日本チームの参戦で話題のスーパーラグビーが、2月26日に開幕した(日本の開幕戦は2月27日)。そこで、ラグビーの話題になったとき、さらっと披露できる話をひとつ紹介。
それは「“トライ”は点が入るのに、なぜ“挑戦(TRY)”なのか?」ということ。5点も入るのに、なぜ挑戦だなんて呼ばれているのか?調べてみると、ラグビーが誕生する前に、理由があった。
ラグビーの原型は、1点取ったら勝ちのお祭りだった
ラグビーの原型は、数百年前からイングランドで行われてきた、地域のお祭りとされている。ルールはひとつで、設定したゴールへ、先にボールを運んだ方が勝ちというもの。
例えば村全体をフィールドに、村人が東側と西側に分かれて、数百人対数百人で、押し合いへし合いボールを運ぶ。手も足も使ってOK。
反則は特になかったようで、ケンカしたり、家を壊したりとやりたい放題。決着がつくまで2日も3日もかかることもあり、途中でごはんを食べたり、居酒屋に入ってお酒を飲んだりと、まさにお祭りだった。
試合を終らせないために、トライのあとに難しいキックをつけた
当時の人たちは、そんな祭りが楽しくてたまらないから、祭りが終わってほしくなかったという。そこで人々は、どうすれば祭りを長引かせられるのか考えた。
試合を終らせない方法……そうだ、点が決まらなければ終わらないじゃないか!というわけで、各地で“点が決まりにくいローカルルールが作られた。
例えば「ボールを運んだあと、距離の長いゴールキックを決めたら勝ち」とか「ボールを運んだあと、投げたボールをボレーシュートでゴールを決めたら勝ち」とか。ボールを運び込むだけでは、得点にならないようにした。
「トライ」は実際に“挑戦”権を得るためのプレーだった
そんなお祭りの名残が、そのまま、得点を取り合う形になって19世紀のラグビー競技の得点ルールになった。トライは0点で、トライ後のキックをゴールに決めて1点。つまりトライは、キックの“挑戦”権を得るプレーだった。
ちなみに、トライ後のキックは『コンバージョンキック』と呼ぶけれど、コンバージョンは日本語で“変換”という意味。トライで“挑戦”権を得て、コンバージョンキックで得点に“変換”するってわけ。
トライの価値が上がって、言葉の意味が分からなくなった
トライでも得点が入るようになったのは1886年。イングランド発祥のルールで、
最初は3トライで1点だった。それ以降、1890年に1トライ1点、1891年に1トライ2点、そして1893年には1トライ3点と、トライの価値が一気に上昇。
トライ後のコンバージョンキックで得られる2点を上回ったことで、力関係が完全に崩れ、何がトライ(挑戦)なのか分からなくなってしまった。何ならトライがメインで、キックはボーナスのイメージ。本来のトライの意味とは逆だった。
というわけで、トライは点が入るのに“挑戦(TRY)”である理由は、『ラグビーの初期、トライはキックの挑戦権を得るためのプレーだったから』。
ラグビーの話題になったら、この話にトライしてみてください。
< 取材・文 / イチカワ >