
お役立ち情報が満載のNHK「あしたが変わるトリセツショー」で「花粉症」のトリセツが2月に放送されました。そして放送内ではヨーグルトが花粉症対策に効果的だと、医師から説明があり、今回はこちらにも注目。毎年、花粉症で悩む人は多いと思いますが、今年は花粉総飛散量が多い!という声も上がっています。
そこで、今年の花粉症についてやその対策法、ヨーグルトの取り入れ方、どんなヨーグルトがいいのかを「ホンマでっか!?TV」など数々のメディアに出演されている埼玉みらいクリニック院長の岡本沿宗史先生に伺いました。これから本格的に始まる花粉症対策の参考にしてください。
今年の総飛散量は?すでに花粉症患者になにか影響はでていますか?

「花粉症は、温暖化の影響等もあり、有病率が1998年には約16%だったのが2019年には約38%と、年齢層に関わらず増加傾向にあります。花粉の飛散量予測に関しては、前年の夏の気温、日照量、昨年の飛散量などから判断され、今年は関東では例年と比べやや多く、東海地方や近畿では非常に多いと予想されています。東京、埼玉での本格的な飛散は2月中旬と予想されていましたが、2月は寒波の影響で寒い日々が続いたため、3月以降に本格的なピークを迎えることが予想されます。
花粉症の症状といえば、鼻炎症状(くしゃみ、鼻づまり)や眼症状(目の痒み、充血)などが有名ですが、それ以外にも皮膚症状(痒み、かぶれ)や、のどの症状(かわき、咳)など様々な部位に生じることがあります。
当院でも、2月以降、花粉症の加療で受診される患者さんが増えてきました。近年の特徴としては、従来の花粉症の治療は、抗ヒスタミン薬等の内服薬、点眼液、点鼻薬が中心でしたが、数年前にオマリズマブという抗IgE抗体の注射製剤が保険適応になって以降、その注射の相談で受診される方もいらっしゃいます」
花粉症について、自分でできるおすすめの対策法はありますか?

「アレルギー性疾患では、アレルゲン(花粉症では花粉)を避けることが基本になります。花粉が飛散するピークタイムの昼前後、また空気が乾燥して風が強い日などは、できるだけ外出の時間を避け、マスクやメガネなどを装着するようにすることが大切です。また最近では花粉症の吸収をおさえる目的で花粉のブロッククリームやスプレーが販売されていますので、そのようなアイテムを利用するもの選択肢の1つです。実際、臨床試験ではクリームの使用によって鼻症状のスコアが改善された報告もあります(参照 PMID:23883812)。
食事については、次に詳しく説明する乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトなどのプロバイオティクス作用がある食品以外にも、青魚に含まれるEPA(イコサペント酸)がアレルギー症状を緩和するのに役立つ報告があります(参照 PMID:37822881)。ただし、急性の症状に対して即効性があるわけではないため、花粉症でお悩みのかたは、そのシーズンに少し青魚を多めに摂るくらいの心がけで充分でしょう。
またカテキンを多く含んだ緑茶も、花粉症に対して有効である研究報告もあります(参照 PMID:39943933)。変わったところで言えば、中国の研究で耳つぼの治療がアレルギー性鼻炎に効果的という報告もあります(参照 PMID: 38370208)」
ヨーグルトが花粉症対策にいいということですが、どうしてでしょうか?

「アレルギーは腸から生じると言われており、近年、乳酸菌やビフィズス菌が、花粉症をはじめとしたアレルギー疾患予防として注目されています。どんなヨーグルトでも効くわけではなく、特にプロバイオティクス作用があるヨーグルトは最近、注目されています。プロバイオティクスとは、腸内フローラを改善して健康に良い影響を与える生きた微生物です。ヨーグルトや納豆などの発酵食品に含まれています。
事実、173名を対象としたRCT(ランダム化比較試験)という質の高い研究では、ガゼイ菌を含むプロバイオティクス(乳酸菌、酪酸菌などヒトに有益な作用をもたらす微生物を摂取すること)を8週間摂取するとプラセボ(偽薬)に比べ、アレルギーによる鼻炎症状や眼の痒みを有意に改善したとのことです(参照 PMID:28228426)。またオーストラリアの研究でも、プロバイオティクス製剤を12週使用した群は、鼻炎症状や目の痒みが緩和され、生活の質が改善したとのことです(参照 PMID: 35677549)。
プロバイオティクスがアレルギーに有益な作用機序かは、はっきりとは解明されていませんが、一説によると、プロバイオティクスにヘルパーT細胞の反応(Th1/Th2)を制御し正常化させることや、Treg細胞とよばれる免疫反応を抑制する役割を持つ免疫細胞を増加させる働きを持つ可能性などが考えられています。また腸内細菌叢の多様性を改善することで、アレルギーの感受性を改善するとも考えられています」
花粉症対策としてヨーグルトをとる場合、ヨーグルトを食べるタイミングや量などおすすめはありますか?
「ヨーグルトを始めプロバイオティクスのアレルギー軽減効果は即効性のあるものではないためできれば花粉症の症状が出現する4〜8週間前から摂取することが大切になってきます。また乳酸菌、ビフィズス菌などは一時的に腸内に定着するものであり、恒久的に定着するものではないため、花粉症の期間はできれば毎日摂取することを推奨します。
量に関しては、決まった報告はないのですが、1日100〜200ml程度の摂取で花粉症の症状を軽減する可能性が示されています(参照 PMID: 23282801)。また、キムチ、納豆、チーズなどプロバイティクスを豊富に含む他の食品と一緒に摂取することで、腸内細菌の多様性が向上し、花粉症状緩和にも一層効果的かもしれません」
すでに症状が出ている人もいるかもしれませんが、暖かくなるこれからが本格的に花粉症がスタートします。今後の対策として、手軽に取り入れられるプロバイオティクス作用のあるヨーグルトや発酵食品を毎日、生活にとり入れてみてはいかがでしょうか。