5.水を利用した地方創生を考える
吉村:水道局は、もはや良い水を作るだけが仕事では成り立たなくなってきています。水という再生可能な資源を利用して新しいビズネスを展開する必要があるでしょう。例えば、下水汚泥から得られる消化ガスや汚泥、チップ材を利用したバイオマス発電事業などは全国的な広がりをみせています。水道分野では水道水源の落差を利用した小水力発電が行われています。
雪で儲けるのはどうでしょう? IOTやスマホの普及につれデータセンターの建設が増加しています。データセンターの維持管理費の40%がコンピューターを冷やす空調機器の電気代です。つまり、雪捨場の地下に冷却水配管を敷設しデータセンターの冷房源として活用するわけです。その試みは、新潟や北海道をはじめ積雪量の多い地域で始まっています。
今まで水道経営は、儲かれば料金の値下げをするだけで、老朽配管の取り換え工事費用などを積み立ててきませんでした。理由は、老朽化対策の会計システムが無かったことや、政治家が公共料金の値上げを訴えると選挙に勝てないからです。現在直面している水道の危機は、私たち国民の水道事業への理解のなさや、問題の先送りのツケが今になって巡ってきたものです。今回の「水道法改正」施行が、多くの人にとって日本の水道事業の将来を考えるきっかけになれば良いと思います。
吉村 和就
グローバルウォータ・ジャパン代表、国連環境アドバイザー。大手エンジニアリング会社にて営業、開発、市場調査、経営企画に携わり、環境分野ではゼロエミッション(廃棄物からエネルギーと資源創出)構想を日本に広げた。国連ニューヨーク本部の環境審議官などを経て、2005年グローバルウォータ・ジャパン設立。日本を代表する水環境問題の専門家の一人。
著書に『水ビジネス 110兆円水市場の攻防』(角川書店)、『日本人が知らない巨大市場 水ビジネスに挑む』(技術評論社)など。水の安全保障戦略機構・技術普及委員長、経済産業省「水ビジネス国際展開研究会」の委員も務めている。
水道料金に関するアンケート結果
グローバルウォータ・ジャパンが全国の30代~40代の既婚男女618人に聞いた水道料金にまつわる調査では「水道料金を値上げしても構わない」という回答は3.2%。「あまり思わない」が44.0%と最も多く全体的に反対の意見が多かったようです。
また、孫世代まで安心・安全な水を利用するために何%値上げしても構わないか?という質問には「1~5%なら上がっても良い」が43.4%と最も多く、次いで「上がってもいいと思わない」が32.4%となりました。
さて、読者の皆さんはどう感じたでしょうか? 日本の水は安いのか高いのか。私たちの住んでいる地域の水道事業はどのように運営され、その資金はどこから捻出されているのか…興味をもってみる良い機会になりそうですね。