新型コロナウイルス対策として、手洗いや手指のアルコール消毒を心がける一方で、気になるのが手荒れやカサつき。ケアのためにハンドクリームが手放せなくなった方も多いと思います。
そこで参考にしたいのが、水仕事や衛生環境が厳しい職場にお勤めの方が使うハンドクリーム。日頃から手荒れケアを怠らないプロフェッショナルたちは、どのような機能を求めてハンドクリームを選ぶのでしょうか。
折しも先日、編集部では美容師や看護師らが支持するボディケアブランド「ÅP.P.シリーズ」の店舗取材をさせていただいたばかり。早速、ÅP.P.ブランドコンセプトディレクターである「カエタステクノロジー(caetus techonology)株式会社」の技術主任、加藤木 健先生に連絡をとり、ハンドクリームの賢い使い方や「ÅP.P.シリーズ」がプロに支持されている理由などを伺いました。
―― そもそも、石鹸洗浄やアルコール消毒による手荒れはなぜおきるのでしょうか。
加藤木:殺菌剤として使われるアルコールや逆性石鹸には、タンパク質の殻で覆われた細菌の菌体を破壊したり、同じくタンパク質であるウイルスの機能を失わせたりする作用があります。ところが、人間の肌も同様にタンパク質で構成されているため、菌体やウイルスと同じようにダメージを受け、皮脂や水分といった肌のうるおい成分の流出につながり、消毒作業をくりかえせば手荒れに繋がってしまうのです。
―― コロナウイルス対策で、こまめな手洗いや手指衛生を行った結果、手荒れが悪化してしまった人も多いと聞きます。ハンドクリームでケアしきれるものでしょうか?
加藤木:看護師は、肌が薄く弱い、寝たきりの患者さんの床ずれや褥瘡の予防のために、患部に保湿剤をぬってから、その上からワセリンなどの皮膜形成剤を塗り保護します。この手段と同様に、私たちは、特に手荒れが気になる方に対して、保湿剤だけでなく皮膜形成剤を重ねてぬり、膜をつくってバリア機能をサポートすることを提案しています。 さらに、水仕事などそもそも手荒れしやすい作業でグローブなどの保護用具を着用すること、また、冬などの乾燥時期には夜間の過剰な蒸散を防ぐために手袋をして寝ることをお勧めしています。
―― この保湿剤+被膜形成剤のケア方法を用いたのが、ボディケアブランド「ÅP.P.シリーズ」ですね?
加藤木:はい、もともと「ÅP.P.シリーズ」は、アルコールによる手指衛生がかかせない看護師さんや、水仕事が多い美容師さんの手荒れ症状の予防のために開発されたものです。
看護師さんや美容師さんのように殺菌や水仕事などの手荒れリスク作業の多い方には、油分が多く含まれるようなハンドクリームはベタベタとしてしまい、保護グローブなどが使い辛くなり、ハンドクリームを使うかグローブを使うか、どちらかになってしまうというのが悩みでした。そこで、忙しい中で塗り忘れたとしても、保湿効果が持続し、なおかつ、ベタつかないハンドクリームをつくれないかと考えました。
―― 塗った感じはサラリとしています!この軽やかさで保湿も保護もできるのは優れものですね。
加藤木:実はどの保湿剤にもいえることですが、肌の表面の指にくっつくようなペタペタとした、いわゆる“保湿感”と、実際の肌角質水分量の大小は一致しないのは化粧品会社の間では周知の事実です。
多くの製品はこの“保湿感”がないと消費者に悪い印象を与える為、角質水分量を指標にしつつ、ぺたぺた、しっとりとした保湿感も感じられるように努力をされています。「ÅP.P.シリーズ」はこの点が異なり、保湿感を犠牲にしてでも、さらさらとした感触のある保湿剤を目指して設計しています。
ÅP.P.の処方について少し詳しく説明すると、シリコンポリマーの被膜剤が表面を覆い、その中で、①グルセリン系の保湿剤をベースに、ヒアルロン酸、異性化糖などが肌の角質水分量をひきあげ、②皮脂に近い成分のホホバオイル、マカダミアナッツオイルなどで脂分をおぎない、③ガゴメ昆布抽出物などの補助保湿剤による肌環境のサポート効果が期待できます。
―― どのくらいの量を塗ると良いのでしょう? 塗れば塗るほど効果的なのですか。
加藤木:医師は一般的なハンドクリームによる手荒れ予防のために、ティシュペーパーが肌につくぐらいの量を塗ることを推奨しています。ですが「ÅP.P.シリーズ」はべたつかずサラリとしたテクスチャーなので、これを適用できません。目安としては、人差し指の第一関節分をチューブからだし、手指だけではなく手首などの肌が露出する部分にぬるとより効果的です。
―― 撥水性ポリマーが肌を保護して、なめらかな肌触りになるのでティシュペーパーがつかないのですね?
加藤木:その通りです。この独自に開発した撥水性ポリマーは保護効果だけではなく、うるおい成分を肌に定着させやすくするための“足場”の役割もあります。
―― 足場…ですか?
加藤木:異性化糖などの多糖類は、通常の2倍ほど角質保水量のキャパシティをひきあげることができるのですが、角質ケラチンと異性化糖との反応がすごくゆっくりと進むので効果を発揮するまでに時間がかかってしまいます。
また、フコイダン類が豊富に含まれるガゴメ昆布抽出物は、外的刺激から肌を守る肌のバリア機能を高め、整肌の働きが期待できる反面、非常に肌への定着性が悪く塗ってもすぐに洗い流されてしまうのが難点でした。そこでスポンジ状の薄膜形成をするポリマーを“足場”にすることで、これらの成分と肌との接触時間を保持させ、より保湿剤の効果を引き出す狙いがあります
―― もし、それでも手荒れが治らない人は、何に気を付けたら良いですか?
加藤木:殺菌・消毒剤による手荒れの具合は人それぞれです。一度の消毒でかぶれてしまう人もいますし、体質によってばらつきがあるものです。アルコールや殺菌剤に対してアレルギー体質があれば、いくらハンドクリームを付けたとしても手荒れを起こします。します。
なかには、一般的に発売されているハンドクリームのなかに含まれる成分にアレルギー反応を起こしてしまう方もいます。生活圏にアレルギー物質があり手荒れが発生しているケースも多いので注意が必要です。
―― 良かれと思っていたケアや住環境などに原因があるかも知れない…?
加藤木:美容師さんのなかには、カラー剤のジアミン類にアレルギーをもつ方が多いのですが、保護グローブを着用していても手荒れが改善せず、観察したところグローブのラテックスに反応していることが分かった例。また、屋内のハウスダストにアレルギーを起こし、部屋に空気清浄機を導入することで手荒れが劇的に改善された報告例もあります。
まずは、ご自身が何に対して感作をおこすのか注意し、対象のアレルギー物質をまず避けることが重要です。皮膚科医などの専門医の診断を受け、できるだけ早く対処方を見つけましょう。皮膚科クリニックなどで行えるアレルギーパッチテストなどが有効でしょう。
―― 加藤木さん、ありがとうございました!
カエタステクノロジー株式会社 加藤木 健 技術主任/京都大学医学研究科人間健康科学系専攻 修士/日本ウイルス学会、オペレーションリサーチ学会、人工知能学会、応用数理学会会員
カエタステクノロジー株式会社 http://www.caetus.co.jp/
さて、新型コロナウイルスの蔓延を阻止するためにも、手洗いや手指衛生はかかせません。事実、今年の冬はインフルエンザの流行が昨シーズンより少ない状況になるなど、その効果が表れているようです。新型コロナウイルスの少しでも早い収束を願って、手洗い・手指衛生を怠らないようにしましょう。