【東京 今さら聞けない大人の町のお約束】 ~平成から令和へ!昭和を感じる町・上野(駅前通り商店街編)~

2019/05/01
遠藤昇輝

平成から令和へ時代が変わる節目にあえて昭和を感じる町・上野へ繰り出し、東京を代表する寄席のひとつ「鈴本演芸場」で昭和の笑いを堪能した前回の(寄席編)に続くのは、昭和感満載の(駅前通り商店街編)です。

春風亭一之輔さんが熱演した「意地汚い酒飲み」の演目を見た後だったので、どうしても日本酒が飲みたくなっていた筆者。“物はついで”ということで、今宵の酒場は鈴本演芸場おすすめの「夜行列車」に決定。

それにしても「上野の町」と「夜行列車」とは…なんという昭和感…これほど今回のテーマにふさわしい店名があるでしょうか!?あれこれ想像しながら「夜行列車」のある駅前通り商店街へ向かいます。

アメ横のガード下を抜けると、ありました。筆文字が郷愁を誘う店構え。鈴本演芸場によると、「夜行列車」は、上野に数ある呑み屋さんの中で、こと日本酒に関してはここが一番というお店。同店で扱う日本酒はすべて純米酒で、各地の蔵元と直接取引なんだとか。

暖簾をくぐり、カウンター席の一番端に落ち着くと、目の前には樽酒が…。

銘柄をよく見ると【出羽桜純米吟醸の「軽ろ水」(かろみ)】とあります。実は、このお酒、鈴本演芸場の席亭イチオシの銘酒で、都内ではこの店でしか味わうことが出来ないレアものだそうで、さっそく注文。

桝に入ったグラスにはなみなみと注がれ、【出羽桜純米吟醸の「軽ろ水」】が登場。さっき見た落語の主人公の如く、舐めるようにまずはひと口…う、うぅ…美味い。(さすがは鈴本演芸場の席亭おすすめの酒)

出羽桜酒造といえば東北山形県の老舗酒蔵。雪景色と白い息を吐きながら酒造りに精を出す杜氏さんたちの姿を想像しながら、「夜行列車」で一献やれば、♪石川さゆりの歌声が聞こえてきそうです。

お酒のアテは口コミで高評価が目立つ「カニオムレツ」。ぷるぷるの卵がクリーミーでホッコリします。そして…次なる酒は、福井県が誇る【花垣】。

やさしい味わいが素晴らしいこの酒は香りもグッド。よほど美味しい水を使っているに違いない。と思っていたら、お品書きに「花垣の仕込み水」があったのですかさずオーダー。

日本名水百選のひとつで、ボトルのラベルには「霊峰白山の支脈に囲まれた大野盆地に湧き出る御清水」とあります。飲んでみると、とても美味しいお水でした。

山手線の線路脇にある「夜行列車」は酒も雰囲気も最高の酒場。昭和の演歌が似合う店を出ると、すぐ目の前に中古レコード店を発見。

表のワゴンに並ぶシングルレコードは「早見優、石野真子、桜田淳子、八神純子、麻丘めぐみ、天地真理、由紀さおり、越路吹雪…等々。昭和のアイドルから歌姫がズラリ。

店内に入ると、グループサウンズのシングル盤も豊富にラインナップ。ザ・タイガースの「僕のマリー」は3000円、シャープホークスの「海へかえろう」は4500円というお値段でした。どれか1枚買って帰ろうと思いましたが、このままでは衝動買いして後悔しそうだったので、いったん店を出ることに。

すると、今度は斜め前方に“味わい深い看板”が待っていました。

「Coffee shop ギャラン」

ビルの2階にあるレンガ造りのその店は昭和の雰囲気がにじみ出る純喫茶。迷わず入店します。窓側の席に座るとガラスの向こうは山手線の線路。しかも、BGMの昭和歌謡が次から次に流れる店内は時間が止まったかのうよう。

ギャランが開店したのは歌謡曲が日本中に流れていた昭和52年(1977年)。ピンクレディーがヒット曲を連発し、キャンディーズが解散を宣言。演歌界では石川さゆりが「♪上野発の“夜行列車”降りた時から~」と歌ったのがちょうどこの年でした。

先ほど中古レコード店で目にした往年のヒット曲がこんなにすぐ聴けるとは感激です。今日はレコードを買うより、鼻歌を楽しむことにしました。

店を出ると、通りにはいくつも石碑が並んでいます。

「東北・上越新幹線開通記念」「石川啄木(ふるさとの訛りなつかし停車場の…)」

この通りには、上野という町が“北の玄関口”と呼ばれた昭和の時代が色濃く残っていました。

ちょうど駅の方から歩いてきた方を眺めると、石川啄木の歌碑、純喫茶ギャラン、中古レコード店、純米酒場夜行列車が軒を連ねる上野駅前通り商店街。そこは東京遺産として保存してほしいと思える昭和を感じるストリートでした。

 

純米酒BAR「夜行列車」

住所:台東区上野6-13-4

電話:03-3832-5409

営業時間:11:00~23:30

定休:毎週火曜日

 

Coffee Shop ギャラン

住所;東京都台東区上野6-14-4

電話:03-3836-2756

営業:8:00~23:00(年中無休)

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遠藤昇輝
この記事を書いた人

遠藤昇輝

1968年東京生まれ 放送作家として「町歩き番組」のネタを探すため、東京の町を徘徊するが足が向くのは…寄席や美術館など番組とは無縁の世界。趣味が高じて一般社団法人東京遺産協会を設立。 町歩きプランナーとして自治体の魅力発信事業等にも参加。

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