絶滅危惧種も生息。ビルの谷間に息づく大自然「大手町の森」×落合陽一のインスタレーション作品が公開中

2022/06/10
マガジンサミット編集部

落合陽一氏が手掛けたメディアアート作品『nullの木漏れ日』(Sunbeam of null in forest)が、東京都千代田区の大規模複合ビル「大手町タワー」内に広がる「大手町の森」にて2022年7月8日まで展示中です。

これは、都心が失いつつある本物の豊かな自然環境を再生することを目標とする「大手町の森のプロジェクト」がスタートしてから約10年を迎えたのを機に、新たなる挑戦へのスタートと「大手町の森」をより多くの人に知ってもらいたいという想いから誕生したものです。

インスタレーション作品『nullの木漏れ日』

3Dホログラム(3D Phantom®)を活用した『nullの木漏れ日』(Sunbeam of null in forest) は、落合氏が創作のテーマにしているデジタルネイチャー(計算機自然)というビジョンをもとにしたインスタレーション作品。作品と「大手町の森」とが調和しシンクロする空間(世界感)を五感で楽しむ15分間のプログラムとなっています。

落合氏がかかげるデジタルネイチャーとは、“コンピュータと自然が親和することで再構築される新たな自然環境”のことで、『nullの木漏れ日』は、デジタルによって物質性と離れて生まれる木漏れ日と、デジタルによって突如として生じうる可能性の関係を惹起するメディアアートになっています。

LEDディスプレイが発するサウンドと3Dホログラムが、葉ずれの音や鳥の声、人の足音や自動車の音となどと重なることで、実態のあるものと無いものとが織りなす不思議な世界を体験できます。よく聞けば森とは関係のないサウンドも混じっており、心を無にして作品を眺めていると新しい“気づき”が生まれるかもしれません。

知って欲しい「大手町の森」のこと

約3,600㎡におよぶ「大手町の森」は、一般的なオフィスビルの足元に見られる緑地帯とは異なり、千葉県君津市で大手町の人工地盤などの環境を再現した【プレフォレスト】を構築し、3年にわたりさまざまな検証を重ねたうえで森を土壌ごと大手町に輸送し移植するという方法をとっており、「都市を再生しながら自然を再生する」という開発コンセプトのもとにオフィス街に“本物の森”を再現させています。

移植から約10年が経過した現在では、208種類の植物、129種の昆虫類、13種類の鳥類、タヌキの姿などが目撃されており※、なかには、東京都のレッドリストに記載されている「アスカイノデ」や「ホソミオツネトンボ」などの希少生物が定期的に確認されるなど、生物の生息拠点である皇居からの移動拠点として、着実に自然環境が育ち生態ネットワークが形づくられています。(※2021年調査時)

開発を手掛けた東京建物株式会社では、「大手町の森」ならではの日陰が多い森林環境という強みを伸ばした生態系保全を行っていくとともに、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和、水の循環利用など整備効果を追求していきたいとしています。

また、展示に先駆けて行われた発表会では、「皆さまに「大手町の森」をもっと知ってほしい。近隣オフィスワーカーをはじめ訪れる方々の憩いの場として、よりいっそう愛されるよう、今回の展示をかわきりに積極的にイベントを開催したい」とコメント。落合氏は「質量のないデジタルアート作品は、重さや大きさなど制約が少なく、モニュメントやイベントとしても多様で新しい挑戦が可能」と話しており、今後、緑地と人とのコミュニケーションの架け橋となる、デジタルネイチャーアート作品を積極的に発表していきたいとしています。

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