千葉県市川市。いまこの地域の一部で、あるニュースが盛り上がっています。
それは『白鳥の赤ちゃん』。
街では常に誰かが興奮気味に白鳥一家の話をしている。「きょうは赤ちゃん、見た?」「この公園で白鳥のヒナがかえったのは初めて!」住民のスマホ、デジカメにはこの白鳥一家の写真が必ず入っているといっても過言ではないほど、すごいフィーバーぶりです。
市川市役所.facebookより
ということで、野鳥が集まる【こざと公園】まで撮影しに行ってきました。
「白鳥一家はいつも家族全員で行動しているから、行けばすぐにわかる!」ということでしたが……いました!本当にすぐ見つかった。くすんだ池にまっしろな鳥の姿。超目立ってます。
お父さん白鳥とお母さん白鳥、そして子どもが4匹の6匹家族です。白鳥一家の近くの柵には、すでに人だかりができている。さすがスター家族。人の群れを探せば、どこに白鳥たちがいるのかすぐにわかります。
「かわいいねぇ。かわいいねぇーー!」
白鳥の赤ちゃんがちょこちょこ泳ぎ回るたびに、黄色い声援があがります。親子連れ、老人ホームの団体、犬の散歩をしている女性、まさに老若男女が次々に集まってくる。
そうこうしているうちに、白鳥一家は池のど真ん中を横切り、移動をはじめました。遊泳の時間です。この家族6匹が一列に並ぶ移動は、いまやこの公園の名物となっているといいます。
親鳥が子ども4匹をはさんでスイスイ泳いでいく。がんばって撮影しましたが…けっこうなスピードです。
毎日通っているという女性によると、この白鳥のつがいが【こざと池】に住み着いたのは去年。卵からヒナがかえったのは今年の4月23日だそうです。生まれたばかりの頃は、毛の色がグレーっぽかったそうですが、今ではかなり白く、すっかり白鳥らしい色に変わっています。その姿はまさに「ミニ白鳥」といったところ。
小さな足で一生懸命に水を掻き、くちばしを水面に入れてエサを探す仕草をします。白鳥は水草や水生昆虫、魚などを食べるそうですが、この食事の仕方も「お母さん白鳥のマネをして覚えた」といいます。
4匹の子どもたちが先を泳ぎ、親鳥たちが後ろから見守りながら泳ぐ。ヒナたちはもう、お父さんお母さんよりも前を泳ぎたくなっちゃう年頃なんでしょうか。
「だいぶ大きくなったなぁ。一日一日で驚くほど大きくなる」頻繁に観察にきているという男性も、ヒナの成長に目を細めていました。生後2~3週間のこの時期は、ヒナたちにとって一日一日が貴重なんですね。
この白鳥の種類は【コブハクチョウ】。オレンジ色のクチバシと、クチバシの上にコブのような突起がある顔が特徴です。ヨーロッパや中央アジアを中心に繁殖し、冬は南へ渡っていくこともある渡り鳥です。
そういえば、見物客の中には「子どもたちが大きくなったら、またどこかへ飛んでいっちゃうんじゃないかな」と早くも将来を心配する声も聞かれました。
白鳥の中でも優雅な姿が好まれ、デンマークの国鳥でもあります。日本では動物園でも飼育されていますが外来種です。コブハクチョウの一家がここで暮らすことで、「こざと池」のもともとの生態系に影響を与える可能性が指摘されています。
地元では待望の赤ちゃん誕生に盛り上がっていますが、積極的に保護をするというわけにはいかないようですね。
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これらの写真は5月13日に撮影しましたが、後日、公園を訪れると、3匹のヒナは亡くなっていました。5月14日の昼頃だったといいます。市に問い合わせると「詳しい死因はわからないが、病気ではなかったようだ」ということです。
それまでは元気に泳いでいたように見えたことから、地元の方々も突然の悲報に言葉を失っています。この日、親鳥2匹と残された1匹のヒナが遊泳する姿を、住民は静かに見守っていました。これから白鳥一家はどうなっていくのでしょうか。