武蔵野大学が「通信教育部 国際データサイエンス学部」を新設へ“地域から世界の課題に挑む”新しい学びのかたちとは

2026/01/28
マガジンサミット編集部

AIやデータサイエンスの重要性が高まるなか、大学教育のあり方も大きな転換点を迎えている。武蔵野大学は2026年4月、通信教育部に「国際データサイエンス学部(MIDS)」を新設する。

1月27日に開かれた記者発表会では、学長・学部長による教育方針の説明に加え、国内外の学生による研究発表や、データサイエンスの社会的意義をテーマにしたトークセッションが行われた。本記事では、その内容を通じて、新学部が目指す人材像と学びの特徴を紐解く。

「通信教育だからこそ実現できる、新しい大学教育」

冒頭で登壇した武蔵野大学 学長の小西聖子氏は、新学部設立の背景について、「通信教育という枠組みを生かしながら、これまでにない学びの形を実現したい」と語った。

同大学は長年にわたり通信教育に取り組んできたが、今回の国際データサイエンス学部は、従来の通信制大学の延長線上にあるものではないという。「学び方そのものが変わる学部になる。ぜひ、この後の説明や発表を通じて、その新しさを感じてほしい」と期待を込めた。

「研究体験連動型学習」で、課題発見から社会実装までを学ぶ

学部概要を説明したのは、国際データサイエンス学部長に就任予定の清木康教授。新学部の最大の特徴として挙げたのが、「研究体験連動型学修」だ。

学生は大学1年次後期から研究活動に参加し、自ら発見した課題に対して、AIやデータサイエンスをどう活用するかを実践的に学んでいく。学修の軸は、「AIアルゴリズムデザイン」「AIクリエーション」「ソーシャルイノベーション」の3つ。技術そのものだけでなく、社会への展開までを見据えた設計となっている。

また、通信教育でありながら、国際的な研究環境を重視している点も特徴だ。オンデマンド授業では多言語自動翻訳を活用し、日本にいながら海外の学生や大学と共同研究を行う。

清木氏は「居住地で向き合うローカルな課題を、グローバルな知識として昇華させる学び」を、新学部の核となる考え方として紹介した。

国内外の学生がオンラインで研究成果を共有

続いて行われたのが、学生による研究発表だ。武蔵野大学の通学制データサイエンス学部に在籍する学生と、海外協定校であるタイの大学の学生が、オンラインで接続された形で登壇した。

発表内容は、AIを活用した対話意図の解析や、医療分野における説明可能なAIの研究など、いずれも専門性の高いものだったが、国際的な共同研究を前提とした発表がスムーズに進行していた点が印象的だった。

通信環境を活用しながら、国境を越えて研究成果を共有する姿は、新学部が目指す教育の姿を象徴しているようにも映った。

「データサイエンスは、課題解決の“出発点”をつくる学問」

後半は、「データサイエンスの力で世界の諸課題に立ち向かう」をテーマにトークセッションが行われた。学内関係者に加え、デジタル庁の浅岡孝充氏、企業経営者の紣川謙氏が登壇し、データサイエンスの社会的役割について意見を交わした。

浅岡氏は、「DXで重要なのはデジタルそのものではなく、課題を見つけ、共有し、解決まで導く力だ」と指摘。「データサイエンスは、課題を可視化し、共通言語にするための基盤になる」と述べた。

また、紣川氏は企業の立場から、「AIやデータサイエンスによって、これまで解決できなかった課題に手を伸ばせるようになった」と語り、「現場に近い場所で課題に向き合いながら学ぶことの価値」を強調。

議論全体を通じて浮かび上がったのは、データサイエンスを“技術教育”にとどめず、社会課題に向き合うための思考法として位置づける姿勢だった。

研究の「途中」が見える、開かれた研究空間

記者発表会終了後には、データサイエンス学部のプロジェクトルームおよび研究室・研究スペースの見学会が行われた。中でも印象的だったのが、サイバー空間と実空間を融合させた体験型のプロジェクトルームだ。

箱型の空間に足を踏み入れると、壁面や床、天井の周囲360度に、別の場所の風景がプロジェクターで映し出される。中央に設置されたボードの上に立ち、実際に歩く動作をすると、その動きに連動して映像も変化し、まるで現地を歩いているかのような感覚を味わえる。視覚だけでなく身体の動きと連動することで、サイバー空間への高い没入感が生まれていた。

その後、研究室や研究スペースにも案内してもらった。研究室は、完成した成果物を展示するための場所ではなく、議論や試行錯誤の過程そのものを共有できる空間として設計されている。学生同士や教員との距離が近く、自然と対話が生まれるような工夫が随所に見られた。

研究を「閉じた作業」にせず、プロセスごと開いていくという思想は、学部が掲げる研究体験連動型学習の考え方とも重なっている。学びの現場を実際に目にすることで、新学部が目指す教育と研究の姿が、より具体的に伝わってきた。

通信教育×データサイエンスが切り拓く、新しい学びの可能性

武蔵野大学が新設する通信教育部 国際データサイエンス学部は、場所や国境に縛られない学びを前提に、課題発見から社会実装までを一貫して学ぶ教育モデルを打ち出している。

通信教育でありながら、研究・国際連携・社会課題解決を重視する姿勢は、大学教育の新たな選択肢として注目に値する。地域から世界へ。データサイエンスを軸にしたこの挑戦が、どのような人材を育てていくのか。今後の展開に注目したい。

武蔵野大学データサイエンス 公式ページ:https://web.ds.musashino-u.ac.jp/

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