帰宅後の手洗い習慣が定着も…AIシミュレーションで判明した意外な落とし穴

2022/02/28
佐藤 勇馬

ライオンは、手洗いの重要性が認識される状況を受け、家庭内へのウイルス持ち込みとその付着・伝播の実態を調査。さらに、インフルエンザウイルスの挙動をもとにしたエージェントベースAIシミュレーションモデルを使い、家庭内にウイルスが持ち込まれた後の伝播の様子を可視化することで「帰宅直後の手洗いにより、家庭内へのウイルス伝播が抑えられること」が判明したと発表しました。

同社では、帰宅後の行動動線に関する家庭内の生活者行動調査を実施。1万人を対象にした書面調査では「帰宅後、手を洗う」と回答した人は約9割にのぼりました。

しかし、実際に家庭内の様子を観察するモニタリング調査(一般家庭3世帯が対象)から、手洗い前にリビングやキッチンなどに立ち寄っているという実態が明らかになっています。子どもだけでなく、大人も手洗い前にさまざまな場所に触れていることがわかりました。

続けて、同社はエージェントベースAIシミュレーションモデルを用いて、家庭内にウイルス(インフルエンザウイルス)が持ち込まれた際の伝播について調査。帰宅後に一定量のウイルスが手に付着していたと仮定し、代表的な2LDKの間取りをモデルとしたとき、帰宅後30分の間に接触した場所ごとにどの程度ウイルスが付着しているのかを算出しました。

帰宅後30分間に手を洗わなかった群を「手洗いなし群」、15回接触以下で手を洗っている群を「早めの手洗いあり群」と定義し、それぞれの場合の家庭内ウイルス付着量を比較。「15回接触以下」とは、玄関のドアを開けて鍵を閉め、靴を脱ぎ、そのまま洗面所に向かって手を洗ったという行動を表しています。

シミュレーションの結果、手洗いをするのが遅くなり、帰宅後にドアノブや壁、テーブルなどに触れた回数が増えるほど、家庭内で伝播するウイルス量が増加すると判明。「手洗いあり群」は、「手洗いなし群」と比べ、家庭内のウイルス量は3割以下に抑えられることが判明しました。さらに、帰宅直後に手を消毒する「手洗いあり+消毒あり群」の場合は、付着量が約1割にとどまるという結果が得られました。

これを受けて、同社は「家庭内でのウイルス伝播を防ぐためには、帰宅後、玄関での手指消毒をした上で、リビング等に立ち寄らず、洗面所に直行し手を洗うことが重要です」と指摘。さらに「特に子どものいるご家庭では、親子で一緒に洗面所に向かう“付き添い洗い”も、ウイルス伝播を防ぐ大事な手段です。自分のため、家族のために正しい手洗い習慣、手指の消毒習慣を心がけることが大切です」と呼びかけています。

なお、今回の研究結果の詳細は内閣官房「COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト」ウェブサイトにて公開されています。

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佐藤 勇馬

新宿・大久保在住のフリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にスカウトされて以来、芸能、事件、ネットの話題、サブカル、漫画、プロレスなど幅広い分野で記事や書籍を執筆。著書に「ケータイ廃人」(データハウス)「新潟あるある」(TOブックス)など。 Twitter:ローリングクレイドル

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