男”だということを象徴しているんですね。」と語った。

そして本作のナレーターとして登場する“カート”という男性について「共和党の典型的な支持者ですね。白人で、都会に住んでいないブルーカラーの労働者。真面目に働いて、戦争が起きたら戦地に行くんです。そして彼らはブッシュに投票をしたんですね。今でいうトランプに投票した人たちです。真面目なアメリカ人の典型的な人たちです。」と解説。

アダム・マッケイ監督に町山さんがインタビューをした映像

「映画の主人公を副大統領にするなんて、前代未聞ですよ。チェイニーという人はイエール大学を退学しているんですけど、全米3位の大学なんです。でも、最終的に行ったワイオミング大学は183位。挫折人生なんですね。そんな人が副大統領になって2回も戦争をして、たくさんの方が亡くなっている。選挙の時にブッシュとチェイニーセットで出てきたんですけど、だれもチェイニーに投票していないですよね。でも彼が戦争を引き起こしてしまったんです。ブッシュはイエールも出ているし、ハーバードも出ているのに。そして、サムのバカにした演技が良かったですね〜。」

クリスチャン・ベールに町山さんがインタビューをした映像

「もう、太ったり痩せたりしない、なんて言っていますけど(笑)心臓が危険なんですって。役者さんって本当にも物知りですよ。いろんな役をやるために勉強をしていますから。クリスチャンも演じたチェイニーが心臓が悪いので、外科医に聞いて非常に研究したらしいです。そうしたら、撮影中に監督のアダムマッケイが倒れちゃって『俺、なんでも分かるから!』って監督を助けたらしいですよ。アダムはチェイニーのおかげで助かった!」

チェイニーの口を曲げるくせについて「最初の方は曲がってなかったんですね。でもだんだんと曲がってくる。それは防衛本能や抑圧があるから曲がっていくんだろうと。でも抑圧の原因はカミさんだろう!だってチェイニーの政治家に興味はなくって、ワイオミングで釣りをしていたりするのが楽しかったんだもん。奥さんにお尻を叩かれてそれが辛かったんじゃないかなと思いますよ。」

エイミー・アダムスに町山さんがインタビューをした映像

エイミー・アダムスについて。「この人は女優としてすごいですよ。チェイニーの奥さんをやって、スーパーマンの奥さんもやっているんですから。でもエイミーが演じたチェイニーの奥さん、リン・チェイニーというひとは、チェイニーを操り人形にしていたんですよ。コロラド大学を首席で出てるんですけど、自分が政治家になることができなかったから、夫で自己実現しようとしていた。とんでもないことですね。」

(サム・ロックウェルの写真がでてきて、観客大笑い!)

「すっげえ似てる!本当にすごい。もともと似てるんですけど、顔マネがすごい。」

最後に町山さんは「こういう映画、日本で作れますか?実際の政治家を主人公にして。それに出てくれる俳優っていますか。上映してくれる劇場は?日本って誰もやらないよね。法律で禁じられていないのに。アメリカでは(作られた側からしたら)こんなの訴訟したら恥ずかしいからやらないんですよ。

サタデーナイトライブは毎週やっているんです。トランプ大統領をアレック・ボールドウィンが演じて毎週出ているので(笑)アレックは今、アメリカの若い人たちに、本当にトランプだと思われていますよ。日本もいくらでもネタがあるのに、腑抜けばかりですね。」とコメント。

最後にアダム・マッケイ映像からコメントを紹介

アダム・マッケイ「一つ言えるのは“権力を疑え”ということだ。監視を怠れば政府は暴走する。国の危機に陥り崩壊するだろう。政府に動きがない時も自分のすべてを懸けてでも疑わなければダメだ。時には仕事を失い恥をかくかもしれない。でも歴史が証明してくれる。最終的には、あなたが正しいことをね。」と伝えた。

映画『バイス』(4 月5日(金)TOHO シネマズ 日比谷他全国ロードショー)

「バイス」:バイス・プレジデント(副大統領)を指すだけでなく、“悪徳”や“邪悪”という意味もこめられている―ワイオミングの田舎の電気工から“事実上の大統領”に上り詰め、アメリカを自在に支配し、アメリカ史上最も権力を持ったチェイニー副大統領の姿の前代未聞の裏側を描いた社会派エンターテイメント!

監督は『マネー・ショート』で、第 88 回アカデミー賞「脚色賞」を受賞、作品賞・監督賞・助演男優賞・編集賞・脚色賞の主要5部門にノミネートされ世界中からその手腕を認められたアダム・マッケイ。製作はプラン B エンターテインメントが手掛け、代表であるブラッド・ピット本人がプロデュース。出演に、チェイニー副大統領役には、業界引く手数多の実力派俳優で『ダークナイト』、『アメリカン・ハッスル』などで知られるクリスチャン・ベール、チェイニーの妻役には『アメリカン・ハッスル』、『メッセージ』のエイミー・アダムス、ラムズフェルド国防長官役に『フォックスキャッチャー』、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のスティーヴ・カレル、ブッシュ大統領役に『アイアンマン 2』、『スリー・ビルボード』のサム・ロックウェルなどオスカー候補常連の超豪華キャストが大集結!

アダム・マッケイ監督が、「クリスチャン・ベール以外にこの役をできる人を思いつかなかったし、もし断られていたら、多分この映画を作ることはなかった。」と語るほどのラブコールを受けたクリスチャンが、アメリカを操り、成り上がっていった男ディック・チェイニーの20代から70代までを、体重を約 20 キロ激増し髪を剃り眉毛を脱色するなどの見た目だけでなく、演技の面でも完璧なアプローチで演じ、見事なまでにオスカー俳優の迫力を見せつける。そしてアダム・マッケイ監督が『マネーショート』で光らせた型破りで自由自在な映像演出の手腕をさらにパワーアップさせ、観るものを魅了する!すでに今年度のアカデミー賞®大本命として大きな注目を集めている本作。アダム・マッケイ監督が「トランプ大統領よりも悪だ」と語るアメリカを操った〝史上最凶の副大統領〟といわれたチェイニー副大統領をどう、描くのか?!

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