株式会社エアウィーヴは、今年度より、本格的にリサイクルへの取組を実施する。その第1弾として、これまで販売・提供していた寝具を回収し、再度製品化する「マテリアルリサイクル」を開始した。発表会では株式会社エアウィーヴ 代表取締役会長兼社長 高岡本州が登壇。寝具のゴミ問題などと共にリサイクル事業について説明した。
深刻化する社会問題の1つとしてゴミ問題があげられる。家電などに比べて、寝具は規制がなく構造も複雑なため、リサイクル率は2%以下と低く、寝具のゴミ問題の課題が大きかったと高岡氏は言う。 スプリングマットレスなどの寝具をリサイクルする場合、分解するためコストと時間もかかる。
更には寝具に関してはリサイクルする方法がなかったので当然のようにごみとして扱われ、今まで大きな社会問題にもならなかった。 そこでエアウィーヴは寝具のリサイクル化を本格的に取り組み、寝具から寝具へ生まれ変わる「水平リサイクル」の実現を可能にした。先ずは環境意識も高く、サステナブルな未来の実現を目指している日本航空株式会社の希望のもと、国際線機内のビジネスクラスの寝具をリサイクル可能なものに順次交換することに決まった。
エアウィーヴの寝具は、2013年からJAL国際線ビジネスクラスに、2014年からファーストクラスに採用されている。そして今回、順次交換が決まったのはビジネスクラスのマットレスパッド8,200枚だ。これまで導入していたビジネスクラスのマットレスパッドを回収→洗浄→溶解→再製品化し、マテリアルリサイクルを実施する。
カバーは古布として回収し、繊維リサイクルとして再度使用する。更にマットレスパッドの厚さは2cmから2.5cmとなり、より快適な寝心地を実現。腰を硬めにすることで、理想的な寝姿勢とされる背骨のS字カーブをキープし、腰の負担を軽減。リサイクル後は前のものよりもバージョンアップしたタイプが提供されることになる。
日本航空株式会社 執行役員 カスタマー・エクスペリエンス本部長、ブランドコミュニケ―ション担当 鈴木啓介氏も登場。 フルフラットシート「SKY SUITE」は、長距離国際線をより快適に過ごせるように競合他社にはないサービスとしてスタート。この時にエアウィーヴマットレスパッドを導入したのが始まり。「座面と背面の継ぎ目の違和感が解消された」「蒸れなくて快適」などお客様から高い評価を得ている。軽量性もあり、機体の燃費にもいい、使い勝手のいいマットレスだと鈴木氏は語る。
今回のエアウィーヴとJAL国際線の取り組みの経緯は、導入から9年が経過し、更新の計画含めお客様の快適性や使用済み製品の扱いについて株式会社エアウィーヴに日本航空株式会社が相談。株式会社エアウィーヴが製品リサイクルの仕組みを構築したということで、サスティナブルなエアウィーヴ社製品で持続可能なサービスを提供できることから日本航空株式会社による更新の快諾となった。
トークセッションでは高岡氏と鈴木氏、二人の対談形式となった。 フルフラットシートが出る前の飛行機での長距離移動では高岡氏や元日本フィギュアスケート選手の浅田真央さんもポータブルのマットレスを自分で持参して、敷いて快適な空間をつくっていた。
そのような中、フルフラットシートが出る時に高岡氏が日本航空株式会社と話す機会があり、マットレスパッドの導入に至った。続くファーストクラスのシート導入ではお客様の状況に合わせた硬さを選べる商品を採用するなど、日本航空株式会社との取り組みは現在の商品開発のベースになっている。
今回のビジネスクラスに導入するマットレスパッドはリサイクルできるだけでなく、ファーストクラスに近い性能に仕上がっている自信作でもあると高岡氏は話す。 環境問題について聞かれると、鈴木氏は「飛行機を飛ばすためにはどうしてもCO2を出さなければいけない。この問題に弊社は正面から取り組む責務がある。また、昨今、社会環境・お客様の考え方が変わってきていて、サステナビリティに対して意識の高まりを実感している。例えば、お客様がサステナブルな観点で商品サービスや航空会社を選んでいくのが当たり前の時代になってきている。弊社もあらゆる部分で環境や社会に貢献できるスタンスで還元していく、これが事業にも直結していくとポイントだと思う」と語った。
「令和2年度、東京23区で一番多く出された粗大ごみは寝具となっている。寝具は分解が難しいので分解できないような寝具を作っているのが問題の一つ。
そしてリサイクルをしようと思うと使用者側が協力しないと始まらない。粗大ゴミを容認している社会全体を変え、多少コストがかかってもリサイクルできる商品を選ぶなど消費者側の気持ちも変えていかないと考えている。
今後は一般向けの方にもリサイクルできる寝具を導入していくことも検討している」と高岡氏は語った。 JAL国際線への「マテリアルリサイクル」の導入は捨てられるしか方法がなかった寝具の粗大ごみ問題へのファーストステップとなることだろう。