今、上野の森美術館では生誕120周年ということで、「ミラクル エッシャー展」が絶賛開催中でございます。イスラエル博物館が所蔵する貴重なコレクションはすべて日本初公開とか。見応え十分な回顧展になっております。
ご説明するまでもございませんが、マウリッツ・コルネリス・エッシャー様は、20世紀を代表する奇想の版画家、独特の構図と唯一無二の技法を使った「だまし絵」界のレジェンドでございます。
実は、日本にもエッシャー様と並び、世界的に高い評価を受けている「だまし絵」の画家が存在します。知る人ぞ知る絵本界の巨匠、安野光雅様でございます。
先日、「魔女の宅急便」の作者、角野栄子様が、「小さなノーベル賞」とも言われている国際的な児童文学賞「アンデルセン賞」を受賞されニュースになっておりましたが、安野様は1984年に、この賞を受賞されております。
その他にも、ケイト・グリナウェイ賞特別賞、ブルックリン美術館賞、ホーンブック賞、最も美しい50冊の本賞、1977年BIBゴールデンアップル賞)、ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞、…。海外の賞を総なめにしております。
そんな日本を代表する絵本作家、安野光雅様の絵本デビュー作が、「だまし絵」の絵本なのでございます。それだけではございません。そのデビューの背景には、エッシャーや日本絵本界との興味深いエピソードがあるのでございます。
「ふしぎなえ」(作・絵:安野 光雅 出版社:福音館書店)
こちらが、そのデビュー作の「ふしぎなえ」でございます。昇っても昇っても下へいく階段、どうしても逆さまに歩いてしまう横断歩道、…。不思議な世界が続々と繰り広げられる「だまし絵」絵本でございます。
子どもだけでなく、大人もずっとその世界に浸れるクオリティの作品でございます。
安野様が絵本デビューを果たしたのは、42歳の時。当時、安野様は小学校で美術を教えていらっしゃいましたが、なんと、その時の生徒の保護者に、「ぐりとぐら」「はじめてのおつかい」などのロングセラー絵本の数々を生み出してきた老舗絵本月刊誌「こどものとも」の伝説の編集長、松居直様がいたのでございます。
そこで、松居様から絵本を描いてみないかと誘われ、描いたのがこの作品なのでございます。1978年に「こどものとも」として刊行されたのでございます。こちら、絵本マニアには、たまりまセブンなエピソードでございます。
ちなみに、その頃、安野様はエッシャー様の絵が気になっており、それを松居様に見せたことがきっかけで、だまし絵をテーマにした作品になったとのだとか。安野様は1961年にフランスを旅した際に目にしたエッシャー様の絵に大きな影響を受け、エッシャーの生地レーワルデンにも訪れておられます。
そんなエッシャー様と安野光雅様のだまし絵、是非、見比べて頂きたいのでございます。そして、安野様の絵本に興味を持たれましたら是非是非、安野様の絵本をチェックして頂きたいのでございます。大人が楽しめる大人絵本ばかりでございます。ちなみにエッシャー展の音声ガイドを担当しているのは、バカリズム様でございます。
(文:N田N昌)