野球の守備位置で難しく頭脳も要するといわれるのがキャッチャーとセカンド。中でも野球漫画の大家・水島新司先生曰く「一番セカンドが難しい」と、対談や作中で語っています。近年でいえば広島の菊池涼介選手が2017年のWBCで見せた守備の美技は「ニンジャ」「マジシャン」と称賛を受けました。
はたと思い出すと、かつて守備の上手い選手はショートと相場は決まっていましたが、どうしてセカンドが難しいとなったのでしょうか?今回はそのあたりを紐解きつつ、セカンドの魅力と美しさ、難しいと言われる理由について迫りたいと思います。
セカンドは何故難しいのか?
古くからピッチャー、キャッチャー、セカンド、ショート、センターのセンターラインが重要視されてきました。中でも、セカンドになぜ守備巧者を置くようになったのでしょうか……。
・送球姿勢や動作が難しい
横のフィールディングが重要な二遊間。ポジショニングのセンスやボールに追いつく俊敏性は二遊ともに重要です。そもそもファーストに送球することが多い野球において、セカンドの位置関係的に送球姿勢が窮屈になってしまうケースがあるので難しいとされています。
例えばダブルプレーを例にとると、4-6-3であっても6-4-3であってもセカンドが送球する際の姿勢や動作は体を反転させる場合が多いので、体幹がしっかりしていないと捕球・送球のミスにつながします。
・些細なミスが進塁を許す
ランナーが一塁にいた場合、セカンドが打球や送球を逸すようなミスをしようものなら、ランナーは一気に三塁まで進んでしまいピンチを広げます。一方、ショートがミスした場合、三塁までの進塁はセカンドのそれと比較した場合、可能性は低いものになります。ランナーをセカンドに置いた場合は失点にもつながります。このためセカンドの守備力はどのポジションより高いものを求められます。
・常にバックアップに走る
自分の所にボールが飛んでこなければ常に一塁や二塁にベースカバーに回らなければいけないセカンド。つまり常時動いていなければならないし、カバーできる脚力も必要とされるためスタミナも必要とされています。
また、ランナーを置いて外野右方向にボールが飛んだ場合、カットプレーのため中継に立つ役割もあります。この場合、ボールの飛んだ位置、外野手の肩と自分の肩、ランナーの足の速さなどを瞬時に計算したうえで、カットマンとして位置取りしなければいけません。そのアイディアを展開できる頭脳も求められます。
刹那のプレー……セカンドの美しいフィールディング
ここでは、セカンドの名手と謳われた選手を紹介します。
・西武:辻発彦選手
当時、プレーを共にした選手が名セカンドと称えたのが辻選手。92年、ヤクルトとの日本シリーズ7回戦。満塁のピンチでやや一塁寄りの緩い打球をランニングしながらキャッチした辻選手。その勢いのまま体を回転させつつバックホームへ送球。キャッチャーが飛びつくような高いボールでしたがアウトでピンチを脱しました。
予めサードランナーの足を考慮し、打球の勢い、ファーストランナーとの交錯を瞬時に判断しバックホームするというビッグプレーでした。
・中日:荒木雅博選手
ショートの井端選手とのアライバコンビの一角。広い守備範囲でセンターに抜けようかという打球をキャッチ。そのままグラブトスで井端選手にボールを放り井端選手が一塁へ送球アウト。この一連の動作は流れるように行われ、まさに野球美。
・常葉菊川:町田友潤選手
2008年、夏の甲子園で見せたその美技は今も語り草です。準々決勝・智辯和歌山戦、1塁にランナーを置き、右に強い当たりを下がって好捕。ひざをついたまま反転し二塁に送球しダブルプレー。また準決・浦添商戦では満塁でセンターに抜けようという打球を飛びついてキャッチ。倒れこんだまま二塁ベースにタッチしダブルプレー。ピンチを救いました。
実況アナは彼のプレーを見て「セカンドに打ってしまえば望みはありません」と感嘆したほど。甲子園史上最高のセカンドと謳われています。
打てるショートは数いれど、セカンドといえば守備力に特化した職人のイメージがあります。しかし近年ではトリプルスリーのヤクルト・山田哲人選手、チャンスに強い西武・浅村栄斗選手らいるように攻守優れた選手も多くいます。地味に見えるポジションですが華のあるプレーヤーも増えているので今後もセカンドに注目です。