夏休み終了間際、あわてて本の前書き、あらすじを読んで読書感想文を書いた方も少なくないのでは……。
そんな読書感想文の人気の一冊が「ナイチンゲール」(伝記)でございます。今はどうかしりませんが、昭和の時代はそうでございました。
ナイチンゲールはご存じのとおり、イギリス人の看護師で、医療改革に尽力し近代看護教育の母と呼ばれる“フローレンス・ナイチンゲール”でございます。
クリミア戦争の際に、看護師団を引き連れて戦地に赴き、傷ついた戦士たちを勇気づけ癒し「戦場の天使」と称賛された、あのナイチンゲールでございます。
ナイチンゲールの本と言えば、このフローレンス・ナイチンゲールの伝記と思う方が、ほとんどではないかと。
ところが…でございます。「ナイチンゲール」というタイトルの童話があるのをご存知でございましょうか。「そんなの知ってるよ」と思われた方、申し訳ございません。
アンデルセン童話のひとつでございます。ハンス・クリスチャン アンデルセンさまが童話作家としてバリバリに活躍されていた時期の作品でございます。
お話の舞台がアジアということでは、アンデルセン童話の中ではレアなのでは。なんと日本も登場いたします。
ちなみに、日本では「ナイチンゲール」ともうひとつ、「夜鳴きうぐいす」というタイトルでも出版されております。
というのも、ナイチンゲールというのは鳥の名前でもあるのでございます。
サヨナキドリ、ヨナキウグイスとも呼ばれるヒタキ科の鳥で、スズメくらいの大きさで、背面は灰褐色で尾は赤っぽいのが特徴でございます。明るい声で夜間にもさえずることから、このような名前が付いたとか。ヨーロッパ中南部から北アフリカ、中央アジアに分布しているそうでございます。
ちなみに、機動戦士ガンダムに登場する「ナイチンゲール」(機体)は、この鳥のナイチンゲールから由来しております。この鳥、ギリシャ神話では「愛の鳥」として語られておりますが、民間伝承では「墓場鳥」と呼ばれており、この「墓場鳥」から付けられた名称だそうでございます。
話は少々脱線いたしました。童話「ナイチンゲール」の内容はというと…。
中国の皇帝は、美しい声で鳴くナイチンゲールがお気に入りで、とても可愛がっておりました。そんなあるひ、日本の皇帝から機械仕掛けの小鳥が贈られてきます。すると皇帝は、気まぐれで鳴くナイチンゲールより、いつでも自分の好きな時に鳴かせることのできる機械の小鳥に夢中になります。そして、ナイチンゲールは皇帝のもとを去ることに。その後、皇帝は重い病気に…。そこに現れるのが、ナイチンゲールでございます。はたして、この後どうなるのか…。是非、ご自分の目でお確かめくださいませ。
「魔女の宅急便」でも有名な作家、角野栄子さま訳の絵本もでております。
「ナイチンゲール」(作:角野栄子 絵:太田大八 出版社:小学館)
ちなみに、200作以上もの作品を世に送り出してこられた角野さまは、昨年、児童文学のノーベル賞といわれる「国際アンデルセン賞」も受賞されております。
夏も残りわずかですが是非、この夏は伝記でない方の「アンデルセン」をご体験頂ければと…。
大人が考えさせられる深い内容になっております。まさに、今流行りの大人絵本でございます。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)