新潟県内で3つの歯科医院を展開する医療法人社団D&J。予防歯科・訪問診療・専門的口腔ケアを軸に、虫歯を治すだけでなく「生涯にわたって歯を守る」医療を地域に根付かせようとしている。理事長を務める平野大輔氏は、工学部から医療の道へ転身した異色の経歴を持つ。「救える人をたくさん救いたい」という思いのもと、質の高い歯科衛生士の育成と予防歯科の普及に力を注いでいる。歯の健康が全身の健康に直結することを市民に広く届けるために、平野氏が描く医療の未来とはどのようなものか、話を聞いた。

虫歯を治すだけに留まらず、生涯を通じて患者様の歯と健康を守ることに注力する
当院が最も重視しているのは、「生涯にわたって歯を残すこと」です。痛みがあって来院された患者様の治療が終わると、そこで終わってしまうケースが多くあります。しかし、それではせっかく回復した口腔内の健康も、時間が経つにつれて失われていきます。大切なのは、治療後もメンテナンスを継続し、再び歯を失わないための予防に取り組むことです。
現在、医療法人社団D&Jでは3つの医院を展開しています。1つ目の「ひらの歯科医院」は、若い方からご高齢の方まで全世代を対象とした一般歯科として地域のかかりつけ医の役割を担っています。2つ目の「新潟西歯科クリニック」は、歯科矯正や口腔外科などの専門性とメンテナンスを中心に据えた診療に注力。そして3つ目の「入船みなと歯科」は、一般歯科に加えて訪問歯科と高齢者歯科を強みとしています。
高齢化が進む現代、施設にお住まいの方や自力での通院が難しい方に直接伺い、口腔ケアを提供することは、誤嚥性肺炎の予防をはじめとした全身の健康管理にも深く関わっています。
患者様に定期的にお越しいただけるよう、Web予約の整備はもちろん、担当制を導入することで「あの衛生士さんに診てもらいたい」という信頼関係を築いています。また、唾液検査や口腔機能検査(噛む力・舌の筋力・嚥下機能など)を取り入れ、口の中の状態を多角的に把握することで、一人ひとりに最適なケアを提案しています。
これらの検査を通じて、オーラルフレイルの早期発見にもつなげています。口腔機能が低下すると、栄養状態の悪化や筋力の低下(サルコペニア)、さらには介護が必要な状態へとつながるリスクがあります。だからこそ、口の入り口となる歯科の現場での早期対応が欠かせないのです。

口の中の健康は全身の健康への第一歩——その認識を広めるために啓蒙活動にも尽力
歯科医師として10年以上診療を続ける中で、口腔内の状態と全身の健康状態が密接に関係していることを強く実感してきました。たとえばインフルエンザやコロナウイルス感染症の予防においても、口腔内の細菌コントロールが重要であることは、専門家の間で広く認識されています。菌の多くは口から入るため、口腔内を清潔に保つことが免疫力の向上にも寄与します。
しかしながら、この事実はまだ一般市民には十分に伝わっていません。「歯医者は痛くなったら行くところ」という認識が根強い中で、いかにして予防の大切さを伝えるかが大きな課題です。そのため、地域の高齢者施設への出張トーク、市民向け健康教室など、診療室の外での啓蒙活動にも積極的に取り組んでいます。多忙な診療の合間を縫いながらも、こうした活動を続けることで、一人でも多くの方に「歯の健康が全身を守る」というメッセージを届けたいと考えています。
また、デジタル技術やAIの活用にも注目しています。細かいデータの蓄積と分析を通じて、より精度の高い検査・診断を実現し、スタッフが患者様一人ひとりと向き合う時間をより充実させることができると考えています。予防歯科を社会全体に普及させるためには、現場での医療の質を高めながら、より多くの人々にアプローチできる仕組みを整えることが不可欠です。

「教育」を法人の中核に据え、熱い志を持った医療人を育てることが最大の使命
医療法人の運営において、最も重視しているのが「教育」です。法人の2院目を設立した際に専門性の高い歯科矯正や口腔外科を取り入れたのも、スタッフが多様な分野で学べる環境をつくりたいという思いからでした。「自分が学びたいと思っても、教えてくれる先生がいなかった」という経験が、教育体制の整った職場づくりへの強い動機となっています。
現在は月1回、フリーランスの歯科衛生士を招いて丸1日の研修を実施しているほか、認定歯科衛生士の資格取得を支援する仕組みも整えています。スタッフ同士でコミュニケーションの振り返りを行うミーティングも定期的に開催し、技術だけでなく接遇や患者様への向き合い方も磨いています。
特に徹底しているのが「患者様」という言葉の使い方です。「お給料をくださっているのは患者様に他ならない」という意識を根付かせるため、日常的な会話の中でも「この人」ではなく「この方」「患者様」と呼ぶよう指導を続けてきました。患者様へのホスピタリティは、言葉遣いや意識という小さなところから始まるという信念のもと、妥協なく取り組んできた結果、今では医院全体に文化として定着しつつあります。
「救える人をたくさん救いたい」——この思いを実現するためには、自分一人の力では限界があります。同じ志を持つ仲間を増やし、それぞれの専門性が掛け合わさることで、より大きな社会変革が生まれると確信しています。将来的には、歯科メンテナンスの重要性を体現する新たな医院の設立も視野に入れながら、「新潟の医療を変えていきたい」という大きな夢へ向けて、一歩一歩着実に歩みを進めています。

■取材協力:
医療法人社団D&Jひらの歯科医院(https://www.dental-hirano.com/)
理事長 平野 大輔
経歴
県立新潟高等学校 卒業
国立新潟大学歯学部 卒業
東京都内・埼玉県歯科医院に勤務ののち、新潟市にて独立。
現在は市内3拠点で歯科医院を展開し、幅広い世代の診療にあたっている。
・ひらの歯科医院(新潟市西区坂井東)
・新潟西歯科クリニック(新潟市西区新通)
・入船みなと歯科(新潟市中央区附船町)







