近年、ドライアイを主訴に来院する患者が増加傾向だそうです。「目が疲れやすい」「めやにが出る」「目がゴロゴロする」「目が重たい感じがする」「目が乾いた感じがする」「目に不快感がある」「目が痛い」「涙が出る」「物が霞んで見える」「目が痒い」「光を見ると眩しい」「目が充血する」。これらのうち5個以上該当する項目があれば、ドライアイの可能性を疑いましょう。
出典:杏林大学医学部付属病院アイセンター「角膜びらん※染色箇所が細胞の剥がれを示しています」
吉野眼科クリニック(東京都台東区)で11月1日、メディアを対象とした「角膜についての勉強会」が行われました。当日は同クリニックの吉野健一院長が「〜角膜危機をもたらす現代の生活環境〜ドライアイと角膜上皮障害」をテーマに講演を実施。ドライアイの原因だけでなく、今すぐできるセルフケア方法について解説しました。
角膜とは黒目のこと。黒目は角膜内皮層、デスメ膜、角膜実質層、ボーマン層、角膜上皮層の5層からできています。中でもドライアイに関係があるのは角膜上皮層。眼球に光を取り込む入口としての役割を持っており、生きた細胞がそのままむき出しになっています。通常は細胞が綺麗に並んでいますが、乾燥などが原因で、角膜が凹凸になってしまう角膜上皮障害を発症する可能性があります。
吉野眼科クリニック 院長 吉野健一氏
環境要因PACSに注意!女性のインラインも!
吉野先生は「ドライアイ患者が増えているのは、現代の生活環境が関係している」と指摘。環境要因としてパソコン、エアコン、コンタクトレンズ、ストレスの4つ(PACS/パックス)を挙げました。
パソコン作業に集中すると瞬きの回数は通常時の4分の1程度になり、角膜が非常に乾いた状態になります。特にこの10年で急速に普及したスマートフォンにより、現代人は目を酷使しています。動画やゲームに集中することでさらに悪化することが懸念されます。
また、現代の住居は機密性の高い空間。それに伴い、夏の冷房や冬の暖房といったエアコンを利用することで、角膜はより乾燥してしまいます。コンタクトレンズも注意が必要。ハードの場合、慢性的な機械刺激によって角膜知覚低下などを招くケースがあります。一方、ソフトでもレンズのエッジが擦れて角膜を傷つける恐れがあります。角膜にとってストレスも大敵。ストレスはドライアイや口渇へ繋がるので、音楽鑑賞や運動、睡眠でリラックスすることが大切です。
「ドライアイの治療には人工涙液、涙点プラグ挿入術、眼軟膏、モイスチャーエイド、リッド・ハイジーン、血清点眼、強膜レンズ、屈折矯正手術がある。特に涙点プラグ挿入術は有効。また、常に角膜に潤いを持たせる強膜レンズは今後流行するのではないか。インラインなど化粧をする女性には瞼のシャンプーであるリッド・ハイジーンを推奨している。」と吉野先生は話しました。
ドライアイを防ぐために普段から気をつけることは、まず涙が乾かないようにすること。パソコン作業の場合は、視線が若干下向きになるようにディスプレイを配置させると良いそうです。ストレス対策としては入浴、温泉浴がオススメ。女性は化粧をしっかり落とすことが重要でしょう。
出典:東邦大学医療センター大森病院眼科「点状表層角膜症(SPK)※点状の染色箇所が傷を示しています」
気温がぐっと下がってきた今日この頃。布団にくるまり、ついついスマホの動画やゲームに熱中して、暖房を点けたまま化粧を落とさず風呂にも入らず寝落ち、なんてことも。角膜は生きた細胞がそのままむき出しになっている、人間の体でも極めて敏感な部分。ぜひ、大切にしてください。