
毎年「今年は暑い」と言われるが、近年の暑さはもはや異常事態だ。直近3年間のWBGT(暑さの深刻度を示す指標)は過去最高レベルを記録しており、もはやこの酷暑は“当たり前”の時代に突入している。そんな中、体調を崩してはいないだろうか。「本格的な夏の前なのに、すでに体が疲れている」「なんとなく不調が続いている」そんな悩みを抱える人が増えている。今回は、夏本番を目前に控え、医師や専門家が教える酷暑時代を乗り切る、お酢の新常識を伝えたい。
夏の「免疫バテ」には酢酸菌入りにごり酢

イシハラクリニック副院長の石原 新菜先生は現代人を脅かす新概念「免疫バテ」について教えてくれた。皮膚の表面温度が32℃から35℃へ、わずか3℃アップしただけで、粘膜を守る免疫抗体(S-IgA」」の量が7分の1に激減。S-IgAは、唾液、涙、鼻水、そして腸の粘膜などに存在し、ウイルスや細菌などの異物の侵入を防ぐ役割を持っている。つまり、暑さのストレスによってこの抗体が減ると、一気に風邪などの感染症にかかりやすくなってしまうのだ。
さらに、全身の免疫細胞の約7割は「腸」に集中している。体温調節のために血液が皮膚へと奪われると、腸への血流が減少し、結果として腸内環境が悪化。これも免疫力を大きく低下させる原因(免疫バテ)となる。「暑くなればなるほど、体を守る免疫抗体は減少する」ということだ。
「疲れる」「食欲が落ちる」「免疫が下がる」という最悪のサイクルを断ち切るために、医師がおすすめするのが「お酢」の力。
東洋医学において、お酢は「気」や「血(ケツ)」の巡りを整え、全身の血流をスムーズにする働きがあるとされている。また、現代医学でも以下の効果が実証されている。
・疲労回復・食欲増進(酸味が食欲を刺激)
・血糖値の上昇抑制
・高血圧の抑制
・内臓脂肪の減少
特に先生は「酢酸菌(さくさんきん)」が入った、にごり酢を推奨。腸活に良いとされるヨーグルトや納豆なども免疫スイッチ「TLR2」を押してくれるが、この酢酸菌は「TLR2」と「TLR4」という2つの免疫スイッチを同時に押すことができる稀有な存在だ。酢酸菌が含まれた「にごり酢」を摂取することこそが、免疫のスイッチを押し、乱れた免疫バランスを整える鍵となる。
先生は普段からにごり酢を納豆にかけたり、にんじんジュースにプラスしたりして習慣的に摂取していると話した。
古代から医療で大活躍していたお酢の実力

続いて東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科 教授 前橋 健二先生がお酢について教えてくれた。

近年、お酢の国内消費量は右肩下がりで減少している。かつての黒酢やビネガードリンクなどのブームは一過性に終わり、特に若い世代を中心とした「お酢離れ」が深刻だ。人間は、加齢とともに味覚(特に酸味に対する感度)が変化する。若年層ほどお酢特有の「ツンとした酸っぱさ」を不快な刺激として捉えやすく、これがネガティブなイメージに繋がっていると考えられる。
しかし、歴史を振り返れば、お酢は単なる調味料ではなく「薬」として重宝されてきた。
古代の医療活用:
医学の祖ヒポクラテスは、お酢とハチミツの希釈液を胃腸病の治療に用いていた。古代ローマでも旅の消毒や日常の飲料として使われていた記録がある。
感染症の予防:
14世紀にフランスでペストが流行した際、ハーブを漬け込んだお酢で手洗いや、うがいをしていた泥棒グループだけは感染を免れたという逸話もある。
お酢に含まれる有機酸には、強力な抗菌・殺菌性、そして高い抗酸化性がある。科学的な証明がなされる遥か昔から、その薬理効果は世界中で頼りにされてきた。日本でも「夏は酢の物」と言われるように、夏バテや病気を振り払う食養生として定着してきた歴史がある。
現代のお酢が「ツンとして飲みにくい」イメージがあるのは通常のお酢は、見た目の美しさや透明度を優先するため、発酵・熟成の主役である「酢酸菌(さくさんきん)」をすべて濾過して出荷する。つまり、私たちは「菌がいない汁」だけを口にしているため、酢酸の角が立った刺激を感じやすくなっていたのだ。そこで注目されているのが、あえて酢酸菌を残した「にごり酢」である。
旨酸っぱい本来の味:
酢酸菌が残ることで、お酢本来の深みと旨味が加わり、マイルドで食べやすい味わいになる。
免疫を整える「酢酸菌」の力:
近年の研究により、乳酸菌と同様に、酢酸菌は死んだ菌であっても体内で免疫バランスを整える強力な健康効果を発揮することが判明した。
日本の食文化は、味噌や納豆など「菌を食べる(菌活)」で健康を維持してきた。お酢は酢酸菌をあえて残した「にごり酢」に変えるだけで、これまでにない新しい菌活が可能になる。これからの暑い季節を健やかに乗り切るために、伝統的な原点に立ち返った「にごり酢」を取り入れる価値は極めて高いと語った。
キユーピー直伝!お酢のトリセツ(3分テクニック)

最後にキユーピー醸造株式会社の加藤有紀子氏がお酢について語る。キユーピー醸造はマヨネーズの味の決め手である「リンゴ酢」などの洋風酢が国内になかったため、自社で開発・大量生産に成功。60年以上にわたり毎日「酢酸菌」を守り育て、研究を続けている。プロを支える裏方として寿司職人に向けた「寿司酢」の共同開発や、農家を支える「お酢を使った肥料」の開発など、食の枠を超えた社会課題の解決に取り組んでいる。
意外と知らないお酢のトリセツとして、3分テクニックも教えてくれた。
Q1. 夏野菜の中で特にお酢と相性が良いのは?
正解:トマト

理由: トマトの美味しさは「糖と酸のバランス」が大切である。トマトを使った煮込み料理やスープにお酢を少し足すと、フレッシュなトマト感が引き立ち美味しくなる。また、お酢には他の味を引き立たせる「対比効果」があり、適量を加えることで料理全体の味が引き締まる。
Q2. お酢を入れるおすすめのタイミングは?
正解: 加熱前(早めに)

理由: お酢を入れて加熱すると、食材の糖やタンパク質とお酢が結びつき、酸味がまろやかになって深いコクが生まれる。お肉を柔らかくしたり、魚の生臭さを消したりする効果もある。
補足: 仕上げにお酢を入れると、酸味が際立ちさっぱりとした仕上がりになるため、用途に合わせて使い分けるのが良い。
Q3. お酢の新潮流「にごり酢」について、研究で分かっている特徴は?
正解: 200種類の香味成分

理由: 酢酸菌が残っている「にごり酢」には、200種類もの香味成分が含まれており、奥深い味わいを生み出す。また、アミノ酸やコク味成分(低分子ペプチド)も豊富なため、酸味がカドを失ってまろやかに感じられる。海外のにごり酢にありがちなクセを抑え、毎日続けやすいすっきりとした味わいに仕上がっている。
これからの酷暑時代、「なんとなく不調」を放置していると、免疫力がボロボロになる「免疫バテ」を引き起こしかねない。古来からの知恵であり、最先端の免疫対策でもある「にごり酢」を日々の生活に上手く取り入れて、今年の厳しい夏を元気に乗り切ってほしい。







