【パリオリンピック男子ストリート】堀米雄斗が連覇の金メダル!地獄の淵から1パーセントの可能性を信じ、実現させたストーリー

2024/07/30
放送作家 小嶋勝美
 
 
 
 
 
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現地時間7月29日にフランス、パリ中心部に位置するコンコルド広場で開催された、パリオリンピック、スケートボード男子ストリートで堀米雄斗(25歳)が大逆転でオリンピック連覇を達成。アメリカのジャガー・イートン(23歳)が銀メダル、同じくアメリカのナイジャ・ヒューストン(29歳)が銅メダルを獲得し、昨年の世界選手権王者で世界ランキング2位の白井空良(22歳)が4位入賞という結果をおさめた。
男子ストリートは本来7月27日に開催される予定だったが、当日は現地パリが雨のため急遽29日に変更されての開催となった。

日本勢は他にも世界ランキング1位の14歳、小野寺吟雲が出場したが、予選でベストトリックを2本揃えることができず、残念ながら予選で姿を消した。
ちなみに今大会の男子ストリート出場者全員の平均年齢は26.1歳だったとのこと。

【世界ランキング上位独占!日本最強の布陣】

 
 
 
 
 
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男子ストリートの日本勢は世界ランキング1位に小野寺吟雲、2位が白井空良、3位が堀米雄斗と、上位は全て日本人が占め、最強の布陣でパリオリンピックの日を迎えた。※パリオリンピックスケートボードは1種目22名が出場(その内ホスト国枠、各大陸枠、ユニバーサリティ枠が確保されている)、1か国最大3人まで。

パリオリンピックストリート種目は、45秒のラン2本と、一発技のベストトリック5本が行われ、ランのベストスコアと、ベストトリックの上位2本を合わせた得点で競われる(それぞれ100点満点で最高得点は300点)。

東京オリンピックと大きく違う点は、ランのスコアが必ずカウントされるという部分で、東京オリンピックの時はランでミスしてもベストトリックで巻き返しが可能だったが、パリオリンピックではランでミスがあると逆転はかなり難しいルールになった。

【見どころだらけの予選はやはり波乱の展開へ】

 
 
 
 
 
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予選はヒート1からオリンピックならではとも言える、ある意味で激アツな展開になった。東京オリンピック銀メダリストのブラジル、ケルビン・ホフラーがラン1本目からフルメイクの滑りを見せると(86.48点)、2本目はさらに難易度を上げたランを見せ90.41点を獲得。

アルゼンチンのマティアス・デルオリオも好調で88.53点を獲得する中、ベストトリックではコロンビアのジャンカルロス・ゴンザレスが、コース中央のビッグハンドレールでフロントサイド180スイッチK(クルックド)グラインドを2本続けてミスしまうと、空中から撮影していたドローンに向かって中指を立てるシーンが。

ドローンがどのくらいの高さを飛行していたのかは分からなかったが、映像には確かにドローンの影がコースに映り込んでおり、それがトリックに影響した模様。やはり国を背負って立つ、オリンピックという大舞台ゆえ、ナーバスになってしまうのもムリはない。

対照的にオーストラリアのシェーン・オニールは、10段ステアでノーリーバックサイド180ヒールフリップをメイクすると(91.00点)会場を盛り上げ、楽しそうに滑っていた姿が印象的だった。

ヒート2には、東京オリンピック銅メダリストのアメリカ、ジャガー・イートン、東京オリンピック9位の白井空良、地元フランス勢のオーレリアン・ジロー、ヴィンセント・ミルーといった表彰台候補が一斉に出場。

ラン1本目は全員ミスがあったが、2本目のランでジャガーと白井はしっかりフルメイクの滑りを見せたが、フランス勢のオーレリアンとヴィンセントはまさかのランを2本とも外してしまう展開に。

ベストトリックでは、ジャガーと白井がしっかり得点を重ね、ヒート2終了時点でジャガーが1位(274.88点)、白井が2位(270.42点)でこの後のヒートを待つ。

ヒート3には、東京オリンピック金メダリストの堀米雄斗、東京オリンピック8位のポルトガル、グスタボ・リベイロ、東京オリンピック12位のブラジル、ジオバンニ・ビアンナ、東京オリンピック14位のブラジル、フェリペ・グスタボ、そしてこの種目最年長となる38歳のカナダ、ライアン・ディセンゾが登場。

堀米が苦手とするラン1本目、スイッチフロントサイドリップスライド、ノーリーバックサイド270ボードスライド、ノーリーフロントサイド270ボードスライドなどのトリックをフルメイクさせる。

ラン2本目では、グスタボ・リベイロの滑走でまたしてもハプニングが起こる。

クォーターパイプで、フロントサイドブラントをトライした際、コース上で撮影していたカメラマンが近すぎたために、トリックをミス。
これにはグスタボもだいぶナーバスな表情を見せ、スタッフに抗議した結果、ランのやり直しが認められたが、それでもフルメイクをすることができず、2本とも失敗で終わってしまう。

ベストトリックでは堀米が、ノーリーバックサイド270ノーズスライド(93.08点)、ノーリーフロントサイド270ボードスライド(87.38点)などを見せ、ラスト5本目にはノーリーレイトフリップ バックサイドボードスライドを狙うがミス。しかし合計270.18点を獲得し、この時点で白井に続く3位で最終ヒート4の終わりを待つ。

ヒート4には小野寺吟雲、スロバキアのリチャード・ターリー、カナダのコルダノ・ラッセル、そして東京オリンピックで7位に終わったキングオブキング、アメリカのナイジャ・ヒューストン、地元フランスのジョセフ・ガルバッチョが出場。

小野寺のラン1本目は途中ミスがあり、コース外に戻る時にはフラフラとするような動きを見せ、心配なシーンがあったが(最後にインタビューでも練習中に熱中症のようになっていたと話していた)ラン2本目では、キックフリップ バックサイドテールスライド(ハバレッジ)、アーリーウープ バックサイドキックフリップ(バンク)、バックサイドキックフリップ(バンクtoバンク)、フロントサイドハーフキャブ キックフリップ(バンクtoバンク)、バックサイドキックフリップ(ステア)、ブラント キックフリップフェイキー(クウォーターパイプ)、スイッチバックサイドボードスライド(バンクtoフラットレール)、ビッグスピンフリップ フロントサイドボードスライド(ハンドレール)をフルメイクし(83.51点)ベストトリックに臨む。

リチャード(87.84点)、コルダノ(86.99点)、ナイジャ(90.18点)もランでフルメイクを見せてベストトリックへ。

ナイジャが90点代のトリックを2本揃え(ノーリーヒールフリップ バックサイドリップスライド90.31点、スイッチヒールフリップ フロントサイドテールスライド92.17点)、コルダノも1本目、2本目をしっかり決め順調にスコアを稼ぐ中、世界ランキング1位の小野寺は1本目、2本目を外してしまう展開に。

それでも3本目ではハンドレールで、フロントサイドブラントスライド バリアルフリップアウトを決めると93.57点を獲得。

しかし4本目ではハバレッジで、スイッチヒールフリップ フロントサイドノーズスライドをミスしてしまい、あとが無くなってしまう。迎えた5本目のトリック、小野寺は攻めの姿勢を崩さず、再びスイッチヒールフリップ フロントサイドノーズスライドにトライするが残念ながら失敗。

しかし最後まで果敢に攻める姿勢を見せ、初めてのオリンピックを終えた。

スロバキアのリチャード・ターリーは、ベストトリックを1本しか決めることができずに迎えたラスト5本目、ハバレッジで自身の得意トリック、バリアルヒールフリップ バックサイド5-0グラインドをしっかり決めると、91.31点を獲得し、8位で決勝進出を決めた。

彼は31歳ながら今なお、毎年アメリカのタンパで開催されるアマチュアスケーター最高峰の大会タンパアマに出場し続ける素晴らしいスケーターだ。

実況からの情報によると、右腕には3本のチタンのネジが入っていて肘には人工関節が入っているそう。スロバキアというスケートボードがあまり発展していない国の出身でありながら、スケートボードに長年費やしてきた結果が今回の決勝進出に結びついた形になった。

【信じられない大逆転劇となった決勝】

 
 
 
 
 
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決勝進出者は、リチャード・ターリー(スロバキア)、コルダノ・ラッセル(カナダ)、東京オリンピック銀メダリストのケルビン・ホフラー(ブラジル)、マティアス・デルオリオ(アルゼンチン)、東京オリンピック金メダリストの堀米雄斗、東京オリンピックの雪辱に燃える白井空良、ナイジャ・ヒューストン(アメリカ)、東京オリンピック銅メダリストのジャガー・イートン(アメリカ)という顔ぶれになった。

決勝のラン1本目、ランが苦手と話す堀米は得意の2種類のノーリー270ボードスライドなどフルメイクのランを見せ89.90点を獲得し、順調な滑りだしを見せる。

直後の白井も、バックサイドシュガーケーングラインドやキャバレリアルバックサイドテールスライド、アーリーウープからのフロントサイド270ボードスライド、アーリーウープからのフロントサイド180フェイキー5-0グラインド(通称ソラグラインド)を決めると、90.11点を獲得して堀米のさらに上をいく。

その後、ラン2本目では堀米、白井がミスする中、ナイジャが真骨頂を見せる。
ノーリーヒールフリップ バックサイドリップスライド(ハンドレール)、スイッチフロントサイドキックフリップ(バンクtoバンク)、バックサイド180ノーズグラインド(レッジ)、キックフリップフロントサイドボードスライド(ギャップtoレール)、360キックフリップ(バンクtoバンク)、キックフリップ バックサイドリップスライド(レール)、ノーリーバックサイド180ノーズグラインドを決め、最後は雄叫びまでも完璧にメイク。
ランの構成自体は1本目と同じだったが、1本目はラストトリックがスケッチー(完璧ではないメイク)だったため、2本目では得点を伸ばし93.37点を獲得。全体トップでベストトリックに臨む。

1本目のランでミスしてしまい、あとが無かったジャガーも2本目のランでは、ノーリーフロントサイド180スイッチ50-50グラインド(ハンドレール)、フロントサイドブラント(クォーターパイプ)、360キックフリップ(バンクtoバンク)、フロントサイドフィーブルグラインド(バンクtoレール)、スイッチバックサイドリップスライド(ギャップtoレール)、キックフリップ(バンクtoバンク)、バックサイドノーズグラインド(バンクtoレール)、スイッチバックサイド180ノーズグラインド(ハンドレール)を完璧にフルメイク、91.92点を獲得し全体2位でベストトリックに。

ベストトリックでは堀米のとてつもない大逆転劇の幕が開く。

※マティアス以外、全てのスケーターがメイクするトリックが90点以上という、かつてないハイレベルな展開(マティアスはラストにビッグスピンフリップフロントサイドボードスライドで84.12点)。

ベストトリック1本目。
堀米がノーリーバックサイド180 フェイキー5-0グラインドで94.16点、白井がキャバレリアル バックサイドテールスライド ビッグスピンアウトで93.80点、ナイジャがスイッチヒールフリップ フロントサイドテールスライドで92.79点、ジャガーがスイッチバックサイドノーズブラントスライドで92.80点を獲得。

ベストトリック2本目。
コルダノ・ラッセルがフロントサイドキャバレリアル リップスライドで92.88点。
堀米、白井がトリックを外す中、ナイジャがノーリーヒールフリップ フロントサイドノーズブラントスライド(93.22点)、ジャガーがキックフリップ バックサイド180ノーズグラインド(93.87点)を決め、アメリカ勢が早々に2本トリックを揃える。
ナイジャ(合計279.38点)首位、ジャガー(合計278.59点)2位。

ベストトリック3本目。
堀米、白井が失敗。
ナイジャとジャガーもさらに得点を伸ばしに来るがこちらも失敗。

ベストトリック4本目。
リチャード・ターリーがヒールフリップ フロントサイドノーズブラントスライドで92.58点を獲得しこの時点で3位につけると、直後のコルダノ・ラッセルが驚異的な技、フェイキー360キックフリップ バックサイドリップスライドで94.93点を獲得。

堀米はノーリーバックサイド270ブラントスライドをミスしてしまい、あとが無くなる展開に。白井はアーリーウープからのバックサイド180フェイキー5-0グラインドを決め、94.21点で暫定3位に。

ナイジャがトリックをミスし、ジャガーが超高難度トリック、ノーリーフロントサイド270ブラントスライドをハバレッジで決め、95.25点を獲得し暫定トップに。

ベストトリック5本目。
あとが無くなった堀米はこの時点で7位、トップに立つには96.99点が必要という場面で、3本続けて外しているハンドレールでの、ノーリーバックサイド270ブラントスライドを完璧に決め、この日最高得点となる97.08点を獲得。
ジャガーに0.1点差で首位に躍り出る。

堀米がトップに立ったことにより、3位から4位に転落した白井。
トップに立つには96.83点が必要な場面で、ノーリービッグスピン バックサイドテールスライド ビッグスピンアウトを狙うが、本当に本当に惜しくも着地で頭の位置がデッキからわずかにズレてしまい、メイクしきれず失敗。

しかし、最後まで笑顔でオリンピックの舞台を楽しみきったような、清々しい表情を見せた。

ナイジャの5本目は、94.56点を獲得すれば金メダルに手が届く場面。もちろん、キングオブキングのナイジャなら手が届かない得点ではない。

しかし、オリンピックの神様は堀米に味方したのか、ハバレッジでのスイッチヒールフリップ バックサイドK(クルックド)グラインドを失敗。

ジャガーの5本目は、93.98点を獲得すれば逆転金メダルの場面。
これも引き出しの多いジャガーであれば、手に届かない得点ではなかったが、オリンピックには魔物が住んでいるのか、ナイジャに続いてジャガーもハバレッジでのキックフリップ バックサイドノーズブラントスライドを失敗。

この瞬間、堀米雄斗の2大会連続金メダルが確定した。

終わってみれば、金メダルの堀米と銀メダルのジャガーが行なった、最高難度のトリックは回転方向が違うが“ノーリー270ブラントスライド”だった。
※ 堀米はハンドレールでのノーリーバックサイド270ブラントスライド(97.08点)、ジャガーはハバでのノーリーフロントサイド270ブラントスライド(95.25点)

しかし、見えない方向に回るバックサイドと、フロントサイドという回転方向の差が点差に影響した結果となった。

【地獄から這い上がり連覇の金メダル/堀米雄斗】

 
 
 
 
 
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ランが苦手と話す堀米は、決勝1本目のランでフルメイクの滑りを見せる。

スイッチフロントサイドリップスライド(中央メインレール)、360キックフリップ(バンクtoバンク)、バックサイドノーズブラント(クォーターパイプ)、ノーリーバックサイド270ボードスライド(バンクtoレール)、フロントブラント(クォーターパイプ)、フロントサイドスミスグラインド(レール)バックサイドテールスライド(レッジ)、バックサイドスミスグラインド(クォーターパイプ)、ビッグスピン フロントサイドボードスライドフェイキー(7段ハンドレール)、ノーリーフロントサイド270ボードスライド(ハンドレール)を決め、89.90点を獲得。これが大きな1本となる。

2本目のランはミスがあり、全体4位でベストトリックに進む。

以下、堀米のベストトリック[]はセクション名。
1本目[ハンドレール]ノーリーバックサイド180フェイキー5-0グラインドを決め、94.16点。
2本目[ハンドレール]ノーリーバックサイド270ブラントスライドをミス。
3本目[ハンドレール]ノーリーバックサイド270ブラントスライドをミス。
4本目[ハンドレール]ノーリーバックサイド270ブラントスライドをミスしあとが無くなる。
5本目[ハンドレール]ノーリーバックサイド270ブラントスライドを決め、この日最高の97.08点獲得。

パリオリンピック予選大会で苦戦を強いられ、ほとんど出場は不可能かと思われるほどの逆境の中、自身もインタビューで話していた「1パーセントの可能性を信じて」最終予選を戦い抜き、土壇場で大逆転パリオリンピック代表を決めたのと同じトリック、ノーリー(バックサイド)270ブラントスライドで、わずか0.1点差でパリオリンピック金メダルを決めた。
そして回転方向の違いはあれど、銀メダリストのジャガー・イートンが決めた今大会最高難易度のトリックもノーリー(フロントサイド)270ブラントスライドだった。

本人の底知れぬ努力はもちろんなのだが、最後の最後にアメリカ勢2人がトリックを外してしまったという運もある。
ともあれ、称賛する言葉が見つからないほどの堀米劇場での大偉業を成し遂げ、本当にスケボーの神様に愛された男だとしか思えないような、伝説的な一日だった。

【最後まで自分らしく滑り抜いた/白井空良】

 
 
 
 
 
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決勝では堀米に続き、白井もラン1本目からフルメイクの滑りを見せた。
バックサイドシュガーケーングラインド(ハンドレール)、360キックフリップ(バンクtoバンク)、バックサイドスミスグラインド(バンクtoレール)、キャバレリアル バックサイドテールスライドフェイキーアウト(ハバレッジ)、アーリーウープからのフロントサイド270ボードスライド(バンクtoレール)、アーリーウープからのフロントサイド180フェイキー5-0グラインド、通称ソラグラインド(ハバレッジ)を決め、サムライポーズ炸裂。
90.11点を獲得し、全体3位でベストトリックに臨む。

以下、白井のベストトリック[]はセクション名。
1本目[ハバレッジ]キャバレリアル バックサイドテールスライド ビッグスピンアウトを決め、93.80点。
2本目[ハバレッジ]アーリーウープからのバックサイド180フェイキー5-0グラインドをミス。
3本目[ハバレッジ]アーリーウープからのバックサイド180フェイキー5-0グラインドをミス。
4本目[ハバレッジ]アーリーウープからのバックサイド180フェイキー5-0グラインドを決め、94.21点。
5本目[ハバレッジ]ノーリービッグスピン バックサイドテールスライド ビッグスピンアウトを惜しくも着地でミス、4位でパリのコースを後にした。

白井はパリ入りの前、1週間ほど体調不良で入院していたようで、医者にも止められていた状態でのオリンピックだったとインタビューでも話していたが、そんな姿を微塵も感じさせることなく、最後は白井らしく笑顔でコースを後にする姿は本当に「カッコいい」の一言に尽きる。

ラストのトリックを決めきることができれば表彰台入りも狙えただけに、本当に悔しい結果となってしまったが、コースを出てすぐに待ち構えた堀米が最初に白井の健闘をたたえる姿は印象的だった。
少年期くらいまで2人はストリートの撮影を共にしていた仲間であり、今では大舞台でたたえ合う姿は胸に迫るものがある。

【誰も予測のつかない展開を筋書きのないドラマと呼ぶが】

 
 
 
 
 
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今大会の展開、誰が予想できただろうか。

ベストトリック最後の5本目、堀米はメイクしアメリカ勢の2人は逆転が可能なシーンであったのだが2人とも外した。
オリンピックには魔物が住んでいるのか。

それとも神様がいるのか。

それとも、とんでもない脚本家がいるのか。

今回のオリンピック男子ストリート決勝はいつになく、個々のスタイルや個性的なトリックが光る大会だった。

スケートボードの世界はどんなに上手くても、その人ならではのスタイルや個性がないと世界的に人気のスケーターにはなれない。スタイルや個性が伸びていった先に、その人ならではの得意技やオリジナルトリックが生まれる。堀米ならノーリーからの複合トリックであり、白井ならソラグラインドなどだ。

今大会も決勝に進出したスケーター全員が、究極まで磨き上げ、彼らにしかできない唯一無二のスタイルの滑りで、歴史に残るストーリーを見せてくれた。

スケーターだけでなく、多くの人々が熱狂し感動するオリンピックのスケートボード。

次の開催は2028年のロサンゼルス大会だ。

スケートボードの本場で開催されるオリンピック、今度はどんなドラマが待ち受けているのだろう。

それまでに彼らはどんな唯一無二を磨き上げていくのだろうか。

どんな脚本家にも描けないストーリーが、オリンピックスケートボードにはある。

【パリオリンピック男子ストリートリザルト】

 
 
 
 
 
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1位 堀米 雄斗(日本)–281.14
2位 ジャガー・イートン(アメリカ)–281.04
3位 ナイジャ・ヒューストン(アメリカ)–279.38
4位 白井 空良(日本)–278.12
5位 リチャード・ターリー(スロバキア)–273.98
6位 ケルビン・ホフラー(ブラジル)–270.27
7位 コルダノ・ラッセル(カナダ)–211.80
8位 マティアス・デルオリオ(アルゼンチン)–153.98

以下、予選敗退順位
9位 ヴィンセント・ミルー(フランス)–252.78
10位 マウロ・イグレシアス(アルゼンチン)–249.09
11位 マット・バージャー(カナダ)–230.44
12位 ブランドン・バルジャロ(南アフリカ)–197.17
13位 ジオバンニ・ビアンナ(ブラジル)–178.52
14位 小野寺 吟雲(日本)–177.08
15位 フェリペ・グスタボ(ブラジル)–157.89
16位 オーレリアン・ジロー(フランス)–143.71
17位 グスタボ・リベイロ(ポルトガル)–142.14
18位 ライアン・ディセンゾ(カナダ)–116.69
19位 シェーン・オニール(オーストラリア)–107.50
20位 ジョセフ・ガルバッチョ(フランス)–72.57
21位 クリス・ジョスリン(アメリカ)–50.84
22位 ジャンカルロス・ゴンザレス(コロンビア)–48.09

文 小嶋勝美
スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。
約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。

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放送作家 小嶋勝美
この記事を書いた人

放送作家 小嶋勝美

お笑い芸人として活動後、放送作家に転身。 スポーツ番組やバラエティ番組などに携わる傍ら、20年以上続けている大好きなスケートボードのライターとしても活動。 コンテスト記事の他、スケボーの情報や面白い発見を伝えていくと共に、スケートボードが持つ素晴らしさを多くの人に広めていきたいと思っています

放送作家 小嶋勝美が書いた記事

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