
企業を取り巻く環境変化が激しさを増すなか、社員一人ひとりのスキルアップやリスキリングは、多くの企業にとって避けて通れない課題となっている。一方で、従来型のeラーニングは「受講させること」が目的化し、学びが定着しないという壁にも直面してきた。
こうした課題に対し、KKCompany Japan合同会社が発表したのが、AIを活用した新しいラーニングプラットフォーム「スキルアップ・サプリ」だ。本記事では、同社が描くAI活用の現在地と、企業向け教育の次なる姿を探る。
AI活用の原点は「マルチメディア」と「実運用」

発表会の冒頭で登壇したKKCompany Japan合同会社 代表のトニー・マツハシ氏は、同社の成り立ちとAI活用の考え方を紹介した。
KKCompanyは、音楽配信サービス「KKBOX」や、動画配信プラットフォームの提供を通じて、長年にわたり大量の音声・映像データを扱ってきた。日本市場においても、KDDIの「auスマートパスプレミアムミュージック」や、テレビ朝日「TELASA」、J:COM「J:COM STREAM」など、日常的に利用されるサービスを支えている。

こうした事業の中で培われたのが、音声やテキストだけでなく、映像そのものを理解・分析する「マルチモーダルAI」の技術だ。
マツハシ氏は、「動画や音声を“保存する”だけでなく、“意味を理解できるAI”を実装してきたことが、現在の企業向けAIサービスの基盤になっている」と語る。
「管理する学習」から「自ら学ぶ学習」へ

今回発表された「スキルアップ・サプリ」は、こうした技術を企業向け教育に応用した新サービスだ。背景にあるのは、従来のLMS(学習管理システム)の限界である。
LMSは、企業側が社員に「受けさせたい研修」を管理・配信する仕組みとして広く普及してきた。一方で、受講率や学習効果が伸び悩み、「形だけの研修」になってしまうケースも少なくない。
これに対し、近年注目されているのがLXP(Learning Experience Platform)という考え方だ。LXPは学習者自身が「今の自分に必要な学び」を見つけ、主体的に学習を進めることを重視する。
マツハシ氏は、「AIの進化によって、個人ごとに異なるスキルやキャリア志向に合わせた学習体験を提供できるようになった。これがLXPへの転換を後押ししている」と説明する。
AIが支援する「個別最適化された学び」

「スキルアップ・サプリ」の最大の特徴は、AIが学習の設計そのものを支援する点にある。例えば、検索機能では、単なるキーワード検索に加えて、AIチャット形式での質問が可能だ。
「マネージャーに必要なスキルを知りたい」「KPI管理について学びたい」と入力すると、AIが学習コンテンツを横断的に分析し、該当する動画や資料、さらにはその中の重要なシーンまで提示する。

また、個人のキャリア志向や経験年数をもとに、AIが「個別育成プラン(IDP)」を提案する機能も用意されている。現時点ではチャット形式で提供されているが、今後は専用UIの実装も予定されており、より直感的な操作が可能になるという。

このほか、管理者向けには、研修タスクの一括配信や進捗管理、AIによるテスト自動生成、ダッシュボードによる学習状況の可視化といった機能も備える。
単に教材を配信するのではなく、「学びがどこで止まっているのか」「社員が何に関心を持っているのか」を把握できる点も、企業側にとっては大きな価値となりそうだ。
企業ナレッジを“活きた資産”に変える可能性

発表会では、「スキルアップ・サプリ」を研修用途にとどめず、企業内に蓄積されたナレッジ全体の活用基盤として位置づける構想も語られた。
会議の録画データや社内勉強会の動画、過去の研修コンテンツなどをAIが横断的に解析することで、社員が必要な情報にすぐアクセスできる環境を整える。
マツハシ氏は、「数年分の会議やナレッジをAIに理解させることで、組織として新たな示唆を得られる可能性がある」と将来像を描く。
技術だけで終わらせない、学びの定着へ

AIを活用したラーニングサービスは市場に増えつつあるが、その多くが「機能の多さ」に焦点を当てがちだ。KKCompanyが強調するのは、実運用を前提とした設計である。音楽・動画配信で培った高い安定性や、24時間365日の運用実績を背景に、企業が安心して使い続けられる基盤を整えている点は、同社ならではの強みと言えるだろう。
「スキルアップ・サプリ」は、AIによる効率化だけでなく、社員が“自ら学び続ける状態”をどう作るかという問いに対する、一つの答えを提示している。企業教育が「受講管理」から「人材の成長支援」へと本格的に移行する中で、同サービスがどこまで浸透していくのか。今後の展開に注目したい。
KKCompany公式サイト:https://www.kkcompany.com/ja-jp







