コロナ禍での笑顔の作り方教えます!観ないとホントに損!口コミ期待大『レディ・トゥ・レディ』がバケモノ

2020/12/22
石井隼人

中年女性2人が前代未聞の女性同士ペアで、競技ダンス大会に挑む…。そんな粗筋ゆえに「あの『Shall we ダンス?』の亜流かな?」と期待値ゼロで観た。ところがその期待値ゼロは冒頭数分で「あれ…?」となり、大塚千弘がクルッと登場した瞬間「これはっ…!?」とギュンギュンうなぎのぼり。内田慈の繊細な芝居に目と心を奪われて、気づいたら競技ダンスに打ち込む真子(大塚)と一華(内田)に心を寄せて、笑い、泣き、大興奮。期待値ゼロは満足度MAXに早変わりした。

学生時代にジュニアとして競技ダンスでペアを組んでいた真子と一華。それから十数年経った現在、真子は主婦としての生活に追われ、一華は売れない女優として伸び悩んでいた。テレビ番組の企画でダンス大会に挑むことに決めた一華は、相手役となる男性パートナーを探そうとするが、なかなか見つからない。そんな折、同窓会で真子と久々に再会。二人は女性同士ペアを再び組んで、大会への出場を決める。ブランクを埋めるために練習に励む二人の日々は色彩に満ちていく。ところが「女子同士ペアは認めない!」という大会ルールが立ちはだかる。

■まさに“今”を反映したテーマをエンタメに昇華

ストーリー自体は至ってシンプルだが、そこに「セクハラ」「パワハラ」「忖度」など現代を反映させたテーマが散りばめられる。かといってそれらを一方的に押しつけるように語るのではなく、あくまでエンターテインメントの枠組みの中でストーリーに自然と織り込む。真子と一華の女性同士ペアの姿を「女性の連帯」のメタファーとして押し出すのかと思いきや、「どう生きるのか?」という性別を問わない普遍的な結論に着地させるのも素晴らしい。

クライマックスでは、権威やルールというしがらみに対して「好きなことは自分が好きだからやっているだけ。それでいいじゃないかっ!」というゴーイング・マイ・ウェイ宣言。満面の笑みを浮かべて好きに踊る真子と一華の姿はすがすがしく、さわやか。突き抜けた清涼感は胸に迫るものがある。笑顔は作るものではなく、生まれるものなのだ。

キャラクター造形も上手い。真子や一華はもちろんのこと、サブキャラクターも個性が際立った作りになっており、誰一人かぶりがない。セリフの言葉選びもそれぞれのキャラクターに合ったものを採用。また学生時代の真子から現在の真子(大塚)への切り替わりをダンスの動きを入れて表現するなど、粋な創意工夫がある。

■驚異的な大塚千弘と内田慈のスパーク

 

役者陣の演技もナチュラルで、W主演の大塚と内田のアンサンブルは一見の価値あり。一華(内田)が真子(大塚)に感謝を伝える際にちょっとまごついてテレを隠すなどの細かい感情の機微から、昔からの仲である二人の関係性と性格が手に取るようにわかる。自立したような女性である一華に対して、ちょっと天然っぽい真子という対比を意識した大塚のポジション取りも完璧だ。そして二人が実際に2ヶ月近く特訓したという競技ダンスのシーンも、美しくカッコよく圧巻。公式Twitterではメイキング動画もUPされているので、鑑賞後にそれをチェックすると、作品世界をより深く堪能することができる。

■バケモノ新人監督のお出ましだ!

その魅力と力を引き出したのは、これが商業監督デビュー作となる藤澤浩和監督。脚本も自ら執筆した。矢口史靖、武正晴、ミシェル・ゴンドリーらのもとで助監督経験を積んだというが、それにしても画作りが熟達の領域にある。メインの被写体の手前に観客の視点を遮るような障害物を配置することで、被写体を注視させる効果を作ったり、画面内にこまごまとしたアクションを起こすことで画の躍動感を演出したりする。エキストラにも役割を与えて、ときにはエキストラの存在がのちの展開のヒントに繋がるなど、遊び心も隅々まで行き届いている。優しい版・深作欣二監督かと思うくらい、画面の活きがいい。

 

絶妙なユーモアも適宜挟むが、かといって自分の世界に酔っていない冷静な視点もある。真子と一華が感情を爆発させるシーンでは、しっかりと現実を差し込み、劇的にし過ぎない抑制を効かせる。その一方でクライマックスでは現実ではありえない映画的爆発を起こすなど、緩急の手綱さばきは見事。しかも無自覚に映画的爆発を起こしているのではなく、確信犯的にやっていることを匂わせる態度にも余裕を感じさせる。テンポも素晴らしく、無駄なピースが一つも見当たらない完璧なパズルのような傑作邦画のお出ました。

■LiLiCoや鶴見辰吾ら著名人が大絶賛

著名人も絶賛の嵐。俳優の鶴見辰吾は「善意の溢れるハートフルコメディ。応援したくなる温かみのある映画です」とエール。映画コメンテーターのLiLiCoも「いい作品を見つけた!どういう風に生きればいいのか、気持ちや柔軟性、そして人を応援する気持ち。観ていて凄く良かった!美しい作品!」と自身がMCを務めるラジオ番組『ALL GOOD FRIDAY』やTBS系情報番組『王様のブランチ』で猛プッシュ。映画好きならずとも注目の本年度No.1映画『レディ・トゥ・レディ』は、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国公開中だ。劇場へ急げ!

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石井隼人
この記事を書いた人

石井隼人

映画好きエンタメ系フリーライター。「来るもの拒まず平身低頭崖っぷち」を座右の銘に、映画・音楽・芸能・テレビ番組などジャンル選ばず取材の日々。ありがたいことに映画作品のパンフレット執筆、オフィシャルライター&カメラマンを拝命されたり、舞台挨拶の司会をしたり…何でもやります!

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