「治す」から「支える」へ:米国仕込みの専門医が挑む、整形外科・リウマチ医療と地域の「健康インフラ」の未来

2025/11/04
マガジンサミット編集部

日本の医療の究極の目的は、単に病気を治すことだけではない。病に罹ったその人の生活全体を、いかに豊かに支えられるかが重要である。リウマチ治療の最前線を歩み、米国留学を経て地域医療の道を選んだ前田俊恒院長が掲げるのは、「治す医療から、支える医療へ」という独自の哲学だ。身近な人の入院を機に医師を志し、難病治療への情熱を燃やし続ける前田院長が目指す、地域に根差した「健康インフラ」の姿に迫る。

難病との出会いと国際経験が培った「全人的医療」への志

前田院長が医師を志した原点は、高校生の頃に経験した祖母の入院である。祖母が大変な思いをする姿を目の当たりにし、人を助けたいという強い思いを抱いた。整形外科を選んだのは、学生時代のスポーツ経験を通じて、けがからの回復や「動く」「歩く」といった運動機能の大切さを身近に感じられたためだ。

その中でもリウマチを専門とした背景には、若い頃に担当したリウマチ患者さんの姿があった。当時の治療薬は今ほど充実しておらず、関節の痛みや変形に苦しむ患者さんを目の当たりにし、手術だけでなく、薬による根本的な治療法を見つけたいと強く願い、研究の道に進んだ。この情熱が、現在のクリニックにおけるリウマチ診療の柱となっている。近年、リウマチの有病率自体は大きく変わらないものの、血液検査や関節エコー、レントゲン検査などの診断技術や検査機器の進歩により、早期診断と早期治療が可能となり、多くの患者さんが早期に救われるようになっている。

リウマチ研究をさらに深めるため、前田院長はアメリカのスタンフォード大学へ留学し、リウマチ・膠原病の中でも血管炎という分野を中心に研究を行った。この経験を通じて、日本とアメリカの医療の在り方の違いを深く学んだ。研究環境においては、アメリカの方が充実した設備が整い予算や人的リソースが豊富で、研究を効率的にスピーディに進められるという利点がある。

一方、臨床に関しては、日本の医療の利点として、患者さんがいつでも病院を受診できるアクセスの良さと医療費の安さを評価している。アメリカでは受診回数が制限され、細かく治療を変えるのが難しい現状がある。このため、日本の医療制度が持つきめ細やかな治療の可能性を再認識し、「日本とアメリカの両方の良いところを活かして診療していこう」という確固たる信念を抱いて帰国した。

大学病院から地域クリニックへ

大学病院などの大規模な医療機関で勤務していた際、前田院長は、患者数が多い環境ゆえに、一人にかけられる時間が限られ、表面的な治療に終始せざるを得ない状況に直面した。検査値が改善しても患者さんの表情が明るくならない、痛みの訴えがあるのにそのバックグラウンドを聞く時間が取れない。こうした経験から、「これでは本当に患者さんを助けていることにならないのではないか」という強い疑問を抱いた。

患者さんのニーズは個人によって異なり、「どこまで良くなったら満足か」も人それぞれである。こうした患者個人の背景を深く理解し、個々のニーズに応じた治療を突き詰めるためには、地域のクリニックで診療を行う方が良いと確信し、開業を決意した。

クリニックの理念として掲げる「治す医療から、支える医療へ」には、病気を治すことだけでなく、その人を全人的(全体的)にみて、生活しやすくしたり、生活の質を向上させたりすること、つまり、患者さんの人生を支えるという意味が込められている。病気以外の困りごとにも対応し、日本の優れた医療制度を患者さんとそのご家族に活用いただくためのサポートも重視している。クリニック名には「リウマチ」とあるが、高齢者からスポーツの怪我、小児の疾患まで、リウマチ以外の疾患も幅広く診察している。

予防医学とチーム医療で目指す「健康インフラ」

前田院長は、日本の医療費が増え続ける社会状況を踏まえ、「病気になってから治す」従来の医療から、「病気にならないようにする」という予防医学的な観点の重要性を強く認識している。

この観点から、骨密度測定装置やエコーなどの最新医療機器を導入。骨粗鬆症の方だけでなく全ての人に骨密度を測定してもらい、骨折しないための生活習慣の改善やリハビリなどで未病のケアを実践している。特に骨粗鬆症や骨折の予防、早期発見に力を入れ、地域の健康寿命延伸に貢献したいという思いがある。

また、患者さんに質の高い医療を提供するためには、スタッフが良い環境で働くことが不可欠であると強調する。クリニックでは、部署間の垣根が低く、スタッフ同士のコミュニケーションが活発で、一人で抱え込まずに相談できる風通しの良い職場である。さらに、経験者がメンターとなりマンツーマンで指導する段階的な教育制度を充実させ、スタッフの能力に応じた成長を支援している。

今後の展望として、まずは地域の整形外科クリニックとしての役割をしっかりと果たした後、一つのクリニックでできることには限りがあるため、地域全体を「点ではなく面として」医療を展開していく地域包括ケアシステムの一員として貢献したいと考えている。地域の様々な医療機関と連携し、リソースを集約して住民の健康を守るこのシステムにおいて、クリニックがその基盤となる「健康インフラ」の役割を担っていきたいという考えを示している。

地域の住民や患者さんに向けては、「かかりつけの整形外科医」として、健康を守り、より動ける体を取り戻し、毎日健やかに過ごせるようサポートしていくことを理念としている。病気でなくても気軽に相談に来てほしいとし、通院しやすいよう、バリアフリー、駅近、提携駐車場、予約システム、キャッシュレス決済に対応するなど、長期的な通院が必要な慢性疾患の患者さんも安心して利用できる体制を整えている。


まえだ整形外科リウマチクリニック
院長
前田俊恒
https://maedaseikei.jp/

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