夏なので恐ろしい絵本を取り上げてみようと思って探した。しかし出てくるのは既に色んな所で紹介されている作品ばかりで、これじゃ面白みがないなぁ~…と思っていたら、奇っ怪な一冊に目が留まった。
タイトルは「くもだんなとかえる」。聞いたこともなかった。
それもそのはず、この絵本、発売は1969年(昭和44年)。内容が、子どもが読む絵本としては残酷として一週間で販売禁止となったそうだ。実際、この本を読み聞いた子どもがひきつけを起こしたという抗議があったとのこと。
作品は元々アフリカの民話で、松谷みよ子さんという方が取材して再話。絵は田島征三という方が描いていて、とてもダイナミックなタッチで威圧感がある。
実物は希少なためマニアの間では高額で取引されるらしい。
いったいどんな内容なのか? どうしても読みたくなって探したら、なんとか物語だけ読むことが出来たので、ここに書き写す。対象は5~8歳だそうだ。
(※読みやすくするためカタカナや漢字を使いました)
絵本【くもだんなとかえる】
――― 暗い夜を見つめながら、としよりは話しだした。
クモだんなは、たいした狩人だった。
クモだんなにかかったら、どんな獲物も逃しっこなかった。
と、いうのも、カエルがいたからさ。
どういうわけかしらないが、
いったい いつから そうなったのかわからないが
クモだんなは カエルを あごでこき使っていた。
まず、獲物をとる時がそうだ。
クモだんなはアミを張って待っているだけだ。
待っていると言っても 涼しい木陰でひっくり返っている。
ところがカエルはそうはいかない
あっちへぴょんぴょん、こっちへぴょんぴょん跳ね回っては
クモだんなのアミにかかるように 獲物を追い出す。
やっとこさ、獲物がかかると、クモだんなはのそのあと出てきて
獲物をしばり上げる。そしてアゴをシャクってカエルに言うわけだ。
「これをウチへ持っていけ! ちゃんと、料理をしておけ!
そうして、オレ様のお帰りを待つんだぞ!」
「水を 飲ませてくれ ひとくちでいいだ。」
カエルは頼む
「アフリカのおてんとは、特別あつらえだ、おらあ
カサカサに乾いただよ、このまんまでは 燃えちまうだ、水を飲ませてくれ。」
「帰るんだ!」
そこでカエルはトボトボと、焼けつくような草原を歩いて家へ帰った。
家では、クモだんなの女房が昼寝をしていたが
カエルを見ると 飛び起きて怒鳴った。
「火を焚くんだよ! 肉を炙るんだ! 腹が減ってペコペコなんだよ、
そうだ、すぐ掃除をおし、薪は取ってきたの?
なにをしてるんだろ、このなまけものめ! あたしゃ 眠いんだよ!」
かえるは、あっちへ跳ねて行っては怒鳴られ、こっちへ跳ねて行っては怒鳴られ、あんまり慌てて柱に鼻をぶっつけたりした。