国内大手のインドアテニススクールとして「テニススクール・ノア」を展開するノアインドアステージ株式会社。近年、社会貢献活動に注力しており、若年層専門の就労移行支援を行っている特定非営利活動法人T&Eに、テニスラケットにガットを張る「ストリングマシン」の贈呈も行っている。贈呈に至ったきっかけから社会貢献を続ける思いについて同社の大西雅之代表とT&Eの山﨑浩司所長に話を聞いた。
ストリンガーとして社会で活躍する若者
大西:約1年前、テニスの試合を観に来られたT&E様のスタッフの方にお会いして、こちらの事業所についてご紹介があったんです。病気や障がいなど様々な理由で就労が困難な状況にある若者たちが、訓練を受けて就労による社会参加をされており、その一環としてテニスラケットにガットを張るストリンガーの育成を目指されているということでした。その育成の一助となればとストリングマシンをまず1台、そして今回新たに2台寄贈させていただきました。
山﨑:ストリンガーの方はいわゆる職人気質の方々で、今こちらの事業所で訓練を受けている様々な特性を持つ方々のことを考えると、集中力を発揮して取り組む仕事は非常に向いているのではないかと考えました。こういう取り組みを始めたいと色々な方にお話してみたもののなかなか具体化には至らなかったのですが、大西代表はこの話を聞いてすぐに動いていただき、ストリングマシンを送っていただきました。
大西:お話を頂いたときは、こちらとしても願ったり叶ったりという思いだったのです。私としても、やはり様々な特性を持つ方々にお手伝いしていただけたらという思いがありました。プロの技術者から講習を受けて技術を習得された3名の方々は弊社の運営する「テニススクール・ノア」世田谷桜新町校でストリンガーとして活躍されています。
多様な選択肢を持てる生き方を切り拓く
山﨑:「就労移行支援事業所」というものは、利用者が通所できる期間が基本的に2年というルールがあり、その期間を経ても社会に出ていけない方は、どうしてもそのまま他の事業所に繋ぐしかないという状況がありました。つまり、障がいを持つ方としてその枠組みの中で生きるということです。その、どこか可能性を切り捨てていくような現状が嫌でしたので、何か方法はないかと模索し、今回の「テニスストリンガー育成プロジェクト」を立ち上げました。既に第2、第3世代の育成が始まっています。1期生は現場で仕事をしており、彼らの商品はプロのプレイヤーが打っても問題はないという程、その品質に太鼓判を頂いています。
大西:弊社は2023年3月に、日本から世界を目指すテニス選手のサポートを目的とした一般財団法人ノアテニス振興財団を設立しました。錦織選手、西岡選手、望月選手たちのアメリカ留学をサポートした公益財団法人盛田正明テニス・ファンドのように、スター選手の輩出を目指しています。このように将来有望な選手のサポートはもちろんのこと、児童・青少年の育成する活動から障がい者の福祉向上も目指しており、今回T&E様と業務委託契約を締結し、たとえつまづきがあっても「好きなこと・夢」を諦めずに挑戦できる環境作りに注力しています。
希望を取り戻し、未来に向かう若者を育てる
大西 :私はこれまで37年テニスの事業に携わって多くの経験をさせていただいたからこそ今の自分があると感じており、テニス業界に恩返しをしなければならないと考えています。T&E様に通所されている若者が作った見事な作品を見ていたら、ハンディキャップを個性、強みにされているのだと感動を覚えました。皆真面目にコツコツと、並外れた集中力を発揮して訓練に取り組まれています。T&E様と一緒に、そんな有望な若者たちが社会でいきいきと活躍できる場所を広げていきたいですね。
山﨑:当法人のT&Eの名前の由来は、“Trial and Error”、「試行錯誤」という意味があります。今この事業所で訓練を受けている方々もここに来るまでは「あなたにはできない」「あなたには無理だ」ということを言われ続けてきて、最初ここに来たときにもう絶望されている様子なのです。しかし、ここで試行錯誤を繰り返しながら学びを続けて、未来の夢について語り、あなたが自分らしく活躍できる場所があるんだよと伝えてあげると希望を取り戻し、飛躍的に成長をしていきます。
今後はカフェを併設したストリング専門ショップの構想もあり、より雇用の現場を広げていきたいと考えています。この「テニスストリンガー育成プロジェクト」をモデルケースとして全国に広げていき、技術を学んだ若者が今度は育成する側に回れるようにしたいですね。テニス界に恩返しをできるよう事業を続け、ワクワクドキドキを皆で共有しながら未来に向かって進んでいきます。
■プロフィール
ノアインドアステージ株式会社
代表取締役社長 大西 雅之
1963年生まれ、兵庫県出身。兵庫県立神戸商科大学卒業後、1987年にノアの親会社である株式会社日東社に入社。2004年にノアインドアステージの代表取締役、2009年に日東社の代表取締役に就任。公益社団法人日本テニス事業協会副会長。2023年に一般財団法人ノアテニス振興財団を設立し、代表理事就任。
ノアインドアステージ株式会社
https://noahis.com/
若年層専門障害者就労移行支援事業所
特定非営利活動法人T&E
所長兼最高責任執行者 山﨑 浩司
グラフィックデザインの学校を卒業後、建築・店舗設計デザイン会社に勤務。商業デザイン、コンサルティングに携わった後、障害者の就労による社会参加に興味を持ち、設立当時より関わりのあった特定非営利活動法人T&Eにて勤務。福祉事業の開拓から渉外、広報を主な担当とし、2008年に所長就任。
若年層専門障害者就労移行支援事業所
特定非営利活動法人T&E
https://www.tande-npo.org/