今でこそ、ペットボトルのミネラルウォーターや、ウォーターサーバーから水を飲むことが普通の光景ですが、昭和の頃は多くの人が水道水を飲んでいて、水を買うなんてお金がもったいないと言っていた人が大勢いました。けれど実は、江戸時代にも水が売られていたようなのです。
非常時の水不足
東日本大震災が起きた時、都内のスーパーやコンビニから真っ先になくなったのがミネラルウォーターでした。私がスーパーに着いた時にはすでに水の棚は空っぽになっていました。水道水があるので、それを使えば事足りるのですが、ライフラインがずっと使い続けられるかどうかもよくわからないような、そんな不安定な状況だったので、皆が備蓄に走ったのだと思います。
私だけならまだしも子どもが2人いるので、水が手に入らないのには困りました。慌てて宅配ウォーターサーバーに申し込もうとしたのですが、同じ考えの人が大勢いるらしく、申し込みが殺到していていつ設置できるかわからないと言われてしまいました。
故郷の水と浄水器のありがたさ
そのうち野菜などの食料もスーパーに不足するようになったので、しかたなく故郷である山梨県に子どもたちを連れて戻りました。子どもたちに食べさせるものがなくなってしまう不安を感じたからです。
避難してすぐに、都内では、水道水に放射性物質が混じったため乳児は摂取を控えるようにという発表が出ました。山梨の実家では水は安全なうえに偶然にも浄水器を取り付けたばかりで、しかもそれは放射性物質を取り除けるタイプのものでした。毎日使う水の安全をこれほどありがたいと感じたのは初めてでした。
江戸時代にもあった水売り
実は、江戸時代にも水は売られていました。すでに水道水は発達していたのですが、水が濁ったり海の塩分が混じりやすい地域に住む人は、飲料水は買い求めていたのです。普通の水を売る「水屋」もあれば、少しアレンジしたものを売り歩く人も。
『月刊江戸楽』2018年3月号の江戸の珍しい職業特集には「冷や水売り」の姿も。冷やした水の中に白玉や砂糖を入れたもの。街頭だけでなく、お風呂屋にも売り子がいたそうです。江戸時代のタピオカのような存在だったのかもしれませんね。
面白いのは熱海などの温泉の湯を売る人もいたところ。汲んできたお湯を江戸のお風呂屋さんに売り、お風呂屋さんは普段の2〜3倍の料金で営業したのだとか。今でも温泉の湯を売る人や、温泉から直送された湯に浸かれるスパなども。日本人の温泉好きは、江戸時代からあまり変わっていないのかもしれないですね。