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今年で31回目を迎えた伝統のスケートコンテストTampa AM(タンパアマ)が10月16日~19日(現地時間)に開催され、最後にロングランのフルメイクを見せた、ブラジルのアブナー・ピエトロ(20歳)が優勝。2位はメインとスイッチトリックを交互に見せ、最後にノーリーフロントサイド270ノーズスライドを決めたスイスのロッコ・ミュラー(19歳)、3位はカナダのクリス・セティナス(22歳)となった。
昨年準優勝の長井太雅(18歳)は今大会も決勝まで駒を進めたが、フルメイク(ノーミスで滑ること)の滑りを見せることができず5位。他にも八島璃央(15歳)が10位、平田琉翔(19歳)が11位と3人の日本勢が決勝の舞台で活躍を見せた。
【世界的なプロへの登竜門】
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世界的なプロを目指すスケーターにとって、最も重要で歴史のあるコンテストタンパアマは毎年フロリダ州にあるスケートパーク・オブ・タンパで開催されている。
金曜日に行われるラストチャンスオープン(予備予選)は、以下のいずれかに当てはまれば予選への出場資格が与えられる(150人)。
・ラストチャンスオープンのトップ10入りしたことがあり、タンパアマ予選に出場できるレベルだとわかる1分間のパート映像がある。
・世界的に知られているスケートカンパニーからのスポンサーがついている。
・Damn AmまたはTampa Amで好成績を収めたことがある。
・国際的なトップアマチュアとして認められている。
→1位は日曜日の準決勝に進出。
→2位から10位は土曜日の予選に進出。
※予選に出場する選手のキャンセルなどがあり、実際に予選に進出できる選手の人数はこれよりも多くなることがある。
土曜日に行われる予選は以下のいずれかに当てはまれば出場資格が与えられる(100人)。
・ラストチャンスオープンの2位から10位。
・Damn Am2025シリーズの2位から12位。
・世界的に知られているスケートカンパニーからスポンサーがついている。
・国際的なトップのアマチュアとして認められている。
→1位と2位は日曜日の決勝に進出。
→3位から30位は日曜日の準決勝に進出。
日曜日に行われる準決勝は以下のスケーターが出場。
・ラストチャンスオープン予選1位。
・Dam Am2025シリーズ優勝者(渡邊星那)。
・Far'N High 2025優勝者(長井太雅)。
・土曜日予選の3位から30位。
→トップ10人が決勝に進出。
決勝は以下のスケーターが出場(12名)。
・土曜日の予選1位と2位。
・準決勝の上位10人。
※skateparkoftampaホームページより
【アブナー・ピエトロ優勝のランを徹底解析】
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予選を2位で通過し、決勝へと進んだブラジルのアブナー・ピエトロ。
以下、ラン1本目のトリック。
※[]内はセクション名
[ギャップtoレール]ワンフットオーリーからのバックサイドリップスライド。
[ロングレール]バックサイドスミスグラインド。
[ダウンレール]バックサイド180 フェイキー50-50グラインド。
[ダウンレール]キックフリップフロントサイドボードスライド フェイキー。
[レール]バックサイド270リップスライド。
[クォーター]バックサイドノーズブラント。
[ハバ]キックフリップバックサイドKグラインド。
[ダウンレール]キックフリップバックサイドリップスライド。
まずは安定した滑りでフルメイクのランを決める。
以下、ラン2本目のトリック。
※[]内はセクション名
[ギャップtoレール]バックサイドテールスライド。
[ロングレール]バックサイド50-50グラインド バックサイド360アウト。
[ダウンレール]ビッグスピンフロントサイドボードスライドをミス。
その後は3本目に向けた調整の滑りで2本目を終える。
以下、ラン3本目のトリック。
※[]内はセクション名
[ギャップtoレール]バックサイドテールスライド。
[ロングレール]バックサイドフィーブルグラインド キックフリップアウトを少しスケッチーメイク。
[ダウンレール]ビッグスピンフロントサイドボードスライド フェイキーショービットアウト。
[ダウンレール]キックフリップフロントサイドボードスライドからワンフットアウト。
[レール]キックフリップバックサイド50-50グラインド。
[ダウンレール]バックサイド270リップスライド。
[クォーター]バックサイドノーズブラント。
[ハバ]キックフリップバックサイドKグラインド。
[ダウンレール]キックフリップバックサイドスミスグラインド。
最後に1本目のランを上回るトリックをフルメイク。
フルメイク後、タイムアウト後にはなったがバンプtoバンプ全越えのバックサイド360、レールでバックサイド50-50グラインドからのバックサイド360アウト、ギャップtoレールでキックフリップバックサイドリップスライド、クォーターでブラントからのキックフリップフェイキーを延長フルメイク。
滑走後には仲間たちがコースに駆け寄り、完璧な延長フルメイクを祝福した。
【タンパアマ過去の優勝者】
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ドニー・バーリー(1996年)
ナイジャ・ヒューストン(2005年、この時衝撃の10歳)
フェリペ・グスタヴォ(2007年)
ライアン・ディセンゾ(2008)
ルアン・オリベイラ(2008年/2009年)
※2008年はスケジュールの都合で1月と12月に2回開催されている。
ジャガー・イートン(2014年)
オーレリアン・ジロー(2015年)
ダショーン・ジョーダン(2016年)
グスタボ・リベイロ(2017年)
池田大亮(2018年)
根附海龍(2019年)
青木勇貴斗(2021年)
池田大暉(2022年)
レーザー・クロフォード(2023年)
ジュニ・カン(2024年)
ちなみにタンパプロのチャンピオンからはエリック・コストンやジェイミー・フォイといったSOTY(Thrasher Magazineから毎年選出されるスケーター・オブ・ザ・イヤー)が出ているが、歴代タンパアマのチャンピオンからはSOTYはまだ出ていない。
【タンパアマ日本勢の軌跡】
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今年のタンパアマは3名の日本人が決勝に進出。
以下、過去5大会との比較。
2018年の予選出場者は15人、準決勝進出は6人、決勝進出は2人(池田大亮が優勝)。
2019年の予選出場者は14人、準決勝進出は4人、決勝進出は3人(根附海龍が優勝)。
2021年の予選出場者は21人、準決勝進出は10人、決勝進出は5人(青木勇貴斗が優勝)。
2022年の予選出場者は18人、準決勝進出は12人、決勝進出者は7人(池田大暉が優勝)。
2023年の予選進出者は21人、準決勝進出は12人、決勝進出者は7人(レーザー・クロフォードが優勝)
2024年の予選進出者は25人、準決勝進出は13人、決勝進出は6人(ジュニ・カンが優勝)。
2025年の予選進出者は19人、準決勝進出者は12人、決勝進出者は3人。
【タンパアマ2025日本勢の結果】
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17日開催のラストチャンスオープンでは甲斐穂澄が2位、瀧永遥句が3位。
他にも5位に三浦宴、6位に酒井太陽と上位に日本勢が食い込む中、トップ通過はペルーのホアキン・ゴトーでスイッチトリックの他にノーリーバックサイドノーズブラントスライドやノーリーフロントサイド270ボードスライドをメイクするランを見せた。
他にも日本勢では女子の杉本二湖が32位と大健闘。
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18日開催の土曜日予選では10人の日本勢が準決勝へ駒を進めた。こちらも上位に安部来夢(5位)高橋泰雅(10位)八島璃央(13位)などが入る活躍を見せる。
高橋泰雅は、スタートで360ダブルキックフリップを見せると、360キックフリップ フロントサイドリップスライドやダウンレールで360キックフリップ フロントサイドノーズブラントスライドなどを決める。その後もミスの少ない安定した滑りを見せ、タイムアップ後とはなったがラストに360ダブルキックフリップ フロントサイドリップスライドを決めて会場を盛り上げた。
安部来夢は、消火栓越えのバックサイド360、フロントサイド180スイッチフィーブルグラインドリバートやバーレーグラインドリバート、バックサイド360リップスライド フェイキーなど高難度で完成度の高い滑りを見せた。
八島璃央は、消火栓越えのバックサイドレイトビッグスピン、ダウンレールでのキックフリップ フロントサイドリップスライド、フロントサイドシュガーケーングラインドなどを決めた。
他には紅一点の女子スケーター、オランダ代表のオリンピアンでもあるケート・オルデンベービング(74位)や、同じくオランダから来た8歳のスケーター、ブルース・ラグランド(79位)など多彩なスケーターが予選に出場した。
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19日、日曜日開催の準決勝。
第1ヒート。
平田琉翔が、バックサイドフィーブルグラインドtoブラントスライドやバンクでノーリーバックサイドキックフリップ、消火栓越えのキャバレリアル。
他にもフロントサイドスミスグラインド キックフリップアウト、ヒールフリップバックサイドリップスライド、キャバレリアルバックサイドリップスライドなどを決め、日本人1人目のフルメイクを見せて69.83点を獲得する。
しかし、第1ヒートでこの後の日本勢はフルメイクすることができずに終わる。
第2ヒート。
第1走者の八島璃央は途中ミスがあったものの、バンプtoバンプでハードフリップやダウンレールでキックフリップフロントサイドブラントスライド、キャバレリアルバックサイドリップスライドなどを決めて71.08点を獲得。
ここで、ダムアム2025バッファロー優勝者の渡邊星那と、Far n High2025優勝者の長井太雅が満を持して登場。
昨年準優勝の長井のラン1本目。
途中1箇所ミスがあったものの、落ち着いた滑りで高難度のトリックを次々と決め、78.50点を獲得し、暫定3位に。
渡邊は序盤でミスがあり、2本目にかける形に。
長井のラン2本目。
フロントサイド180スイッチKグラインド、全流しのビッグスピンフロントサイドボードスライド、バンプtoバンプで360キックフリップ、バックサイド270リップスライド、クォーターでトランスファーのフロントサイドノーズグラインド、フロントサイド180ノーズグラインド、スイッチバーレーグラインド、クォーターでバックサイドノーズブラント180アウト、スイッチ5-0グラインド、最後にスイッチフロントサイド270ボードスライドをフルメイク。
2本目では危なげない滑りを見せた。
渡邊はラン1本目と同じ箇所でミスをしてしまうとその後もミスが続き、残念ながら準決勝で敗退。
今年は長井太雅(3位)八島璃央(9位)平田琉翔(10位)の3人が決勝へ駒を進めた。
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19日、日曜日開催の決勝戦。
決勝最初の滑走者となったのは平田琉翔。
ロングレールでバックサイドフィーブルグラインドからバックサイドブラントスライドの掛け替え、バンクでノーリーバックサイドキックフリップ、レッジでバックサイドスミスグラインド、バンプでハーフキャブヒールフリップを決めるが、レッジでバックサイドノーズスライド ノーリーバリアルヒールフリップアウトをミス。そこからはノーメイクで1本目を終える。
決勝2番目の滑走となる八島璃央。
ロングレールでのバックサイドブラントスライドからスタートするが、直後のバンプtoバンプでのハードフリップをミス。
その後はレッジをバックサイドノーズグラインド、ダウンレールでキックフリップフロントサイドリップスライド、バンプtoレールでキックフリップ フロントサイドノーズブラントスライドを決める。
消火栓越えのバックサイドレイトビッグスピンフリップもミスしてしまうが、最後はステアでスイッチヒールフリップを決めて1本目を終えた。
決勝8番目の滑走となる長井太雅。
レッジでフロントサイド180スイッチKグラインドから入ると、レールでビッグスピンフロントサイドブラントスライド、バンプtoバンプで360キックフリップ、バンプtoダウンレールでバックサイド270ノーズブラントスライド、クォーターでトランスファーのフロントサイドノーズグラインド、レールでバックサイド180ノーズグラインド、ダウンレールでスイッチバーレーグラインド、クォーターでバックサイドノーズブラント180アウトを決めるが、残り13秒でスイッチフロントサイドノーズグラインドをミスしてしまう。
平田2本目のラン。
1本目と同じレッジでのバックサイドノーズスライド ノーリーバリアルヒールフリップアウトをミスしてしまうが、その後は消火栓越えのキャバレリアル、レッジでフロントサイドスミスグラインド キックフリップアウトをメイクするが、直後のヒールフリップバックサイドリップスライドを失敗。
八島2本目のラン。
1本目にミスしたバンプtoバンプでのハードフリップをしっかりメイクするが、バンプtoレールでのキックフリップ フロントサイドノーズブラントスライドをミスしてしまう。
長井2本目のラン。
中盤のバンプtoダウンレールでのバックサイド270ノーズブラントをミス。
ラストトリックのスイッチフロントサイド270ブラントスライドをチェックして3本目にかける。
平田3本目のラン。
2本続けてミスしているレッジでのバックサイドノーズスライド ノーリーバリアルヒールフリップアウトをしっかり決めるが、その後のフロントスミスからのキックフリップアウトを着地でミスしてしまう。
八島3本目のラン。
バンプtoバンプでのハードフリップをミスしてしまい、残念ながらフルメイクの滑りを見せることはできなかった。
観客も優勝のランを期待するムードで迎えた長井3本目のランだったが、まさかの序盤でビッグスピンフロントサイドブラントスライドをミス。
しかし最後まで諦めない滑りを見せ、タイムアウト後とはなったが最後には大技のスイッチフロントサイド270ブラントスライド ビッグスピンアウトを決めて今大会を終えた。
※このトリックでスケーターXLトリック・オブ・ザ・ウィークエンドを受賞
今大会、残念ながら決勝で日本勢によるフルメイクの滑りを見ることができなかったが、伝統あるタンパアマの決勝で今年も3人の日本人が大健闘。
特に昨年準優勝の長井は今年ダントツの優勝候補だっただけに、見ているファンも悔しいタンパアマ2025となった。
【ラストチャンスオープン(予備予選)リザルト】
(YouTube:https://youtu.be/0zBmsqPju4U?si=14LkZ1KRMTb11PEw)
※ラストチャンスオープンの映像
2位・甲斐 穂澄 3位・瀧永 遥句 5位・三浦 宴 6位・酒井 太陽 15位・栗栖 悠 18位・笹山 永蓮 25位・北山 委治 28位・佐藤 遥希 32位・杉本 二湖 40位・コールター カノア 42位・澤島 裕貴 49位・高石 颯来 50位・三角 結翔 56位・中川 友揮 84位・西尾 瞳 88位・小泉 佑朗 95位・松本 真心 (103人中)
・3人1組、3分間のジャムセッション。1位は準決勝へ進み、2位から10位は予選へ。
※予選に出場する選手のキャンセルなどがあり、実際に予選に進出できる選手の人数はこれよりも多くなる。
【予選リザルト】
(YouTube:https://www.youtube.com/live/3hAXzNyPfu4?si=qp7hU69AqGFxHNJw)
※予選とベストトリックの映像
5位・安部 来夢 10位・高橋 泰雅 13位・八島 璃央 15位・澤島 裕貴 19位・瀧永 遥句 20位・平田 琉翔 21位・酒井 太陽 25位・松本 浬璃 27位・佐藤 遥希 29位・甲斐 穂澄 35位・本橋 瞭 46位・曽根 紘太郎 54位・三浦 宴 64位・繁延 亜周 68位・笹山 永蓮 70位・コールター カノア 86位・北山 委治 95位・栗栖 悠 97位・杉本 二湖 (100人中)
・2人1組、3分間のジャムセッション。1位と2位は決勝へ、3位から30位は準決勝へ。
【準決勝リザルト】
3(YouTube:https://www.youtube.com/live/2of0EdstUvM?si=7TFPsmLKDVcek_vn) ※準決勝と決勝の映像
3位・長井 太雅 9位・八島 璃央 10位・平田 琉翔 14位・甲斐 穂澄 15位・澤島 裕貴 21位・佐藤 遥希 22位・松本 浬璃 24位・安部 来夢 25位・酒井 太陽 26位・高橋 泰雅 28位・渡邊 星那 32位・瀧永 遥句
・ラストチャンスオープン1位のスケーター、各地で行われたDamn AM2024優勝者と予選から勝ち上がった28名が参加。1分間のランを2本行い、ベストランで順位が決まる。
※上位10名が決勝へ進出。
【Tampa Am2025決勝リザルト】
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1位 Abner Pietro(ブラジル)
2位 Rocco Müller(スイス)
3位 Chris Setinas(カナダ)
4位 Pool Bellido(ペルー)
5位 長井 太雅(日本)
6位 Tyler Kirshenbaum(アメリカ)
7位 Isaac Relis(アメリカ)
8位 Bert Wilmink(オランダ)
9位 Gabriel Lavallee(プエルトリコ)
10位 八島 璃央(日本)
11位 平田 琉翔(日本)
12位 Noah De Jaeger(ベルギー)
・予選1位と2位通過者、準決勝上位10名の計12人。1分間のランを3本行い、ベストランで順位が決定する。
【タンパアマ2025ベストトリック リザルト】
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1位 カルロス・ゴルドー(プエルトリコ)ギャップ越えのキックフリップフロントサイドノーズグラインド
2位 デイヴィッド・トゥエスタ(ペルー)ギャップ越えのノーリーバックサイド270ボードスライド
3位 コーヒー・クルーン(スウェーデン)ギャップ越えのレイトショービットフロントサイドボードスライド ショービットアウト
4位 栗栖 悠(日本)バックサイドヒールフリップ
5位 マテウス・メンデス(ブラジル)スイッチ360フリップ リップスライド
文・小嶋勝美
スケートボード放送作家のスケーター。