昔話は昨今、いじめや暴力的表現に配慮して、非常にマイルドになっていることは、ご存じのとおり。しかし、「ももたろう」絵本に関しては、ある意味すごいことになっていることをここにご報告申し上げたいと思います。
まずは…
みなさんは桃太郎と言えば桃から生まれてきたものと思われているのではないでしょうか…。ところが!!そもそも桃から生まれない桃太郎の話があるのをご存じだろうか…
流れてきた桃をおじいさんとおばあさんが食したところ、二人は若返り、子作りして、桃太郎が生まれるという…まさかのR指定なストーリーがかつては存在していたのです。江戸時代には、この回春話と桃から生まれる話が両方存在し、回春話の方が主流だったらしい。
ちなみに、江戸時代の絵本のお話をさせて頂くと…江戸時代中頃から出版された絵入りの本のことを「草双紙」といいます。この「草双紙」の中には「赤本」「黒本」「青本」「黄表紙」と呼ばれるものがあり、赤本(表紙が赤いことから赤本と呼ばれる)は、初めから子供を対象に出版された絵本と言われています。
赤本の題材は、ほとんど昔話でしたが、なかでも人気が高かったのが、「桃太郎」なのです。
ここで、注目して頂きたのが、この桃太郎のポーズであります。見栄を切っているように見えませんか。実は当時(江戸時代)、歌舞伎も人気娯楽ということもあり、絵本と歌舞伎の関係は深く、赤本に登場する主人公たちは、歌舞伎役者のように見栄を切っているものが多いとのこと。
古い話はこれくらいにして、現代の絵本のお話に戻ります。今でも、桃太郎の絵本は何種類も存在します。しかも、それぞれストーリーも違っております。桃が川を流れてくる時の音すら違っていたりします…。
是非、読み比べてみて頂きたい。
そんななか、今回は私がぜひ、みなさんに読んで頂きたい「桃太郎」絵本を2冊ご紹介させて頂きます。
ますは、こちらの「ももたろう」。
作: 松谷 みよ子 絵: 和歌山 静子 (童心社)
まず、桃は「ドンブリコンブリ」と川を流れてきます。まあ、回春版のももたろうのお話の後では、それくらい…と思われるかもしれません。しかし、その後も「え、何それ?」的な話が続々登場。(こちらは読んでからのお楽しみ…)
そして、この絵本の最大の山場は…な、な、なんと!
ももたろうの助っ人といえば、犬、猿、キジ。誰もが信じて疑わないところ。ところが、ももたろうがピンチに陥った時、この絵本では、さらに助っ人が登場してしまうのであります。
その助っ人とは…うさぎや、うすや、うしのくそ、・・・。
そう、猿蟹合戦のメンバーとかちかち山のうさぎが参戦!!日本昔話のヒーローたちが助っ人として登場するのであります。 ヒーローたちが力を合わせて、悪を退治!まさに、アベンジャーズ状態なのです!私は、この絵本を「アベンジャーズ版ももたろう」、こう名付けたい!(あくまで個人的な意見です)。
そして、もう一冊!
作・絵: 五味 太郎 (絵本館)
こちらは、絵本界の巨匠中の巨匠!五味太郎先生の作品。作品数は、なんと400作越え!世界中で数多くの絵本が出版されています。
その作風は他に類をみることはなく、自由な発想、斬新な切り口はいうまでΩありませんが、この「ももたろう」絵本に関しては、いささか、やりすぎ…五味ワールド全開なのであります。まず、タイトルが、「だれでも知っているあの有名な ももたろう」! すでに、「ももたろう」ではなくなっちゃてます…
気になる中身ですが…
簡単に説明すると、皆さんがよく知っている「ももたろう」のお話の裏には、こんな隠された真実がたくさんあったのです!! というお話。たとえば…、
「おじいさんあばあさんにとてもたいせつにかわいがられて、すくすく大きくなったということは有名です。みんな知っています」「でもじつは、ももたろうがすくすく育つのをお手伝いした人は、ほかにもたくさんいました。近くのおねえさんやお医者さん、先生やおまわりさん、お店のおばさんや工事のおじさん、それに子供たち、など、ほんとうにたくさんいました。」という風に展開していきます。