
未だに続いている今年の猛暑。熱中症には常に気を付けて対策を行っていきたいところです。熱中症対策として水分補給を心がけている方も多いと思いますが、実は水分を摂るだけでは十分とはいえず、汗とともに失われるミネラルを補うことが熱中症対策として重要なポイントです。
そこで今回は熱中症の原因や対策を紹介するほか、管理栄養士の横川さんにミネラル摂取の重要性や熱中症対策におすすめのレシピを伺っています。

smile I you代表/管理栄養士 横川仁美氏
そもそも熱中症とは
熱中症とは、高温多湿な環境下で長時間過ごすことにより、体温調節機能が正常に働かなくなり体内に熱が蓄積される状態をいいます。症状の重さに応じてⅠ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)の 3 段階に分類され、各段階で現れる症状の特徴を正しく把握し、迅速かつ的確に対応することが重症化を防ぐうえで重要です。
・熱中症の症状と重症度分類

熱中症の原因と対策

熱中症を引き起こす要因は「環境」「からだ」「行動」の3つの要素が関係しています。ここでは、その要因とそれぞれの対策を紹介していきます。
① 環境による要因
気温や湿度の高さ、風が弱いといった気象条件による要因。特に湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ体温が下がりにくくなります。また、直射日光を浴び続けると体温の上昇が促進されます。
・対策
暑い季節は直射日光を浴びる時間を短くすることが大切。帽子や日傘を活用しましょう。服装は通気性と吸湿性に優れた素材が汗を発散でき、風通しの良いデザインは体温の上昇を抑えます。 また、室内でも温度や湿度の管理が大切。厚生労働省ではエアコンの設定温度を28度前後、湿度は60% 以下に保つことを推奨しています。
➁ 体の状態による要因
激しい運動などによって体内に過剰な熱が発生することに加え、暑さに対する順応が不十分な状態もリスクとなってしまいます。順応が進んでいないと汗のかき方や血液循環が調整されず、体温調節が難しくなります。
・対策
対策として暑さに慣れること(暑熱順化)が挙げられます。徐々に暑さに体を慣らしていくことで汗をかきやすくし、血液循環を促進させる体の適応機能を高めていきます。短時間の屋外活動から始め、徐々に運動時間や強度を増やすのが効果的です。ただし、体調が悪いと感じた場合はすぐに休息を取ることが大切です。
③ 行動による要因
無理な運動や長時間の屋外作業、十分な休憩が取れない状態など、体に過度な負担をかける行動。また、水分補給が不十分であったり、適切でない服装の場合もリスクを高めます。
・対策
水分・ミネラルの補給や、休憩の取り方が熱中症対策において重要です。熱中症は体内の水分や塩分(ナトリウム)が不足することでリスクが高まるため、水分とともに塩分やカリウムなどミネラルの意識的な補給が推奨されており、厚生労働省によると 100ml あたりナトリウム 40~80mg(食塩相当量 0.1~ 0.2g)を含む飲料が推奨されています。
熱中症対策に必要なミネラルの働きとおすすめ栄養素

ここでは熱中症対策に必要な栄養素であミネラル3種と摂取時のポイントを紹介します。
・ナトリウム
ナトリウムは水分バランスや血圧の調整、筋肉の収縮や神経の伝達に欠かせないミネラル。汗とともに体外に失われやすく、不足すると脱水症状やめまいなどを起こす恐れがあります。ナトリウムは、塩・しょうゆなどの調味料のほか、ハム、ウインナー、漬物などの加工食品にも多く含まれています。
暑い時期はスポーツドリンクなどのナトリウムを含む飲み物が効果的。ただし、ナトリウムが重要になるのは真夏の屋外活動や激しい運動など、多量に汗をかいたり、湿度が高く汗が蒸発しにくい場面です。 軽く汗ばむ程度であれば、通常の食事から必要なナトリウムを十分に摂る事ができるため、過剰摂取には注意が必要です。
・カリウム
カリウムは体内の水分バランスを保ち、筋肉や神経の正常な働きを支えるミネラル。汗中に含まれるカリウムの量はナトリウムほど多くありません。 ただし、長時間の発汗やミネラル補給が不十分な場合には不足しやすくなることがあり、疲労感や倦怠感などの症状が現れることがあります。 カリウムはバナナ、えだまめ、トマトなど、さまざまな野菜や果物に含まれており、普段の食事で補うことができます。
・マグネシウム
マグネシウムは骨の構成成分であるだけでなく、300種類以上の酵素の働きを助け、様々な身体機能に関与しています。発汗が長時間続くと体内のマグネシウムも徐々に失われる可能性があるため注意が必要です。
また、マグネシウムは電解質バランスを保つうえで欠かせないミネラル。このバランスが崩れると体温調節がスムーズに行われず熱中症のリスクが高まる恐れがあります。マグネシウムは、ゴマやアーモンドなど種実類、海藻類、豆類、玄米などに含れます。
熱中症対策メニュー
熱中症対策として取り入れたいのが「夏野菜」です。トマトやきゅうり、なすなどの夏野菜には、熱中症対策に欠かせない水分やカリウム、マグネシウムが豊富に含まれています。今回はトマトを使った「冷やしトマトと豆腐のお味噌汁」のレシピを紹介します。
・冷やしトマトと豆腐のお味噌汁

トマトのさわやかな酸味と、やさしい味噌のコクが調和した一杯。味噌汁は汗で失われやすい塩分や水分、ミネラルを効率よく補えるメニューです。トマトや豆腐、わかめなどを組み合わせることで夏の暑さで乱れがちな体のバランスを整える手助けにもなります。
【材 料】 1人分
・トマト 1/2個(80g)
・絹豆腐 1/2丁(160g)
・わかめ(茹で)30g <調味料 A>
・だし汁 220ml
・みょうが 適量
・味噌 大さじ1/2
【作り方】 調理時間5分
① だし汁と味噌をよく混ぜ、冷蔵庫で冷やしておく
② トマトは4等分のくし形に切り、さらに半分に切る。絹豆腐は約1.5cm角に切り、わかめは2cmほどに切る。みょうがは輪切りにする
③ 器にトマト、豆腐、わかめを入れて軽く和え、①を注ぎ、みょうがをのせる
【温めて食べる場合】
•だし汁にトマトと豆腐を入れ、電子レンジ(600W)で約2分温める。
•味噌を溶き入れ、わかめとみょうがをトッピングする。
まだまだ暑い夏の季節。今回紹介した熱中症対策やメニューを取り入れて健康に過ごしていきましょう。
「大塚製薬栄養素カレッジ」
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