昨年の12月は厚⽣労働省が発表したデータによると、インフルエンザの感染者数が全国平均で「警報レベル」を超えており、例年より患者数が⼤幅に増加していることが分かりました。そのことを受け、現在人々の間では免疫力を高めることへの意識が高まっています。
感染を防ぐための免疫力を高めるのに重要なのが「ビタミンD」の摂取。そこで今回は、⼤阪公⽴⼤学⼤学院⽣活科学研究科教授でビタミンに関する研究を⾏っている桒原晶⼦先⽣にビタミンDと免疫の関係性や、効率の良い摂取⽅法などを伺っています。
冬に感染症が流⾏する原因とは
例年よりも速いペースで患者数が増加しているインフルエンザ。また、昨年に感染症法の位置付けが5類へ移⾏した新型コロナウイルスも冬の流⾏期に⼊ったとみられ、患者報告数が昨年 11 ⽉から上昇を続けています。ここでは、冬に感染症が流⾏する3つの理由を桒原先⽣に紹介して頂きました。
1.空気の乾燥
ウイルスにとって空気が乾燥する冬は最適な環境。その理由は、空気が乾燥するとウイルスの⽔分が蒸発して⽐重が軽くなり、空気中を⻑時間浮遊できるようになるため。浮遊中に呼吸などを通じて⿐や⼝の粘膜から侵⼊することで「⾶沫感染」を起こすのです。
2.気温の低下
ウイルスや細菌は低温、低湿度を好むため、冬は夏よりも⻑く⽣存します。加えて、体温が下がるとウイルスや細菌へ対抗する免疫⼒が低下します。さらに夏に⽐べ⽔分摂取量も減るため、喉や気管⽀の粘膜が乾燥することで、ウイルスに感染しやすい状態となります。
3.⽇照時間の縮⼩による免疫⼒の低下
ビタミンD は⾷事からの摂取だけでなく、⽪膚に紫外線を浴びることで⽣成されるため、⽇照時間が短く、紫外線量も少ない冬は、ビタミンD の⽣成がされにくくなります。これが冬にインフルエンザになりやすい原因の⼀つとも考えられています。
桒原先⽣によると、ビタミンD は殺菌作⽤を発揮する抗菌ペプチドを作る働きを促し、体内に侵⼊したウイルスや細菌などに対して必要な免疫機能を促進するため、⾵邪やインフルエンザ、気管⽀炎や肺炎などの感染症の発症、悪化の予防にも関与するといわれているそう。
また COVID-19 で重症化を起こすサイトカインストームを減衰させる働きもあるといわれている栄養素だそうです。
現代⼈のビタミンD摂取量
1 ⽇あたりのビタミンD の摂取⽬安量は成⼈の場合8.5 ㎍ですが、「平成 30 年国⺠健康・栄養調査結果」によると中央値は 3.5 ㎍/⽇と、目安を⼤きく下回っていることが分かっています。
ただし、この 8.5 µg/⽇は⼀定量の⽇光を浴びているという条件で不⾜しないと考えられる摂取量です。現代⼈は過剰なUV 対策や夜型⽣活などにより不⾜傾向が指摘されています。 冬は⽪膚でのビタミン D ⽣成が難しい分、⾷事で摂りきれない場合はサプリメントを取り⼊れることも一つの手段です。
ビタミン D が摂れる⾷材と摂取⽅法について
ここまでビタミンD が人間にとっていかに重要な栄養素かを見てきました。では、どのような食材からビタミンDを摂取すればよいのでしょうか。桒原先⽣は「サンマや鮭、アジなど、⿂類に⽐較的多く含まれています。卵、きのこ類からも摂取できますが、含まれている量は⿂類に⽐べると多くはありません。また、ビタミン D は油と共に摂取することで吸収率が⾼くなります。ただし、油の摂りすぎには注意しましょう。 」と教えてくれました。
忙しくて食事を工夫することに余裕がない方は、ビタミンDのサプリメントを取り入れると、手軽に摂取できます。
また、皮膚からの摂取については「⽪膚で生産されるビタミンD は⾷事よりも⾎中濃度に与える影響が⼤きいとされています。冬季でも天気の良い⽇などは、1⽇15 分〜30 分程度、⽇光に当たることもおすすめです(住んでいる場所により⽇照時間に差があることから⽬安時間になります)。」と教えてくれました。
インフルエンザなどの感染症が増加する冬の季節。免疫力を高めるために、ぜひビタミンDを意識的に摂れる生活を心がけてみてください。