まだ女性差別の根強かった時代
1973年。まだ男女平等が確立されていなかった当時、偉大な女子テニスプレイヤーがいました。なぜ彼女が“偉大”なのかを描いたのが、現在公開中の映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』。実話ベースながら、濃厚な人間ドラマあり、ロマンスあり、世紀の対戦あり……と、こんなにもドラマチックな話があったのかと驚かされる一本です。
伝説の女子テニスプレイヤーの真実
彼女は女子テニス世界チャンピオンのビリー・ジーン・キング。2009年には、オバマ元大統領に「大統領自由勲章」を授与されたお方。物語はビリー・ジーンが、女子プレイヤーの優勝賞金を男子プレイヤーの8分の1にしたテニス協会へ講義に向かうシーンから始まります。
男性至上主義で頭デッカチな協会のお偉いさんと口論の末、協会を脱退。自ら女子テニス協会を立ち上げるビリー・ジーン。彼女の、女性の権利を勝ち取る戦いはここから。スポンサー探し、チケット売り、宣伝活動など、決して楽そうには見えない女子テニス協会設立の舞台裏を持ち前の明るさで乗り越えていく主人公。
実在の主人公を演じるのは、ノリノリのエマ・ストーン
そんなビリー・ジーンを演じるのは、屈託のないソバカスだらけの笑顔が鬼キュート。『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞主演女優賞に輝き、乗りに乗っているエマ・ストーン。テニス経験のなかった彼女は、4か月の猛特訓&筋肉を7キロアップの肉体改造で本作に挑んでいます。結婚し、旦那のいるビリー・ジーンと試合を観に来てくれた美容師とのユリ展開ロマンス。旦那と愛人がバッタリ鉢合わせのハラドキ&試合へのプレッシャーにメンタルを翻弄されるビリー・ジーン。
その結果、試合は?
主人公の前に立ちはだかる“男性至上主義”の権化
クライマックスは、テニスという手段で女性の権利を訴えるビリー・ジーンVS男性至上主義者のボビー・リッグスという出来過ぎなカードが実現。
ギャンブル依存症かつ目立ちたがりなお調子者の元男子チャンピオンのボビー・リッグス。金と再び世間の注目を集める為、ノンデリカシーな発言&悪ノリムードで、男性至上主義の権化として主人公に挑戦状を叩きつけてきます。圧倒的な悪役ながら、末の子供と無邪気に遊ぶ姿や、奥さんに頭の上がらない私生活。距離のある長男への歩み寄り等、バックボーンを見せる事で魅力的なキャラとして構築。
演じるのは、コメディばかりのフィルモグラフィを『フォックス・キャッチャー』のシリアス芝居でオスカーにノミネートする事で演技派への転身に成功したスティーブ・カレル。笑ったゃうくらい本物に激似です。クライマックスのビリー・ジーンと宿敵ボビーの試合はテレビで中継され、9,000万人が人々が目撃したとの事。まさに世紀の一戦。
恐るべき70年代の再現度
70年代の再現度も本作の魅力。ハッキリ言って、その雰囲気を味わうだけでも、劇場へ行く価値ありなレベルなんです。女子テニスたちが主人公の為、カラフルな当時のカウンターカルチャー・ファッションの数々。特に、ビリー・ジーンたちのそれぞれのウェアもカラフルで楽しいです。
さらに撮影にも一工夫。当時の雰囲気を出す為、35ミリフィルムに、ヴィンテージのレンズを使用。クライマックスの試合のシーンでは、テレビ中継を意識したコート全体が収まるアングルで撮影。インベントの臨場感を伝えています。他にも、見てるだけで楽しい美術やヒット曲を踏まえたサントラなど、隅々まで手の届いた本作を劇場で体験して頂きたいです。
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