過労死したNHK記者、佐戸未和さんのために出版された絵本があった

2017/10/06
N田 N昌

 

NHKは10月4日、佐戸未和記者(当時31歳)が2013年7月、東京都内の自宅で亡くなり、翌14年5月に渋谷労働基準監督署から長時間労働による過労死と認定されていたことを発表しました。亡くなるまでの1か月の時間外労働時間は約159時間、休みは2日。自宅ベッドで亡くなった際、携帯電話を握っていたそうです。……

 

実は、そんな彼女にために、なぜ彼女が命を落とさなくてはならなかったのかを検証し、彼女の思いを世に伝えるために、今年の彼女の命日に出版された絵本があるのです。この話は、ジャーナリストの堀潤さんがJ-WAVEの「JAM THE   WORLD」の中で語られていて、ご自身のツイッターでもつぶやかれております。

 

また、この絵本の中には佐戸未和さんご本人も登場しています。

 

その絵本がこちら。

 

「窓を広げて考えよう体験!メディアリテラシー」(著:下村 健一)

 

最近、「フェイクニュース」、「ポスト・トゥルース」という言葉をよく耳にしますが、ネット上にあふれる膨大な情報に踊らされないように、子供の頃から正しい情報との付き合い方を学んでもらおうというメディアリテラシーの絵本でございます。

 

こちらの絵本は「しかけ絵本」で、くり抜かれたページの穴からメディアが伝える部分だけが見えるようになっており、ページをめくると、穴の外の部分、メディアで伝えられていない事実が見えるようになっています。メディアで伝えられた情報は一部分であるということを感覚的に理解できるようになっています。

 

この絵本の著者、下村健一さんは、元TBS報道キャスターで、現在は小学5年の国語の教科書を執筆するなど、子ども達のメディア教育に関わっていらっしゃいます。

 

そんな下村さんは、200012月から20033月までBS衛星チャンネルで全国向けに生放送されていた学生ラジオ『BSアカデミア』で、ニュースコーナーのコーチ役を担当されていました。

 

その番組に、当時、学生だった佐戸未和記者が参加していたのです。

 

下村さんは、佐戸さんのことをよく覚えていて、信頼を受ける記者として頑張っていたそうです。そして、NHKに入社が決まった時には良かったと思っていたそうです。ところが、今回のようなことが起こってしまい、とても残念に思い、なんとかして彼女の思いを残したいと今年の彼女の命日に、この絵本を出したのです。絵本の中には、彼女がリポートしている様子がイラストとして描かれています。そう、この絵本には、子ども達に未和スピリットを伝えたいという下村さんの思いもこもっているのです。

 

以下は、下村さんの佐戸さんに対するツイートです。

 

 

「学生ラジオ局「BSアカデミア」でニュース班に所属し、毎回僕のダメ出しを受けては悔しがり、うまくいくと満面の笑みを浮かべていた佐戸“みわっち”。念願叶ってNHK記者になってからも、取材相手からの信頼はとても厚かった。」(ツイート引用)

 

「続◆バナナが大好きの食いしん坊だった、みわっち。沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落では、学生なのに自腹で東京から現地まで取材に行っていた。通夜の時には、ある重大事件の被害者の方が、家族ぐるみで焼香にいらしていた。行動力と良識を兼ね備えた、日本のメディアの次世代を担うはずのやつだった。」(ツイート引用)

 

「“みわっちスピリット”を後輩たちに引き継ぐために、今夏の彼女の命日に、絵本『窓を広げて考えよう』を刊行した。あとがきの彼女の似顔絵には、妹さんが「そっくり!」と叫んでくれるほどに、BSアカデミア当時の仲間も巻き込んで徹底的にこだわった。彼女の生きた証しを、この世に残すべく。」(ツイート引用)

 

故・佐戸未和さん、下村健一さんの思い、そして「窓を広げて考えよう体験!メディアリテラシー」が少しでも多くの人たちに広がることを願います。

(文:NN昌)

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N田 N昌
この記事を書いた人

N田 N昌

放送作家・ナンセンス絵本マニア 「有田とマツコと男と女」「レゴニンジャゴー(アニメ)」 「天才テレビくんMAX」「小島慶子のオールナイトニッポンGOLD」 など、テレビ・ラジオ番組の構成脚本を担当。

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