【佐藤駿平・解説】アントワン・ディクソンの映像から紐解くスケートボードの“スタイル”ってなに?

2020/12/11
放送作家 小嶋勝美

いまいち曖昧なスケートボードの“スタイル”についての考え方や捉え方を、独断と偏見で紐解いていくこの企画。

今回はSpot Skateboardingで紹介されるや否や、そのこだわりすぎるスケートスタイルから、一部スケーターの間で“和製アントワン・ディクソン”とも呼ばれる佐藤駿平に、お気に入りのスケート映像を通して、スタイルについてマニアックすぎる解説をお願いしてみた。

(※アントワン・ディクソンとは…BAKER3をきっかけに一躍有名になったプロスケーター。VICEの特集(2011年10月公開)では豪邸に住み、プールにはビールと大麻がセットという生活ぶりで、ツアーに行けば殴り合いの大暴れ、警察と揉めるのは日常茶飯事といった破天荒ぶり。その後はドラッグやアルコールに喧嘩と、トラブルが絶えない生活の末、刑務所へ入る事に。現在はスケートへ復帰しThe Berricsなどに映像を残している)

スケートボードはドライブの動きが史上最高にかっこいい

——今回紹介してもらう映像は?

自分がアントワン・ディクソンを知るきっかけになったBAKER 3でのパートです。

YouTube動画 BAKER3 Full Video[https://youtu.be/aLwk3-LPIxQ]

(映像11分2秒、アントワン・ディクソンのパートから一緒にビデオを見る)

(映像スタート直後)はいストップ!

——はやっ

この最初のトリックの、スイッチフロントサイド180。両腕の動かなさと、着地で膝の曲がらなさ具合がヤバくないですか?

——着地の膝の曲がらなさ具合はあえてなのかな?腰へのダメージが蓄積されそう。

いや、ナチュラルだと思います。

そして、このラインの繋ぎでやってる360キックフリップの上半身の動かなさ具合!

そこからのヒールフリップ。

この一発目のラインでこの人がどんなスケーターかというのがわかっちゃいますよね。

この人はこういう、上半身が動かない系のスケーターなのかな?と。

それとも、たまたまこのラインだけが、上手く出来ただけなのかな?と

そんな感じに、初めて見る人は食いつきますよね。

1番ヤバいのがココ(映像11分48秒)のバックサイドノーズスライド270アウト。

このトリックのどこがヤバいのかと言うと…着地で足りない90度の部分でのドライブ。

まず初めに言いたいのが、自分のスケートボードの美学としてドライブの動きが史上最高にかっこいいと思ってるんですよ、もちろんディクソンの影響なんですけど。

(※ドライブとはトリックの着地などで、足りない回転を補う動きの事)

ドライブの入り方やスピードって人それぞれなんですけど、ディクソンのドライブのポイントは速さと、ドライブしたあとの後ろ足(テール側)がつま先立ちになる点なんですよ、これがマジでかっこよくて。

——マニアック(笑)

ただつま先立ちになればいいって訳ではなくて、ディクソンのドライブの形は、この言い方は語弊があるんですけど、綺麗じゃないっていうか…。

“上半身が絶対に残ってて、下半身だけでもっていく”から、完璧に回りきっている訳ではないんですよ。

上半身が絶対に残るから、下半身と上半身が超ねじれるんです。

超ねじれて、着地の瞬間に腰とつま先でぐっと押してドライブを入れる事によって、後ろ足がつま先立ちになる。その後に、ゆっ~くり上半身が戻ってくる。

これがディクソンのドライブのナチュラルな形なんです。

このドライブ入れた後の上半身の戻し方がマジでヤバいので見て下さい。

(大興奮でもう一度映像を見る)超~ゆっくりー!!

音楽も映像にはめてて、この着地に音をはめてますね。

※アントワン・ディクソンのドライブをマネする佐藤駿平

270アウトのドライブの話でいえば、例えばハーフキャブノーズスライド270アウトが、回転がかけやすいのもあっていろんな人がやってるんですけど、ドライブの時にこの動きになっている人は絶対いないんです。

ノーズスライド270アウトで90パーセント以上の人は、着地で足りない部分にドライブを入れると思いますが、上半身と下半身が全く逆の動きをして後ろ足(テール側の足)のつま先が、ディクソンと同じ形になっている人は、ほぼいないと思います!

いたら痺れますね。

このディクソンのワントリックが衝撃的過ぎて、そこから自分のノーズスライドのアレが始まった感じです。

——アレっていうのはノーズスライ道(どう)って事?

ハハハ(笑)

今でもめっちゃノーズスライドをやっているのも…

(二人同時に)ノーズスライ道。

って事。

手が上がらないとか、力が抜けてるとかは皆思う所なんですけど、ディクソンを見る一番のポイントはドライブのかけかた!

ここだけは覚えておいてほしいですね。

スケートボードの技って一つもダサい技は無い

——アントワン・ディクソン歴は何年?

13年ですね。

(映像に出てる)このKREWのTシャツも当時買いましたし。

それともう一つ見てもらいたいのが、このフェイキーオーリー(映像11分54秒)。

このスポットでは、今までいろんなトリックが出てるんですけど、2020年の今見てもディクソンのフェイキーオーリーが一番かっこいいです。

(しばし映像を見てボソッと)ケツ出てるなぁ。

——ケツ出てるとは!?

わからないんですか??

着地の瞬間ケツが出るんですよ。なんでか出る時があるんです。

——本当だ!着地の時、普通は腰を落とすのにケツが出てるね。まさかそこまでマネしてたとか?

それはマネしてないです。

——了解です。

(映像12分)このラインのサスキグラインドなんですけど、これを見てから自分もサスキグラインドにハマりました。

誰が何と言っても、サスキグラインドはかっこいい技!

というか、スケートボードの技って一つもダサい技は無いんですよ。

かっこいい奴がしっかりかっこ良く見せたら、何でもかっこいいんです。

かっこいい奴がやるからかっこ良くなる。

かと言って、その逆はダサいとかじゃなくて、突き詰めてやっていないだけだと思っています。

——なるほど、それは確かにそうだね。

あと、そこに特化した人がかっこよく見せられるっていうのもあって、例えばサッカー選手でパスがめちゃくちゃ上手い奴がいたとして、そいつが全部のポジションで活躍出来る訳じゃないですよね。

スケートもそういう所があって、ディクソンがRトリックをやってる所はほとんど出てないけど、実際Rトリックが全部他のプロより優れてるのかというと、そういう訳でもない。

その人の得意のスポットでやる技だからかっこよくなる。

そういう意味でも、スケートボードにはダサい技が一つも無いんですよ。

考え方もスタイル

(映像12分34秒ノーリーバックサイドクルックドグラインド)この顔!技をメイクした後に口を開く所もかっこいい。

——もはや口開くのはハンマーメイク後の流れの一つになってるね、癖もスタイルと言っていいのかな?

癖もスタイルじゃないですか。

ラインの撮り方や繋ぎ方、あと考え方も。

「この技はかっこいい」って思う考え方もスタイルだと思っています。

——考え方もスタイルっていうのは新しいね。

(映像12分36秒のノーリーヒールフリップを見て)カールスバッドのグラスギャップ。今は無くなってしまった有名なスポットですね。

YouTube動画 R.I.P. Carlsbad Gap[https://youtu.be/cUwQ20Sn2a0]

(映像終了)これで終わりなんですけど、このパートは最低でも3回は面白いハズなんです。

まず最初に、腕が肩より上がったトリックは何個あったんだろうって思いますよね?

そこでここからは自分の見方になるんですけど、最初に戻って足元のスケートボードは一切見ずに、上半身だけを見るんです、

そのあとに再度、全体的に見返すと。

——そうすれば、何かがわかってくると?

“スケートの動きとして絶対にあるはずの物”がディクソンは一切ない

見てみましょう。

(映像11分26秒)例えばこのノーリーバックサイドビッグスピン。普段手が上がらないディクソンだから肩より上がってるっぽく見えるけど、実はギリセーフ。

——本当か?

ギリセーフっていうか別にカウントしてもいいですよ。

——(映像11分35秒ノーリーバックサイドリップスライド)これは上がってるよね。

まぁ、着地で上がってるっすね。1個目。

——(映像11分45秒ノーリーフロントサイドポップショービット)あ、上がったね。着地が難しいのかね?

着地というより、空中でのピークの後、落ちる時にどうしても手が残っちゃうんですよ。

(12分11秒スイッチヒールフリップ)これも上がってますけど、そんな事よりも注目して欲しいのは、この伸びのピークの時点で手が上がってないという所、ここが一番すごいんです。

正直言って、ピークから落ちる時に手が残ってしまう(上がってしまう)のは許容範囲みたいなもんです。

(12分21秒スイッチフロントサイドヒールフリップ)これも下から煽りぎみなんで、上がってないかもしれないですね、いやむしろ上がってないですね。

——疑惑の判定。

じゃあ、ここは厳しくカウントしていいですよ。

(12分26秒ヒールフリップ)これも着地というか、ピークから落ちる時に手が残ってる。

——最後のグラスギャップ(ノーリーヒールフリップ)はどう?

これは一見、肩から上に上がってる様には見えるんですけど…逆に軽いスタイルと言われてる人の映像と比べてみてどう思いますか?

ディクソンの場合25トリックの中で5回くらいしか手上がってないんですよ!

——結局、最後のノーリーヒールはカウントするの?

じゃあカウントでいいですよ。

——じゃあ6回くらいかな。

でもスケートやってればわかると思うんですけど、肩から上に手が上がらないとか、手が一切バタつかないのって、すげー難しい事なんですよ!

要は全力を出した時に腕が上がったりしちゃうのは、スケートの動きとして絶対にあるはずなんです。でもディクソンは一切ない。

——6回はあったけどね。

それで自分も一つの技をやる時に、肩から上に腕があがったりとか、技をメイクしても手がバタついていたら、手も上半身もバタつかないようにメイクできるまで、何度もやり直ししてました。

今はアントワン・ディクソンになりたいわけではないし、いろんな角度でスケートボードを見れるようになったから、手が肩から上にあがっていてもかっこいい形だったり、自然な体の流れとかの方を意識してスケートしてます。

さぁもう一個見ますか!

——もう1時間以上話してるけど…。

次も自分の中で衝撃的なのがあって。

——次の映像いく前に、一つ質問!アントワン・ディクソンの他に好きなスケーターは?

アントワン・ディクソンだけです。

他にもかっこいいと思うスケーターはいるけど、別格でディクソンが自分の中にいすぎて。

——佐藤ディクソンみたいになってるって事?

(笑)そのあたりはわかんないですけど。

——もう表札変えようよ。

(笑)だからディクソンになることが目標ではないんで。

ディクソンの凄さは“こだわり”

はい、では次はSUPRAのYoutubeチャンネルにあるDEATHWISHのパートですね。

YouTube動画 Antwuan Dixon For Supra[https://youtu.be/12MSCPMVfJo]

これは確か、ディクソンが自分の為に作られたDVDだってVICEのインタビューで言ってました。

(映像18秒)このトニー・ザ・タイガーのTシャツめっちゃ欲しかったですね。

トニー・ザ・タイガー Antwuan Dixon For Supraより(出典)[https://youtu.be/12MSCPMVfJo]

——なんだっけこいつ?

コーンフロスティのキャラクターです、ディクソンが着てるとなんでもかっこよく見えるんですよ。

——トニーにちょっと似てるもんね、(駿平の)顔。

(笑)絶対ないっすよ!似てないっすよ!

このパートも最初からヤバいですよ。

コレ!わかりますか?さっき僕が言ってたケツ。

——唯一駿平がマネしなかったという。

いや、まぁケツはマネしなくてもいいかなって。ディクソンがやるからかっこいいんですよ。

ノーリーキックフリップやフェイキーキックフリップとかもやってるんですけど、もうひとつのポイントはココ(映像46秒)のダブルキックフリップ。

こういう技もかっこよく見せられる。

実はダブルキックフリップはデモではけっこうやってるんですよ。

——確かにキックフリップみたいに前足を抜くよね。

ダブルなのにせかせかする事なく、力まずに力が抜けてる、それがめっちゃかっこいい。

(映像48秒スイッチフロントサイドテールスライドヒールフリップアウト)ディクソンの最近の映像で、このコートハウスのスポット(ロサンゼルス)でノーズスライドヒールフリップアウトの映像が上がってたっすね。

(ここからしばし沈黙)

——BAKER 3でしゃべりすぎた?

いやいや、むしろ喋り足りないっす。

(1分22秒)このノーリーヒールフリップバックサイドボードスライドなんですが、同じクオリティで何回も何回もメイクしているのが、別の映像に出てたんです。

はたから見たら、最高のクオリティで何度もメイクしてるんですけど、最終的にはこれになった。

要はディクソンの凄さは“こだわり”なんですよ。

よろけすらもスタイル

(映像1分36秒)このラインはイカれてるっすよ。

けっこう伝説的なラインなんですけど、まずこのフェイキーKグラインドが超かっこいいんですがそこは置いといて、このフェイキーキックフリップやばくないですか?

普通にやってるように見えるけど、よく見ると段差がある。

ワンプッシュ入れた直後に段差をおりて、何事もなかったかのようにクリアしてる所に注目してほしい。

ナチュラルにやってるのか?それとも狙ってこのスタンスで、わざとずりずり足の位置を変えずにフェイキーフリップに入ってるのか?

一見ただのフェイキーフリップなんだけど、いろんな要素が詰め込まれている。

そして最後に、スイッチヒールフリップ5-0グラインド。

これはすげぇラインですよ。

(2分17秒スイッチフロントサイドキックフリップ)逆に今まで完璧に見せてきたのに、着地した時にこういう“よろけ”があったりするんですよ。

でも、こういうよろけすらも“自然なよろけ”っていうか。

(着地が)汚いとかスケッチーとかじゃなくて、このよろけすらも自分をかっこよく見せる為の一つになってる。

——見せ方によっては“よろけすらもスタイル”

そうですね、かっこいい奴はブレてもかっこいいんです、ずるいですよね。

 (映像2分50秒)これは完全にゾーンに入ってるんです。

——入ってるね(笑)

完全なゾーンです(笑)

ゾーンに入ったアントワン・ディクソン Antwuan Dixon For Supraより(出典)[https://youtu.be/12MSCPMVfJo]

(映像3分24秒)このデスウィッシュのパートの時に被ってたタコベルの帽子を、最近ディクソンがインスタグラムで「このパートで被ってた帽子、誰か持ってない?知らない?売ってくれない?探してる」みたいな感じで投稿してたっす(※現在投稿は削除されている)。

 (映像3分34秒)このKREWのTシャツめっちゃカッコいいと思ってたんですけど、ゲット出来なかったです。

——ケツ以外はなんでも欲しがるね。

(映像3分51秒)このタイミングで、スイッチフロントサイドビッグスピンをやるんですけど、ディクソンってこの技のイメージ無いですよね?

——ここまでノーリーでは見たけど、スイッチでは見なかったね。

このパートでは、スイッチヒールフリップから始まって、バリアルヒールフリップもインワードヒールフリップもヒールフリップアウトもヒールフリップKグラインドもノーリーバリアルヒールフリップもハーフキャブキックフリップも…全部ディクソンから連想できるトリックなんですよ、BAKER 3でもやってたし。

ただやってるスポットが違うってだけで、ノーリーヒールフリップもグラスギャップからステアに変わっただけっていうか。

だけど、このスイッチフロントサイドビッグスピンは、おそらくディクソンのメインウェポンじゃないのにカッコいい所がすごいんです。

それも、最後のおまけ映像的な所に使ってるという。

——(映像4分20秒)これはなんでジャケットを着てるの?

これは自分も思ったっすね(笑)

もしかしたら、何か意味があるのかもしれないですね。

一緒に映ってるのはブライドン・サフランスキーだと思うんですけど、ノリで「ジャケット着たら面白いんじゃね?」ってなったのか、本当にこの日ディクソンはジャケットで決め込んでいたのか?真相を聞いてみたいですね。

——(映像4分27秒)これはどういう状況なのか解説お願いします。

これは、TKを応援してたんじゃないんですか?

——TKって、タケオ・キクチ?

いやいや、誰ですか?(笑)

——マルイとかに入ってる。

テリー・ケネディーですよ。

スープラやデスウィッシュの。

——あ、サングラスの方がアントワンか。一瞬、階段登っていった方かと思った。

自分も見始めた頃は「どっちがディクソンなんだろう」と思ってたんですけど、見慣れるとわかります。この後ろ姿は絶対テリー・ケネディーなんですよ。

ズボンの細さもそうだし、この後ろ姿はTKです!

人それぞれのかっこよさ+かっこいいって思う部分

——ありがとうございました、総まとめをお願いします。

アントワン・ディクソンがただただ、好きという事でいろいろ語りましたが。

言いたい事は何なのかというと、今はもっとすごい映像がたくさんあるじゃないですか。

例えば超テクニカルな技が出てたり、(グラインドやスライドを)超鬼流ししてる奴がいるとか、ヤバいハンマートリック決めてる奴がいるとか、そういった映像がたくさんある中で、10年以上も前に見たアントワン・ディクソンがいまだに一番かっこいいって思ってる奴もいるわけです。

BAKER 3(2005年)が出たのが15年前とかで、それぞれのスポットでトリックはどんどん更新されていくものなのに、その時のかっこよさは色褪せずに常に残ってる。

BAKER 3のディクソンがフェイキーオーリーをやってるスポットでは、いろんな奴がすごい技をやってるのに、ディクソンのフェイキーオーリーとノーリーKグラインドの方がかっこいいと思えるのは、ディクソンの滑りだからこそ。

100人やって100人とも違うノーリーKグラインドが出て、100人とも違うフェイキーオーリーが出る。

そこがスケートボードの面白い所かなって思います。

——自分の滑りで気にしている部分は?

乗り方とか、軽い動きをする奴の中でもジャンルがあって、本当にフワフワ系の軽いやつだったり、アントワン・ディクソンとかウェイド・デサルモみたいにしっかり芯があって、ドシッと重みがあるタイプの軽さだったりで、またジャンルが分かれていくんですけど、その中でも自分の理想のスタイルとしては、軽いのに1つ1つの動きにドシッと芯があって力強さがある。それが自分が心がけてる動き方です。

——駿平にとって“スタイル”とは何?

まずスケートボードをしているときの服装や、姿勢、腕の動きとか、細かい所まで言うと指の動き、首の動き、人それぞれの体の特徴やクセもそう、一人一人違う部分に加えて、その人の考え方。

例えば「この技、絶対かっこいいよな」って思ってやり続ける事もスタイルだし、映像を撮る時、ラインの繋ぎで「このトリックをやった後は、このトリックをやったらラインとしての流れがいいな」とか思う考え方。

そういう部分が“スタイル”なのかって。

自分の一番かっこいい動きを理解し、映像に残し続ける事を自然に出来る奴もいれば、計算してる奴もいるし。

“人それぞれが持っているかっこよさ+かっこいいと思う部分”がスタイルなのかなって思うっすね。

——どこをかっこいいと思うかは十人十色だからね。

そうですね、ディクソンのドライブの上半身が残った状態で、ゆ〜っくり戻す動きがかっこいいと思う奴もいると。

——そう言われると、あれはわざと耐えてる感じがしてきた。

それがスケートのスタイルで。

——本来早く戻した方がブレずに進んでいけるし、目線が後ろにある分、進行先に何かあるかもしれない。

着地後に一番見なきゃいけない進行先のはずが…。

——ケニー・アンダーソンがいるかもしれない。

そうです。ダニー・ウェイが寝転がってるかもしれない。

——なんでダニー・ウェイが寝転がってるかもしれないの?

わかんないっす。

そしたらケニーアンダーソンだってそうじゃないですか(笑)

エッヘッへっヘッヘ、え?どういう事ですか?

——はい。そんで?

そこがディクソンの絶対的にかっこいい所なんですよ。

自分も、ドライブ系を結構やってるんですけど…(インスタグラムを見る)

※佐藤駿平Instagramより(https://www.instagram.com/p/BoJyvqxFbla/?igshid=1ch3w5xp18z6o)

2番目が一番ディクソンの動きに近いです。

でも、あいつはここからムク〜っと戻るんですよ。

普通ならやっぱりスムーズに戻っちゃうじゃないですか、捻って固定できないまま。

でもディクソンはここで残してる。

なので、好きとか言ってる割に自分はいいのが残せていないんです。

(自分の映像を見て)これじゃダメなんですよ、動きのメリハリと引っ張りが必要で。

この引っ張り!わかるっすか?一瞬ドライブの時に空間が出来るんですよ。

さっき言ってたハーフキャブノーズスライド270アウトって、スライドしたらそのまま270アウトに行くんですけど、そうじゃなくて溜めがあった方がかっこいいんです。

(しばし映像を見て)

溜めがあるのわかるっすか?

——わかんないっす。

(スライドで)ノーズを踏むじゃないっすか?ココっす!

——あ〜そういうこと!?(ちょっとわかったような気に)

かっこいいドライブはこの着地するまでの“間”がめっちゃ大事なんすよ!

落ちちゃダメなんすよ。

——細かっ!!ちょっと駿平のインスタグラムに出てる、ノーズスライド270アウト見てみようよ。

※佐藤駿平Instagramより(https://www.instagram.com/p/B4EDW1UAwID/)

——(7個ある映像を1から確認)これはちょっといいよね。

ちょっといいんですけど、上半身がブレてるんで、ダメなんすよ。

——わかってきたわ…これいいよね!?

これはいいっす。

——これめっちゃいいじゃん!

いや、これはダメっす。

——(またわからなくなってきた)これは、まぁまぁいいね!

これはダメっす。

プーンって落ちてるだけなんで。

——プーンって何?全然わかんなくなってきたわ…。

コレっす!プァーーー!!ココっすココ!今のところ!

——あ!これはいいじゃん。

これは間がダメっす。

——これは!?

これも微妙っすね、この間は微妙っす!

——これいいじゃん!

これも引っ張りがあるだけで、あんまりいい間があるとは思えないんですよ。

7番目が俺の中のベストっすね。

この間が一番大事。

——じゃあ、それ(インスタグラム)記事に張ろう!もう終わりにするよ!総まとめでシメようと思ったのに、引っ張りと間だけで30分以上話してるから。

こわっ!(笑)

時代が変わっても色褪せないもの

スケーターは基本的にこだわりの強い人種だと思っているが、嬉々として270アウトへのこだわりを語る駿平は、もはやこだわりの塊というか、彼のスケートボードへの原動力は“こだわり”なんじゃないかと思うくらいの情熱を感じた。

“人それぞれが持っているかっこよさ+かっこいいと思う部分”がスタイルだと話す駿平はきっとこの先何年も、何十年も270アウトを追求していくだろう。

それが彼のスケート人生であり“スタイル”をテーマにインタビューをすると、270アウトの話を延々するのもまた、彼のスケートスタイル。

個人的にスケーターは何に憧れるかによって、方向性が決まると思っている。

服装や滑りもそうだけど、駿平の言うように時には考え方も変わっていく。

自分は高校生の頃、友達に見せられたZEROのビデオThrill of it ALL(1997)の破天荒すぎるスケートや転びっぷりにハートを撃ち抜かれ、一気にスケートボードにハマった。

エリック・エリントンがフリップで屋根から飛び降りて板が折れ、「フ★ーック」と叫んでるシーンはめちゃくちゃかっこよかったし、アーロン・ハリソンがコンテナからのオーリーバンクインを14回連続で失敗するシーンでは、そもそもフラット面に降りればいいのに、あえて小さなバンクに飛び降りるという、スケーターの考え方にしびれた。

他にも、フレンドパートではNaked Raygunが歌うSuspect Deviceの「suss, suss, suss, suss, suss out」の叫びと共に、植え込みに落ちるシーンで爆笑して何度も見返した。

そして最後に、ジェイミー・トーマスがどえらい高さからバックサイドグラブで飛び降りて、板が折れるシーンで魂が揺さぶられ、「ダメだわ」みたいな軽い感じで首を振って画面から歩き去るシーンで完全に惚れた。

そう考えると自分は、どんなに難しいスポットでも己と戦い、時には派手に転ぶスケーターにかっこよさを感じ、魅せられたのだろう。

なにせスケートボードをよく知らない時に、初めて見て感動したのがThrill of it ALLだったので、“かっこよく転ぶ事は、メイクした事と同等くらいの価値がある”ように思っていた。

いまだに機械のようなクリーンメイクよりも、泥臭く何かいろんな物とギリギリすれすれなメイク映像に感動し、興奮するのはこのスケート原体験のせいかもしれない。

当時はよくスケートボードを知らない友達に、その楽しさを知ってほしくてZEROのThrill of it ALLのビデオを見せていたが、そのほとんどが「アブな!」で終わった。

その時、「ほとんどの人はスケートボードを好きになるわけじゃない」と気づいて戸惑ったものだった。

結局スケートボードにハマる事自体が奇跡だし、どこに面白みを感じ、どこに憧れるかも十人十色で、さらに今はネット時代の到来と共に、スケートボードにもいろんな価値観が生まれてきている(ストリートスケートに対する考え方など)わけだが、その中でも駿平の言っていた“人それぞれが持っているかっこよさ+かっこいいと思う部分がスタイルに繋がっていく”この部分は、スケートボードが好きになる根幹の部分だと思っているし、どんなに時代が変わっていっても色褪せないで残り続けていく部分であり、そうあってほしいと切に思った。

そんなインタビューでした。

 

【佐藤"ぺそ"駿平】

神奈川県出身。現在は埼玉に引越し、所沢にあるスケートパークSKIP FACTORYでスタッフとして働いている。

Instagram  @pesosato

【スポンサー】

TUFLEG(WHEEL)・MO3store・B.D.W

【大会戦績】

2010年 AJSA中部アマチュアサーキット第3戦 豊橋総合スポーツ公園 3位

2011年 AJSA関東アマチュアサーキット第1戦 X-DOME海老名 7位

2011年 AJSA関東アマチュアサーキット第3戦 鵠沼海浜公園 10位

2011年 AJSA全日本アマチュアスケートボード選手権 B7 4位

2012年 AJSAプロ昇格

2012年 AJSAプロツアー第2戦 ワンメイクスタイル@横浜 8位

【出演作品】

黒夢/アロン MV

MOTHBALL/what the hell  MV

【映像】

(DVD)

TUFLEG'TRACE OF WHEEL'フレンドパート

 

(YouTube)

TUFLEG'shunpei sato welcome'[https://youtu.be/sYxPMcykitw]

IFO skateboard 'IFO new 3AMAS part[https://youtu.be/Y6XiITKtawA]

IFOskateboard 'SECOND COSMIC VELOCITY'[https://youtu.be/n3BJI7UCTH4]

'24 time to skate'[https://youtu.be/9bHyqPf0fic]

'shunpei"peso"sato[https://youtu.be/l6yPmG75l6Y]

'shunpei sato X-DOME part'[https://youtu.be/EoPMGbK5W50]

[SPOTLIGHT]佐藤駿平がこだわり抜く理想のスケートスタイルとは[https://youtu.be/QPxrR2Tw7qk]

 

【写真・文 小嶋 勝美】

スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。

約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。

 

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放送作家 小嶋勝美
この記事を書いた人

放送作家 小嶋勝美

お笑い芸人として活動後、放送作家に転身。 スポーツ番組やバラエティ番組などに携わる傍ら、20年以上続けている大好きなスケートボードのライターとしても活動。 コンテスト記事の他、スケボーの情報や面白い発見を伝えていくと共に、スケートボードが持つ素晴らしさを多くの人に広めていきたいと思っています

放送作家 小嶋勝美が書いた記事

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