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2024年パリオリンピック予選を兼ねた大会「ワールド・スケートボード・ツアー(WST)パーク2023世界選手権」の決勝が現地時間10月8日にイタリアのローマで開催され、東京オリンピック銀メダリストの開心那(15歳)が見事WST初優勝で女王に輝き、草木ひなの(15歳)が準優勝で日本勢によるワンツーフィニッシュとなった。
他にも東京オリンピック金メダリストの四十住さくら(21歳)が決勝に進出し、8位に入賞している。
パリオリンピック予選大会過去2戦全てで優勝している、東京オリンピック銅メダリストのスカイ・ブラウン(15歳)は今大会怪我のため、残念ながら欠場となった。
前回5月にアルゼンチン・サンフアンで開催された際は、東京オリンピックの予選大会含めて、女子パーク日本勢は初めて表彰台を逃す形となったが今大会は一転し、ワンツーフィニッシュを飾る快挙。
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※ Instagramより男子決勝のハイライト
男子の日本勢は東京オリンピック予選ツアーを含めて、これまで1度も決勝の舞台には立てなかったが、今大会ついに永原悠路(18歳)が決勝に進出する快挙を成し遂げた。
永原は前日の準決勝では10位で迎えた3本目のラストランで88.14点を出し、準決勝5位で見事に日本人男子初の決勝進出。
決勝の舞台でも攻めのスタイルを崩さず、果敢に高難度のトリックに挑むもフルメイク(1度もミスせずに滑りきること)のランを見せることができず7位に終わったが、パーク種目において、日本男子の大きな壁であった決勝進出という歴史的な一歩を踏み出した日となった。
そして、ハイスピードとハイエアから繰り出されるハイクオリティトリックの共演となった世界選手権決勝の舞台を制したのはアメリカのギャビン・ボッガー(16歳)。
4位で迎えた3本目ラストランで見事にフルメイクのランを見せ、この日最初の90点台(91.34点)を出していたアメリカのテイト・カリュー(18歳)を超える94.03点を獲得。
その直後、前回のサンフアン大会の王者ルイジ・チニ(21歳)も自身最高の滑りを見せ、ランの最後に360キックフリップステイルフィッシュ(デッキを縦と横に1回転させ掴む技)を完璧にメイクさせ、会場は大歓声に包まれる。得点は91.90点で優勝には届かなかったものの、次々と繰り出されるビッグトリックの数々は見るもの全てを魅了した。
【パリオリンピック・スケートボードのルールと出場枠】
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スケートボードのパーク種目は、45秒間自由にコース内を滑りながら技を披露するランを3本行い、その内の最高得点で順位が決まる。技を失敗した時点でストップとなり、採点は100点満点で、小数点以下2桁まで。
パリオリンピックに出場するためには、2024年6月24日時点でオリンピック世界スケートボードランキングに入っている必要がある。東京オリンピックと同じくストリート(男女)とパーク(男女)の4種目が行われ、各種目22名ずつ(合計88名)出場できる。
※1カ国1種目につき、最大3人までの出場。
オリンピックならではの見所は、5大陸(アフリカ・アメリカ・アジア・ヨーロッパ・オセアニア)枠が確保されているところ。
1つの大陸から、選手がオリンピックランキングの上位に入れず、出場枠を取れなかったとしても、その大陸の代表選手のランキング上位の選手が出場できるため、世界的な大会ではなかなか見る事のできないような国の選手も、五輪の大舞台では見ることができる。
【まさに完全優勝/開心那】
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準々決勝、準決勝と立て続けに首位で通過し、決勝に進出した開心那。
決勝のラン1本目ではファーストトリックから長い距離を流す、完成されたバックサイドノーズグラインド(デッキ前方のトラックと呼ばれる車軸の部分だけでコーピングを滑る技)を披露すると、その後も一糸乱れぬ完璧なランを見せ、92.08点を獲得。
パーク種目の花形トリックになりつつある540(空中で1回転半回る技)やキックフリップインディ(空中でデッキを縦に1回転させてデッキを掴む技)などではなく、ノーズグラインドなどのリップトリックや華麗なオーリーなど、自身のスケートスタイルを見せて90点台を獲得するあたりが、他のスケーターとは一味も二味も違っていた。
草木に首位を明け渡してからのラン2本目では、ノーグラブ(手で掴まない)のバックサイドキックフリップを加えるランを見せる。
ノーグラブでありながらコーピングを超える高さを出してのキックフリップを披露し、この日最高得点となる94.54点を獲得。
準々決勝から全て1位をとり続け、まさに完全優勝で世界選手権の幕を閉じた。
【WST初の表彰台へ/草木ひなの】
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※ Instagramより女子決勝のハイライト
準決勝を2位で決勝に進出した草木ひなのは、決勝のラン1本目で早々にミスしてしまうものの、2本目のランではコーナーを使ってのロックンロールスライド(デッキの真ん中を使ってコーピングを滑る技)やバックサイド540(空中で1回転半)サランラップ(両手でボードの先端を交互に掴んで空中で足を巻くように通す技)といった草木の代名詞と言える技をフルメイク(ミスなく滑りきること)し、93.20点を叩き出し一気に首位に出る。
その後は、今大会絶好調の開心那に首位の座を明け渡すが、世界選手権の大舞台で見事に準優勝を飾り、WST初の表彰台に乗って世界選手権を終えた。
WST世界選手権ローマ大会・パーク男女決勝の映像
(YouTube:https://www.youtube.com/live/JTY50qhPSxs?si=8ehkc9vADLj6oPxm)
【WST世界選手権2023・女子リザルト】
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1位 開 心那(日本) -94.54
2位 草木 ひなの(日本) -93.20
3位 ミナ・ステス(アメリカ) -90.80
4位 ライカ・ベンチュラ(ブラジル) -87.59
5位 ナイア・ラソ(スペイン) -86.25
6位 リリ・シュテファジウス(ドイツ) -84.79
7位 ルビー・リリー(アメリカ) -84.40
8位 四十住 さくら(日本) -83.53
【WSTパーク世界選手権2023・男子リザルト】
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1位 ギャビン・ボッガー(アメリカ) -94.03
2位 ルイジ・チニ(ブラジル) -91.90
3位 テイト・カリュー(アメリカ) -91.34
4位 ジャガー・イートン(アメリカ) -88.33
5位 オウグスト・アキオ(ブラジル) -84.50
6位 ペドロ・バロス(ブラジル) -81.07
7位 永原 悠路(日本) -78.68
8位 キーファー・ウィルソン(オーストラリア) -64.67
文・小嶋勝美
スケートボードに関する情報を幅広く執筆する、スケートボードライター兼放送作家兼スケーター。10年間のお笑い芸人生活を経たのち、放送作家をしています。