この投稿をInstagramで見る
パリオリンピックの代表選考を兼ねた大会「ワールド・スケートボード・ツアー（WST）ストリート2024ドバイ大会」の準決勝と決勝が3月10日にUAEのドバイで開催され、男子は根附海龍（ねつけかいり20歳）がWST初優勝の快挙。
他に日本勢は白井空良（22歳）が3位で表彰台に上がり、小野寺吟雲（14歳）が4位、青木勇貴斗（20歳）が8位にそれぞれ入賞した。
本来は前日の9日土曜日に準決勝が行われる予定だったが、雨のために急遽10日に準決勝と決勝が行われることになり、準決勝のフォーマットも45秒のラン2本中のベストラン方式に変更された。
準決勝に登場した、東京オリンピック金メダリストの堀米雄斗はランでフルメイク（ノーミスで滑ること）の滑りを見せ、71.90点を獲得するも8位のライアン・ディセンゾ（カナダ）にわずか0.13点届かず、準決勝敗退。
本来であれば、準決勝は堀米の得意なベストトリックがあり「雨が降らなければ違った結果になっていたかも…」と考えてしまうが、今後開催されるオリンピック予選フェーズ2での活躍に注目したい。
（今大会開催前まで）オリンピックランキング1位のナイジャ・ヒューストンと、東京オリンピック銅メダリストのジャガー・イートンといった強豪アメリカ勢に加え、ランキング3位のフランス、オーレリアン・ジローが今大会を欠場。
女子ではランキング8位につけていたブラジルのパメラ・ローザといった実力者達が今大会を棄権している。
この投稿をInstagramで見る
※ Instagramより女子ファイナリスト
女子は赤間凛音（りず15歳）が優勝し、吉沢恋（ここ14歳）が3位で初の表彰台に上がった。
日本勢は他にも、WST初参戦となる松本雪聖（いぶき12歳）が4位、伊藤美優（16歳）が5位、決勝進出者の中で唯一の20代となった藤澤虹々可（ななか22歳）が6位でそれぞれ入賞している。
男子に続き、女子の準決勝も波乱の展開となった。
急遽変更となったルールにより、前述の通りラン2本のみでの採点となったのだが、決勝進出の常連となる東京オリンピック金メダリストの西矢椛や、昨年12月に開催された世界選手権女王の織田夢海、東京オリンピック銅メダリストの中山楓奈が、相次いで準決勝敗退となる中、WST初出場となる松本雪聖が準決勝4位で決勝に進出する快進撃を見せた。
【国内争いも上位6人によるフェーズ2へ】
この投稿をInstagramで見る
パリオリンピックスケートボードは1種目につき22名までの出場が予定されているが、1ヵ国最大3人までの出場となるため、オリンピックランキングで上位に入っていたとしても国内選手との上位争いも重要になってくる。
去年12月に行われた世界選手権終了時点で、日本勢男子のオリンピックランキング上位は、2位に白井空良、5位に小野寺吟雲、6位に根附海龍、7位に堀米雄斗、10位に佐々木音憧、17位に青木勇貴斗、24位に松本浬璃、32位に池慧野巨と位置していたが、今大会の結果を受けてオリンピックランキング日本人上位6人は…
1位、白井空良、5位に根附海龍、6位に小野寺吟雲、7位に堀米雄斗、10位に佐々木音憧、15位に青木勇貴斗となった。
日本勢女子のオリンピックランキングについては、今大会前は21位以内になんと9人がランクインする大混戦。
上から1位西矢椛、3位に織田夢海、5位に赤間凛音、6位に中山楓奈、7位に吉沢恋、10位に伊藤美優、13位に上村葵、20位に藤澤虹々可、21位に中島野々花と続いていたが、今大会の結果を受けて日本勢上位6人は…
1位、西矢椛、3位に織田夢海、5位に赤間凛音、6位に中山楓奈、7位に吉沢恋、9位に伊藤美優となった。
【ストリート種目のルール＆フェーズ2とは】
この投稿をInstagramで見る
45秒間自由にコース内を滑るランを2本と、一つのセクションで1発技を行う、ベストトリックを5本行い、ランのベストスコア1本と、ベストトリックの上位2本の合計得点で順位が決まる。
採点は前回の東京五輪までは1トライにつき10点満点だったが、パリ五輪予選では100点満点で採点され、小数点以下2点まで(最高得点は300.00点)となる。
東京五輪と大きく違う点はラン2本中、どちらか1本は必ず得点にカウントされるため、ランで大きくつまずいてもベストトリックで大逆転、という事はかなり厳しくなった。
パリオリンピックに出場するためには、6月24日時点でオリンピック世界スケートボードランキングに入っている必要がある。
東京オリンピックと同じくストリート（男女）とパーク（男女）の4種目が行われ、各種目22名ずつ（合計88名）出場できる。
※1カ国1種目につき、最大3人までの出場。
オリンピックならではなのが5大陸（アフリカ・アメリカ・アジア・ヨーロッパ・オセアニア）枠が確保されているところ。
1つの大陸から、選手がオリンピックランキングの上位に入れず、出場枠を取れなかったとしても、その大陸の代表選手のランキング上位の選手が出場できるため、世界的な大会ではなかなか見る事のできないような国の選手も、五輪の大舞台で見ることができる。
【最終決戦となるフェーズ2のポイント】
出典：WORLD SKATEホームページより
https://www.worldskate.org/skateboarding/about/regulations/category/554-olympic-qualifying-system.html
フェーズ2のランキングポイントは1位がなんと26万点！2位は208000点、3位は176800点と今回のプロツアー（1位は5万点）と比べても大きな差がある。
今大会はパリオリンピック予選ツアーのフェーズ1最後の大会となり、今後はオリンピックランキングをもとに44人（各国最大枠6人まで、開催国枠などオリンピックならではの選考基準があるため、一概にランキングの上位44人とは限らない）が選出され、フェーズ2でパリオリンピックへの出場権を競うことになる。
パーク種目はフェーズ1で順位の高かった3大会分、ストリート種目は4大会分のポイントを持ち越してフェーズ2に進むことになる。
フェーズ2は現在5月16〜19日に上海大会、6月20〜23日にブダペスト大会が予定されており、最終的なオリンピック世界スケートボードランキングをもとにパリオリンピックに出場できるスケーター（各種目22名）が決定する。
【WST初優勝・根附海龍】
この投稿をInstagramで見る
去年の12月に東京で行われた世界選手権で準優勝を飾り、勢いに乗る根附海龍は準決勝を4位で決勝に進む。決勝のラン1本目では85.21点の高得点を獲得し、ポルトガルのグスタボ・リベイロ（ラン89.30点）に次ぐ2位でベストトリックに臨んだ。
以下、根附のベストトリック。
1本目、2本目でヒールフリップバックサイドノーズブラントスライドをミス。
ここで外すと厳しくなる3本目では、ヒールフリップバックサイドテールスライドフェイキーアウト（メインハンドレール）をしっかり決め、85.36点を獲得。
4本目ではノーリーインワードヒールフリップフロントサイドボードスライド（メインハンドレール）を決め、93.17点の高得点を獲得し暫定トップに立つ。
最終5本目には、再びヒールフリップバックサイドノーズブラントスライドに挑むも失敗してしまったが、2位のグスタボ・リベイロも最終トリックを失敗してしまったため、わずか0.04点差を守りきり、見事WST初優勝の快挙を遂げた。
【ついにパリ五輪ランキングトップ！・白井空良】
この投稿をInstagramで見る
※ Instagramより「キャブシュガーケーングラインド」
去年の12月に東京で行われた世界選手権で優勝し、王者として参戦の白井空良は準決勝でも圧巻のランを見せ、唯一の90点代（92.03点）を叩き出し、首位で決勝進出を果たす。
決勝のランでは、1本目をフルメイクで終えることができずに迎えた2本目、バックサイドシュガーケーングラインドや、通称ソラグラインドとも呼ばれるフロントサイド180からのフェイキーバックサイド5-0グラインド、バックサイド180からのフェイキーフロントサイド50-50グラインドなどを決める素晴らしい滑りを見せるが、ラストトリックとなるクォーターパイプでのブラント キックフリップフェイキーをミスしてしまう。
ラン終了後には、手にデッキを持った状態でレールに飛び乗る技、ケイブマンボードスライドで観客を沸かすが得点は69.98点に留まり、5位でベストトリックに臨んだ。
以下、白井のベストトリック。
1本目（メインハンドレール）キャバレリアル バックサイドテールスライドビッグスピンアウトで94.14点を獲得。解説者に「ビデオゲームトリック」と言わしめるほどの高難度トリックを決める。
2本目（ギャップtoレール）ノーリービッグスピンバックサイドテールスライドで89.75点を獲得し暫定トップに立つ。
3本目と4本目では、メインハンドレールでキャバレリアル バックサイドシュガーケーングラインドを狙うもミスし暫定3位に。
迎えた5本目では、ミスしたキャバレリアル バックサイドシュガーケーングラインドを完璧に決め、この日最高となる97.07点を獲得し、会場は大歓声に包まれた。終わってみれば、ランもベストトリックも一番湧かせたのが白井空良だった。
【WST2度目の優勝・赤間凛音】
この投稿をInstagramで見る
準決勝を5位で決勝に進んだ赤間凛音は、決勝のラン1本目でバーレーグラインドやフロントサイド360オーリー、フロントサイドビッグスピンヒールフリップ、フロントサイド180ノーズグラインドといった得意のフロントサイドからの高難度トリックを次々と決め、87.84点を獲得し、オーストラリアのクロエ・コベル（93.49点）に次ぐ2位でベストトリックに臨む。
以下、赤間のベストトリック。
1本目（メインハンドレール）バックサイドハリケーングラインドを決め、86.48点を獲得。
ここで首位に立つ。
2本目（ギャップtoハバレッジ）バーレーグラインドを決め、81.19点を獲得。
3本目（メインハンドレール）去年6月のWSTローマ大会で優勝をもぎとったトリック、フロントサイドフィーブルグラインド180アウトを決め、89.83点を獲得。
4本目（メインハンドレール）フロントサイド270リップスライドを失敗、全員が4本目を終えた時点で、クロエに首位の座を明け渡す形に。
5本目（メインハンドレール）フロントサイド270リップスライド フェイキーアウトを完璧に決め、93.17点を獲得し見事逆転に成功する。
最後はクロエが87.22点を出せば逆転優勝の場面。彼女ならこの点数を超えるトリックをいくつか持っているということを見ている誰もがわかっていただけに、日本勢にとっては緊張のシーンだったが、これをクロエが痛恨のミス。
この瞬間に赤間のWST2度目の優勝が確定した。
【WST初の表彰台・吉沢恋】
この投稿をInstagramで見る
※ Instagramより「吉沢恋、準決勝のラン」
準決勝を6位で決勝に駒を進めた吉沢恋は、ラン1本目で得意のビッグスピンフロントサイドボードスライドやバックサイドスミスグラインドなどフルメイクの滑りを見せると、2本目のランの最後にはバックサイドノーズスライドから270ショービットアウトといったさらに難易度を上げたトリックを見事に決め、80.12点を獲得し5位でベストトリックに臨む。
以下、吉沢のベストトリック。
1本目（メインハンドレール）キックフリップフロントサイドボードスライドを決め、86.15点を獲得
2本目（メインハンドレール）フロントサイドハリケーングラインドを決め、87.52点を獲得、全員が2本目を終えた時点で2位につける。
3本目以降はギャップtoハバレッジでバックサイドノーズスライド270ショービットアウトを狙うも、決めきれることができなかったが自身初となる3位で表彰台をものにした。
WSTドバイ大会・ストリート男女決勝の映像
(YouTube：https://www.youtube.com/live/tTyZoh9W9fQ?si=qy7mFPw5dGiIk3Mz)
【WSTドバイ2024・男子リザルト】
この投稿をInstagramで見る
1位 根附 海龍（日本） -263.74
2位 グスタボ・リベイロ（ポルトガル） -263.70
3位 白井 空良（日本） -261.19
4位 小野寺 吟雲（日本） -241.77
5位 リチャード・ターリー（スロバキア） -219.32
6位 ライアン・ディセンゾ（カナダ） -168.00
7位 マット・バージャー（カナダ） -159.37
8位 青木 勇貴斗（日本） -84.92
【WSTドバイ2024・女子リザルト】
この投稿をInstagramで見る
1位 赤間 凛音（日本） -270.84
2位 クロエ・コベル（オーストラリア） -267.29
3位 吉沢 恋（日本） -253.79
4位 松本 雪聖（日本） -250.52
5位 伊藤 美優（日本） -243.98
6位 藤澤 虹々可（日本） -231.09
7位 チェンシー・ツイ（中国） -202.93
8位 ライッサ・レアウ（ブラジル） -174.31
文・小嶋勝美
スケートボードに関する情報を幅広く執筆する、スケートボードライター兼放送作家兼スケーター。10年間のお笑い芸人生活を経たのち、放送作家をしています。
