「全てが私のスタイルに繋がっていく」湘南から世界を目指すスケーター・藤井雪凛インタビュー

2021/05/13
放送作家 小嶋勝美

世界最大の女子スケートボードの大会、エクスポージャー(Exposure)のオンラインコンテスト(14歳以下の部)で昨年優勝し、今年3月に行われたイバラキカサマオープンでも見事優勝した、注目のスケーターがいる。

藤井雪凛(15歳)だ。

彼女は地元湘南を拠点に活動し、ここ数年で一気に実力を開花させ、コンテストシーンに躍り出た。

湘南といえば、日本のスケートボードの歴史的にも、数々の実力派スケーターを輩出しているが、そのほとんどはストリートシーンで活躍するスケーターである。

そんな湘南エリアに位置する、鵠沼海浜公園スケートパークに2018年11月、国際レベルのパーク種目コンテストに対応出来る、コンビプールが完成。

今後、ますます実力派スケーターの登場が期待される場所として、注目を集めている。

今回は、生粋の湘南スケーターでありパーク種目で今後大注目となる、藤井雪凛のスケートボードへの向き合い方に迫るべく、インタビューを行った。

【サーフィンもスケートもオシャレにカッコよく】

――今年から高校生ですね、中学校ではどんな存在でした?

超うるさかったと思います。部活や委員会にも入ってなくて、自由みたいな。

――勉強は出来る方?

全く出来ないですね(笑)

――運動神経はいい?

小さい時から走るのが好きで、ずっと走り回ってたと親から言われていました。

中学の時は50メートル6秒台で走っていたので、クラスの男子よりも早くて、体育祭のクラス対抗リレーでは男子を差し置いてアンカーを任されました(笑)

――スケート以外の時間は何してる?

家族でお出かけしたり、友達と海で遊んだり、ショッピングモールに行ったり。私の周りは活発な子が多いので体を動かす事が多いですね。

――何をしてる時が一番楽しい?

やっぱりスケボーしている時。皆でわいわいスケボーしてる時もだけど、一人で集中して滑ってる時も何気に好きです。

フロントサイドテールスライド [Photo by @photographerholy]

――スケートを始めたきっかけは?

元々は、小学校4年生頃にサーフィンを始めたんです。

今でもカッコよく波に乗れないし、下手くそですが、スケートボードにハマるまでは、放課後に行く場所といえば海でした。

それから小学校6年生の夏に、友達から「暇だからスケートパークでスケボーしない?」って誘われて、スケボーに乗り始めたら楽しくて、その子と毎日学校終わってから鵠沼海浜公園スケートパークで遊ぶようになったんです。

その後は、どんどんスケボーにのめり込んでいって、一人でも通うようになって、それが今も続いている感じですね。

サーフィンはスケボーほどハマれませんでしたが、こんなに良い環境に住んでいるんだから、少しは出来ないとなって思っています。

なので、夏にはスケートパークにサーフボードを持って行って、暑くなったら海に入ったりしています。

サーフィンもスケートも、オシャレにカッコよくやりたいです。

海外の子たちはスケートもサーフィンも両方うまくて、私が憧れているノラ・ヴァスコンセロス(WELCOME SKATEBOARDSのライダー)もその一人です。

【細かいトリックが苦手ゆえに“開花”したもの】

――始めた時からパーク種目だった?ストリートはやろうと思わなかったの?

鵠沼スケートパークはランプが多いので、始めた頃はランプもストリートも両方やってたんですけど、ストリートは実は始めた頃の方が今より上手いんですよ。

今は怖くて全然出来なくなっちゃいましたけど、始めて数カ月でダウンレールとか普通に入っていました。

ランプやボウルに集中しだしたのは、小学校6年生の終わりくらい。

鵠沼でローカル大会があって、その時ランプの練習を集中的にやりだしてから、自分にはエアトリックの方が合っている事に気づいたので、そっちに移行して中学1年生の秋に、鵠沼海浜スケートパークにコンビプールが出来てからは、コンビプールでばかり滑るようになりました。

今でも回し技やコーピングにかける技が苦手で、基礎も抜けているからキッズスケーターがやるような、複雑なトリックは全く出来ません。特にミニランプは、上手なキッズばかりで苦手(笑)

でも、そんな事ばかり言っていられないので、今はミニランプも基礎も練習しています。

――練習時間はどのくらい?

1日5〜6時間くらい、学校がある日以外は毎日滑っています。

4月から高校生になって、通信制の学校なので中学生の時に比べたら、練習時間がたくさん出来ました。

中学生の時は、鵠沼海浜公園スケートパークの閉まる時間が早いから、鵠沼で滑った後に夜までやっているスケートパークに(両親に送ってもらい)はしごするという生活をずっとしていました。

――エクスポージャーのオンラインコンテストで見せた、フリップインディは完璧でしたね

コンビプールで、トランスファーのフリップインディが出来るようになったきっかけは、神奈川県綾瀬市にBLOWRスケートパークって所があって、そこのランプとボウルに通って、がっつり集中して練習出来たので、そこで出来るようになりましたね。

――自分のスケートセンスが開花した瞬間とか、きっかけってある?

いや、全然ないですよ。

鵠沼海浜公園スケートパークのコンビプールが出来てから、エアを強化するようになるんですけど、それまで私はバーチカルをやってきてないので、エアとかは誰にも教わった事がないんです。

最初にストリートをやって、その次にいきなりコンビプールなんで、基礎が出来てないんです。

さらに私はかなり大雑把で、さっきも言ったように、細かい事や頭を使うようなトリックが苦手。

だからエア系のトリックが、一番好きになっていきました。

コンビプールでの、バックサイドエア トランスファーの高さが、私にとって一番の武器だと思います。

イバラキカサマオープンで見せたバックサイドエア

――スケートボードでの最高の思い出と、最悪の思い出を教えて下さい

スケボー留学でキョウコ ヒックスさんの所に行かせてもらって、同年代の女の子達とアメリカで同じ時間を過ごせたのが、一番楽しかったです。

最悪の思い出は、最近なんですけど去年の9月10日に鵠沼のコンビプールで、ハンドバリアルのトランスファーをした時に、思いっきりアゴから落ちてアゴが2カ所折れた事。

それまで骨折とかした事無かったので、それが一番最悪でしたね。

――湘南のスケーターが、他の地域のスケーターと違うなと思う部分はある?

楽しみながら、遊びながらやってる部分が特に強い感じがしますね。

おしゃれな人が多いし、遊び感覚でやってるんだけど、大会で活躍したりプロになる人も多いイメージ。

――湘南って自分にとってどんな場所?

ずっといても飽きない場所。

――アメリカではどんな経験をしてきましたか?

2019年の夏にスケボー留学で初めてアメリカに行ったんですが、Vansの室内パーク(Vans Skatepark Orange)の大会に出て、優勝出来ました。

印象的なパークだと山の方にあるチノスケートパークっていう所が楽しかったです。あとエクスポージャー(Exposure)の大会会場でもある、エンシニータススケートパークも楽しくて、L.Aついて最初の方はずっとそこで練習してました。

アメリカは、やっぱり洋服が個性的な子が多かったり、同じパーク内でもみんなそれぞれ、別々のスタイルがある子が多かったです。

アメリカに行ったことによって感じたのは、もっといろんな海外の大会に出たいと思いましたね。その為にもコミュニケーションを取る為に、英語がんばんないとなって(笑)

そこで更なる挑戦をする為に、その年の10月にエクスポージャー(Exposure2019)に出場する為、再度渡米しました。

――Exposure2019では、いきなり2位の好成績でしたね

あの時は、一本だけノーミスのランがあったんですけど、それでも結構ギリギリのメイクが何個かあったし、ママと二人で「これはダメだね」って感じだったんですけど、なんとか2位になれました。

【全てひっくるめたものが、自分のスタイルに繋がる】

――目指すとしたら2024年のパリ五輪からになると思うけど、オリンピックは意識してる?

全く考えていない訳ではないですが、日本女子のレベルは本当に高いので、その中でも日本の代表になれたらとは思っています。

オリンピックを意識しながら、練習を続けていればきっと何か自分の進むべき道が見えてくるとは思っていますが、私は元々五輪よりもバンズパークシリーズに出たい気持ちの方が強いです。

でも2019年に鵠沼海浜公園スケートパークで、バンズパークシリーズアジアがあった時は、出てないんですよ。

理由は、アメリカの方が経験を積めると思ったので、エクスポージャーに出る為にアメリカに行きました。

日本だと、なんかいつもの大会みたいになっちゃうなぁと思って、あまり経験出来ない方を選びました。

――他に具体的に夢はある?いつかはシグネチャー出したいとか

そういうのも、いいなぁとは思うんですけど、私が行ってる高校が芸能スポーツコースで、モデルさんとかが多いんです。

そういう子たちから今、ファッションを色々教えてもらったりしてて、これからもオシャレに滑り続けたいっていうのが第一です。他はその後って感じですね。

――なるほど、ではお気に入りのスケートボードのセッティングを教えてください

デッキはPolar Skate Coの8.0インチで、トラックはKrux trucksの139、ウィールはBones Wheels53ミリ、ベアリングはBones Bearingsです。

――これから目指す方向性を教えてください

まず、スケートボードのスキルは絶対に欲しい。

だから練習する時は、ガッツリやるように心がけています。

でもスケートボードはスキルだけではなく、ライフスタイルやファッションも全てひっくるめたものが、自分のスタイルに繋がると思っています。

なので、スケートはもちろんだけど友達ともたくさん遊んで、ショッピングをしたりオシャレやメイクも、誰よりも楽しみたいと思っています。

私はオシャレにスケートボードをしたいと、常に思っています。

靴下や帽子、ベルトやスケートシューズも全て洋服に合わせて変えています。

なので、毎朝スケートに行く前の洋服選びはかなり時間がかかるし、ママからのダメ出しもあります(笑)

だけど、カッコばかりつけたい訳じゃなく、裏表のないそのままの自分をみんなに見て欲しいから、スケートボード以外の事もインスタグラム(@yurinfujii)に投稿してるので、是非見て欲しいです。

湘南には、遊びながら楽しみながらスケートをして、めちゃくちゃカッコいいスケーターがたくさんいるので、私もそんな風になれたらって思っています。

遊びもオシャレも思いっきり楽しみながら、世界を目指すガチなスケーターで行きます。

――最後に“これぞ藤井雪凛!”っていうポイントを教えてください

よく見た目でしっかりしてると思われがちなんですけど、全然してないんで。

あとは、とりあえず大雑把って所じゃないですかね(笑)

【選手というよりもスケーターとして】

インタビューでも語ってくれたが、日本女子パーク種目のレベルは非常に高い。

最近のコンテスト結果だけを見たら、世界トップレベルだ。

スケートボードのパーク種目は、今でこそ五輪に採用されて日本でも注目されているが、それまでは一般的ではなく、ストリート種目以外だとバーチカル(スノーボードのハーフパイプの様な形状のセクション)が主流で、日本にはそもそも鵠沼海浜公園スケートパークにある、コンクリートで出来た国際規格のコンビプールのような施設自体がなく、一般的では無かった。

それが、五輪をきっかけに日本にも国際レベルのコンビプールが登場し、バーチカルのスケーター達はコンビプールでのスケートに対応していった。

そんな中、彼女は全くバーチカルを経ずに、自然とコンビプールでのパーク種目にのめり込んでいった経緯を持つ、極めて稀な存在である(今後はそういった子も増えてくるでしょう)。

インタビューでは「目標はあくまで“楽しみながらオシャレに滑る事、それがスタイルになる”」と語ってくれた部分がとても印象に残り、“選手”というよりも“スケーター”として、伸び伸びと進む彼女の未来が、とても輝いて見えた。

 

【藤井雪凛プロフィール】

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Protec・ProtecJapan・Krux trucks・美容室Lehua

戦歴

2019年 JSF Park Style Contest Vol.2 妙高3位

2019年 Exposure 2位

2019年 JSF Vert Contest Open Class 2位

2020年 Virtual Exposure2020 14under Transition 1位

2020年 JSF Presents Bourbon Wingram Cup Vol.1 1位

2121年 IBARAKI KASAMA Open 1位

 

取材協力 @yarochan

取材・文・写真(一部除く) 小嶋 勝美

スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。約10年間お笑い芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。

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放送作家 小嶋勝美
この記事を書いた人

放送作家 小嶋勝美

お笑い芸人として活動後、放送作家に転身。 スポーツ番組やバラエティ番組などに携わる傍ら、20年以上続けている大好きなスケートボードのライターとしても活動。 コンテスト記事の他、スケボーの情報や面白い発見を伝えていくと共に、スケートボードが持つ素晴らしさを多くの人に広めていきたいと思っています

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