仙川にお出汁で食べる京都焼肉がやってきた。京王線・仙川駅から徒歩2分の新商業施設「フォレストスクエア仙川」に、老舗焼肉店「焼肉の名門 天壇」が手がけるセカンドライン「京都焼肉 天壇1965 SENGAWA」が12月9日にオープンした。1965年創業の本店で培ってきたお出汁で食べる京都焼肉を、プレミアムとカジュアルを掛け合わせたプレカジ(Premium×Casual)というコンセプトで楽しめる新ブランドの都内2号店であり、多摩エリア初進出となる。

余白たっぷりの「仙川フォレスト」に映える京都発焼肉
「フォレストスクエア仙川」は「Co-Living 共に、暮らす」を掲げる複合施設で、広い通路と吹き抜けを生かした余白のあるつくりが印象的だ。その一角に構える「天壇1965 SENGAWA」もまた、ゆったりとした空間設計が目を引く。駅から2分という近さでありながら、喧騒から少し距離を置いたような落ち着きがあり、休日の家族ディナーにも、平日の仕事帰りにも使いやすいロケーションだ。

店内に足を踏み入れてまず目に入るのは、天井を彩るアートパネルである。京都の職人が手仕事で仕上げたという絵が連なり、その中には祇園の本店「天壇」を描いたパネルも紛れ込んでいる。京都らしさをさりげなく感じさせつつ、遊び心も忘れない仕掛けだ。木目を生かした落ち着いたインテリアと相まって、仙川にいながら京都に旅した気分を味わえる。
カウンターから16人個室まで、子連れウェルカムのレイアウト

座席構成はかなり懐が深い。ひとり焼肉にも使えるカウンター席、2〜8名向けのテーブル席に加え、最大16名ほどが入れる大部屋まで備え、家族からグループまで幅広い利用シーンを想定している。チャイルドシートが用意されているだけでなく、店内にはベビールームも設置されており、小さな子ども連れでも安心して過ごせるつくりになっている。ファミリー層が多い仙川エリアの日常使いの焼肉として根付いていきそうな雰囲気だ。

「お出汁で食べる焼肉」に覆された先入観
「天壇1965」の最大の特徴は、言うまでもなくつけダレにある。一般的な焼肉では、しょうゆベースの濃厚なタレが主流だが、ここで供されるのは澄んだ黄金色の「お出汁」である。初めて見ると「これは邪道なのでは」と一瞬身構えてしまう。しかし、網から上げたばかりの肉をその出汁にくぐらせ、口に運んだ瞬間、その先入観はあっさりと裏切られる。

創業以来60年間受け継がれてきたというこの特製ダレは、脂をさっぱりと洗い流すのではなく、むしろ肉の甘みと香りをふわりと押し上げる。しっかりとコクがありながら後味は軽く「もう一枚」と箸が自然と伸びていく。タレが主張しすぎず、赤身やサシの個性をきちんと残してくれるため、部位ごとの違いもわかりやすい。出汁文化の街・京都から生まれた「お出汁で食べる焼肉」という発想は、なるほど理にかなっていると納得させられる。
名物・ミルフィーユロースは“飲めるロース”
看板メニューは、テレビ番組でも取り上げられたことのある「ミルフィーユロース」。薄切りのロースを3枚重ねにした一品は、見た目からして特別感がある。もちろん自分で焼くこともできるが、スタッフに委ねることも可能だ。

推奨の焼き加減はミディアムレア。スタッフが網の上で手際よく焼いていくと、わずか1分ほどで表面にきれいな焼き色がつき、あっという間に食べ頃の状態になる。皿に置かれたミルフィーユロースをつけダレにくぐらせて頬張ると、層の間に閉じ込められていた肉汁が一気にあふれ、舌の上でとろけるように消えていく。
「咀嚼している感覚よりも、飲んでしまったような感覚に近い」。そんな大げさにも思える比喩が、実際に食べてみると腑に落ちる。薄切りの軽さとロースの旨み、そして出汁のやさしい塩味が重なり合い、名物の名にふさわしい満足感を残してくれる一皿である。
「プレカジ」戦略で、日常に上質な焼肉体験を
背景には、焼肉業界全体の厳しい市況がある。2025年の焼肉店倒産件数は、統計開始以来最多を更新する見込みであり、外食市場では「特別な日の高価格帯」と「低価格のファスト・カジュアル」の二極化が進んでいるとされる。そんな中で天壇は、従来の「ハレの日の高級焼肉」のイメージだけにとどまらず、日常的にも通える価格帯と雰囲気を両立させた「天壇1965」を立ち上げた。

「プレミアム×カジュアル」を意味するプレカジというキーワードは、まさに仙川という街にフィットする。閑静な住宅街とおしゃれなショップが共存するこのエリアで、ランチタイムからディナーまで毎日営業し、全席個室・半個室の落ち着いた空間を提供する。家族の記念日、ママ友会、仕事帰りのごほうび焼肉。そのどれにも使える柔軟さが「天壇1965 SENGAWA」の強みと言えるだろう。







