ホラーではありません!絶対泣けます!『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』

2019/02/28
桂伸也

少子高齢化が叫ばれる近年、親の介護を心配するというケースが増えつつもある今日この頃ですが、皆さんは親に対して、どのような印象があるでしょう?幼いころには本当に頼りにしていた存在が、ある日なんだかうざったい存在になりつつ、ついその存在を忘れてしまう。そして…やがて、突然訪れる永遠のお別れの時。

人生というものは、本当に残酷なものであります。その時になって、最も自分を大切にしてくれた人が、今この世から去ろうとしている人だと、初めてその時に気づく。ええ、そうですよ、私にももちろんそんな時がありました。今回紹介する映画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は、そんなことを考える、そのきっかけを与えてくれる素敵な映画です。

■刺激的なタイトルから想像できない、感動のストーリー

「遺骨を食べたい」なんて、ちょっと物騒なタイトルだなと思った人がいるかもしれません。そういえば『君の膵臓を食べたい(キミスイ)』なんてストーリーが登場した時も、同じようなことを考えた人がいたかもしれませんね。でもまさしく、この作品は『キミスイ』に負けず劣らずに泣ける、感動的なストーリーなんです!

作品は、漫画家の宮川サトシさんがwebサイトにて連載した自伝エッセイ漫画が原作。自身が実際に体験した母との最後の日々から葬儀、そしてその後の生活の日々を母親への溢れる愛情をちりばめて描いた作品で、SNSなどで大きな話題となったストーリー。

頼りないけど優しくユーモラスに生きてきた一人の中年男性が、ある時同居している母親の死亡宣告を受け、別れの時、葬儀を迎え、そしてその後の生活の中で一つの事実を知ることで、母の大きな愛を知る。そんなハートフルなエピソードを、彼を取り巻くさまざまな人との触れ合いとともに描きます。

■普遍的なテーマの中で描かれる、深い愛情

宮川先生が描かれた原作漫画は、何かとてもシンプルでほのぼのした雰囲気を醸し出す絵で構成されていますが、その一方で度々に取り上げられるエピソードやテーマは、ある意味非常に重く衝撃的なもの。コミカルでアットホームな空気感だからこそ、そのテーマは余計に、読む人にダイレクトに伝わってくるのかもしれません。

またこの原作は、ロックバンドSEKAI NO OWARIのボーカリストであるFukaseさんが絶賛するなど、SNSなどでも大きな話題を呼びました。

人の死という、ある意味普遍的なテーマを扱った作品ではありますが、その中に描かれる親子の愛情の深さが、尋常ではありません。また時にユーモラスに、滑稽に見えるそれぞれの登場人物の挙動さえも、すべてがその愛情の深さを示すための序章であるようにも見え、非常にストーリーとしても奥行きの深さを感じさせます。

■実力派の役者が集結、さらに主題歌は必ず泣ける、あのアーティストが。

そして映画では、主人公・サトシ役を、怪役からストレートな役柄まで個性豊かなキャラクターで演じきる、今ホットな俳優の一人である安田顕さんが演じます。一方、その息子に溢れんばかりの愛情を注ぐ母・明子役を、ベテラン女優の倍賞美津子さんが担当。近年では、昨年放送されたテレビドラマ「下町ロケット」に出演したお二人ですが、今回は親子としてお互いを思う、涙、そして涙の演技を、笑いと共に披露します。

さらにサトシに深い理解を示しながら、叱咤激励する恋人・真里役を松下奈緒さん、サトシの兄・祐一役を村上淳さん、父・利明役を石橋蓮司さんと、表現力豊かな実力派俳優が集結、ドラマをさらに盛り上げます。

またこの映画の音楽を担当したのは、NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽を手掛けた大友良英さん。さらに主題歌には、その大友さんとBEGINによるタッグでの楽曲『君の歌はワルツ』を採用。かつて『イカ天』でチャンピオンに輝き、大ヒットシングル『恋しくて』は、今でも折に触れて口ずさむ人も多いことでしょう。

そのBEGINならではのカラーに彩られた『君の歌はワルツ』は、松下さん、安田さんもレコーディングに参加、収録されたもの。何かほのぼのした雰囲気の中で、映画を見た人、この曲を聴いた人を温かい気持ちにしてくれると同時に、前向きな気持ちにしてます。

 

衝撃!衝撃!の連続!みたいな派手さはない映画ですが、きっと映画を見た後には、周りの空気が少し澄んで見え、忘れていたことをハッと思い出させてくれることでしょう。「最近、何か忘れていることがあるな」と感じられている人に、是非お勧めしたい一本です。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

2 月 22 日(金)全国順次ロードショー

©宮川サトシ/新潮社 ©2019「母を亡くした時、僕は遺 骨を食べたいと思った。」製作委員会

配給:アスミック・エース 

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桂伸也
この記事を書いた人

桂伸也

フリーライター。元々音楽系からのスタートですが、現在は広く浅くという感じではありますが芸能全般、幅広く執筆を行っています。またエンタメ、芸能に限らずスポーツ、アミューズメント系と…何が得意なのかが不明な感じ。逆に困ったときに声を掛ければ、何らか答えが戻ってくるというか…ある意味“変な奴”(笑)

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