【野球美】ただの乱打戦にあらず。大味な闘い『馬鹿試合』

2018/07/17
南城与右衛門

「野球は点の取り合いをしながら8対7で決まるのが楽しい」と言ったのは米国のルーズヴェルト大統領。後にそのような点の取り合いをルーズヴェルトゲームと呼ぶようになりますが、確かにある程度の乱打戦は楽しいかもしれません。

しかしルーズヴェルトゲームなんて華麗な名称で置き換えられない大量得点ゲームのことを日本では『馬鹿試合』と呼びます。今回はそんな魅力的な『馬鹿試合』について紹介します。

馬鹿試合の定義

サッカーなどにも使われる言葉ですが今回は野球について説明します。ネットスラングが発祥と言われていて、両チームが5点以上を取った試合とだいたいの定義付けはされています。

弱いチーム同士やたまたま両チームの先発ローテーションが谷間の時に起こる現象で年に何度もあり、語源はそのまま「バカみたいに得点をとる」からきているようです。

実際の馬鹿試合

2003年7月27日 ダイエーvs.オリックス(26-7)

初回にダイエーが10連続安打を放ちいきなり11点をあげると、その後も得点を重ね、終わってみれば26点。一方のオリックスも7点をあげる乱打戦。結局ダイエーは32安打を放つなど、この試合でうまれたプロ野球記録はなんと13コという大味なものとなりました。

こんな試合は滅多に観られない……、と思いきや5日後の8月1日、同じカードでダイエーが29得点をあげオリックスを再びフルボッコにしました。

さらに13年後……2016年5月24日、同一カードで22-6というスコアを叩き出したソフトバンクが圧勝。オリックスにとって悪夢の再来となりました。

2017年7月25日 ヤクルトvs.中日(9-8)

両軍の得点だけ見ると馬鹿試合としては凡戦のようなスコアですが、内容がなかなか噛み応えのあるゲーム。9イニング両軍がまんべんなく得点しますが、ヤクルトが16安打11四球2エラー、中日が9安打3四死球球3エラー、両軍合わせて11人の投手をつぎ込む観戦するものの心をくじくがっかりゲーム。

それを決定づけたのが同点で迎えた9回裏ヤクルトの攻撃。満塁で打席は山田哲人選手。一打サヨナラの場面で、なんと押し出しでゲームセット。この日、山田選手は無安打でしたがお立ち台に立ちました。

2017年5月6日 阪神vs.広島(12-9)

とはいえ、とても見応えのある馬鹿試合もあり、このゲームはそのひとつ。阪神が2位、広島が1位という首位攻防でしたが、6回表までに9-1と広島が大量リードで迎えた裏の阪神の攻撃。広島のピッチャーが突如崩れ阪神は打者11人の猛攻で7得点をあげ1点差に。

さらに7回裏にはホームのクロスプレーでセーフとなり同点か? と思われましたが15分の中断、リプレー検証により判定が覆りアウトに。落胆する阪神でしたが、その後にタイムリーがうまれついに逆転。終わってみれば12―9で阪神が逆転勝ち。一時あった9点差をひっくり返し勝利したのは球団初の事でした。

馬鹿試合の中の風呂試合

風呂試合とは馬鹿試合の一種で、試合終盤、点差も付いているため視聴者が「もう勝負がついただろ」と確信しお風呂に入るなど一旦目を離した隙に逆転している試合のこと。この項では典型的な風呂試合を取り上げます。

2004年9月20日 日ハムvsダイエー (13ー12)

点を取られたら取り返すという一進一退、緊張感のある攻防を見せていたこのゲーム。馬鹿試合とはいえ9回表の終了時点で9-12でダイエーがリードしていたため、ダイエーファンはおそらく決着がついたものと思っていたはず。

ところが裏の日ハムの攻撃。打線が爆発し同点、さらに2アウト満塁で打順はSHINJO選手。ここでなんと満塁ホームランで大逆転。……ところが打者走者のSHINJO選手が歓喜のあまり1塁走者と抱擁。これが走者追い越しと判断されホームラン取り消し、記録は単打に。サヨナラ勝ちはしたものの、珍しいハプニングで幕を降ろしました。

さらにこの試合にはおまけがあり、ヒーローインタビューでSHINJO選手は「明日も勝ちます!」と宣言。これに阪神ファンが戦慄しました。

というのもSHINJO選手が阪神に所属していた時、インタビューで「勝ちます」宣言したところ翌日から12連敗。当回、日ハムは翌日勝利するものの、関係ない阪神は2連敗してしまいました。

1シーズンセ・パ合わせて何百試合もあるプロ野球。熱戦や感動を覚えるゲームがある一方、流れ的に凡戦ぽいな……という試合もあります。しかし、これを馬鹿試合、風呂試合とくくって改めて見てみると、違った味わいが出て面白く観戦できるのではないでしょうか。

 

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この記事を書いた人

南城与右衛門

"情報番組や誰も知らない深夜番組、ラジオなどを構成したり、ソーシャルゲームのシナリオを書いたりする、いわゆる駄放送作家。友達はPC、恋人は二次元、恩師はあらゆる漫画、といった充実した人生継続中"

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