先日、日本を代表する絵本作家、佐野洋子様の代表作「100万回生きたねこ」の販売部数が、100万冊を突破したというニュースがありました。しかし、こちらは日本でのお話ではございません。 中国でのお話。中国で翻訳出版されている「100万回生きたねこ」が100万部を突破したのでございます。
実は、中国では日本の絵本が大ブームなんだとか。しかし、「100万回生きたねこ」が初めて中国に渡った当時は、まったく日本の絵本は売れなかったそうです。いったいなぜ?
売れない日本の絵本
日本の絵本が中国に進出した当初、日本の出版社が日本の絵本を知ってもらおうと幼稚園などで無料の読み聞かせをしたところ、中国のお母さま方から思わぬ反応があったんだとか…。その反応とは、「どうしてこんなに空白が多い?」「文字もどうしてこんなに少ない?」。
中国での児童書の役割は、子供たちに漢字を学ばせることに重きをおいており、文字数の少ない日本の絵本に抵抗があったんだそうです。また、上質な紙を使用したハードカバーの日本の絵本は、お値段も少々お高く(相場の2倍ほど)、その辺にも理由があったのではないかと言われております。
では、どのようにして日本の絵本が中国で人気を集めるようになったのか?
日本の絵本がブームになった理由
日本のアニメの影響を受けた世代が親世代になり、それまでと違う価値観を持った親たちが、日本の絵本に親近感を持つようになったのではないかと言われております。そのおかげか、絵本はこの5、6年、毎年売り上げが2~5割の割合で伸びているそうです。
韓国では盗撮騒動も
日本の絵本が輸出されているのは、中国だけではございません。一番の輸出国は、韓国でございます。
実は、韓国は絵本や児童書の出版が盛んで、最近では韓国絵本が世界的にも脚光を浴びており、絵本に対する国内支持率が非常に高いのでございます。そのため、海外の売れ筋の絵本や児童書も大量に翻訳輸入されていて、日本の人気絵本も続々と翻訳され韓国で出版されているということでございます。
そんななか、少し前に韓国で日本の人気ロングセラー絵本の盗作騒動も起こっております。
その絵本とは…。
日本の絵本発行部数ランキングNo.1「いないいないばあ」
この「いないいないばあ」を盗作したのは、韓国で絵本のベストセラー作家として知られるチェ・スッキ氏。1998年に出したその盗作のタイトルが「十二支の動物のいないいないばあ」。いくらスッキだと言っても……。こちらの盗作に関して、チェ氏が基本コンセプトを流用しましたと認めたのでございます。
ちなみに、この盗作作品、韓国国内で50万部以上も売り上げ、ベトナム、タイなど5カ国でも出版されておりました。是非、入手して見比べて頂きたい。
最後に日本の絵本輸出の歴史について、ちょこっとだけ。
1960年代、ボローニャやフランクフルトで行われたブックフェアに日本の絵本が出品されていたこともあり、日本絵本の輸出先は、アメリカ、イギリス、ドイツ、デンマークなど、欧米が中心でございました。
それが、1990年代ごろからアジアへの輸出が増加、アジア各国が上位を占めるようになり、最近では、韓国、台湾、中国、アメリカ、フランス等が上位を占めております。(文:N田N昌)