印刷屋の凄いアイディア5円で売ります!“欲しい”をカタチにする「大喜利印刷」プロジェクト

2019/02/08
マガジンサミット編集部

北海道から沖縄まで約4,500 社の中小印刷関連業が加盟する「全日本印刷工業組合連合会」が、印刷業界を中小企業主導で盛り上げるべく、ユニークな開発をするプロジェクトを発足しました。

その名も「大喜利印刷」! Twitterに日々ポストされる“欲しい”の声に着目し、古紙の印刷廃材と印刷屋さんのアイディアや技術をかけあわせて「あったらいいな」をカタチにしてしまおうという企画です。

「大喜利印刷」Webサイト https://oogiri-insatsu.com/

第1弾では、福島県・東京都・石川県・沖縄県の4都市に拠点を置く印刷会社が、実験的クリエイティブユニット「CMYK」を結成し、それぞれが企画立案しプロダクトとしてカタチにしたものを発表しています。

有限会社三共印刷所(チームコンビニ)[福島県福島市・東京都]

お題 水に負けない道具が欲しい…「ワンプde…」

お題 インパクト大の文字をつくりたい…「ガムテープ文字ジェネレーター」

有限会社篠原紙工 [東京都江東区]

お題 紙ナプキンにメモをかくクセがあります…「紙ナプキンメモ帳」

お題 古本の香りをかいでいたい…「HALTONE」

nakabi [石川県金沢市]

お題 インクのにおいが好きだ…「印刷屋さんの芳香剤」

お題 バレずに早弁したい…「早弁専用ゴーハン英和辞典」

お題 曇りでも星空が見たい…「障子の星空」

株式会社平山印刷 [沖縄県豊見城市]

お題 何枚書けばパラパラできるんだ…?「パラパラまんがマシン「P16号」」

お題 あらゆる駅のスタンプを押したい…「押し鉄巻物」

どのプロダクトも革新的なアイディアと思わず笑ってしまうユニークな視点があり、見て・触って・楽しめるものばかり。ちなみに“ご縁”にかけて、各プロダクトのアイディアを5円で販売しており、購入希望の場合は各社に直接コンタクトができますよ。

今回は「CMYK」に参加されている有限会社篠原紙工の篠原 慶丞社長に、作品の見どころや開発の裏、そして印刷業界の想いなどを伺いました!

写真)篠原 慶丞社長 有限会社篠原紙工  http://www.s-shiko.co.jp/

刷るだけじゃない!印刷屋さんの面白さ

篠原:「全日本印刷工業組合連合会」のお声がけにより、印刷業のほかにプロダクト開発も行っている4社で「CMYK」を結成しました。東京だけでなく日本中に面白い印刷会社があることを同業者にも知ってもらいたいという意図もあり、業界のなかでもちょっとした異端児な会社が全国から集まった感じです。

印刷業は基本的に受注産業でありユーザーとの直接的な接点がないためか、なかには暗く汚いイメージを持たれる方もいます。我々としても、情報伝達手段が紙から映像に移行するなかで、ただ刷るだけではなく何かできることはないのか? もっと、クリエイテイブでワクワクする部分をお見せしたいと「大喜利印刷」に挑戦しました。

ところが、いざ、Twitterのお題をリサーチしはじめてみると戸惑うことばかりで。“○○が欲しい”というつぶやきを見つけても、ひとつも共感できない(笑)。自分と同じモノを欲しがっている人はいないかと探しましたが見つかりませんでした。

そこで気が付いたのが自分は作り手目線であり、Twitterにある「こんなのあったらいいな」は究極の消費者目線だということです。紙ナプキンをメモ帳代わりにする理由は、手軽なのか、書き心地なのか、広げた面積なのか…想いに共感できないからこそ、なぜ欲しいのかを色々と想像して試行錯誤する。今までとは違うプロセスでモノ作りができそうだと感じました。

逆に共感できたのが「古本の香り」。弊社は製本屋なので紙のニオイには慣れ親しんでいます。古本って不思議で独特なニオイがして、嗅ぐとなんとなく気分が落ち着きますよね。それがデジタルガジェットから香ったならいいなと思いました。

100%オーガニック素材の香料を調香してもらい、嗅いだ後にじわじわとくる感じを大切にしました。香りでノスタルジックな感情やリラックスした気持ちを再現して、スマホやPCで文章を読んでいるときも、まるで本をめくるような“ゆったり”とした気分に浸っていただきたいですね。

写真)編集部が個人的にかなり欲しい!と思っている「紙ナプキンメモ帳」中央は、古本の香り「HALTONE」

面白いと思ったことに挑戦してみる勇気

篠原:今回は、商慣習をなくし自由な発想で挑戦したからこそ面白い商品がカタチになりました。アイディアがあっても作業時間とコストに見合うだけの利益はあがるのか…などと計算しているうちにシラケてきてお蔵入りなんてことはよくあります。でも、そういった固定観念が多くの可能性をつぶし、仕事をつまらなくしてしまっているのも事実。

印刷会社って面白いでしょ?とお知らせするよりも前に、自分達が挑戦することをおこたっては意味がありませんよね。

写真)「ワンプde…」(有限会社三共印刷所(チームコンビニ))。印刷廃材を利用した水に負けない「レコードバッグ」。これはすぐに商品化できそう?

就職やアルバイトの面接を行うと感じるのですが、印刷屋(製本屋)で働きたいと本心から思う人は少ないです。工場の仕事は美しく綺麗に仕上げられて当然で褒められることがない。ユーザーの感想も僕らのところまでは届きません。遣り甲斐のような感情が生まれないままに仕事をこなしてゆくので、故に働きたい人が限られてしまうのかなとも思います。

今回のプロジェクトには、僕以外に現場のオペレーターも関わっていますが、さまざまな交流を通して工場では体験できない発見や感情が生まれたのではないかと期待しています。

制作された商品を拝見して「くだらね~でも面白い!」「やられた!悔しい」など、3チームとアイディアを競いあえたのは素晴らしい体験でした。全国には、印刷業界をもっと面白くしたいと弊社と同じような志をもつ会社さんがいて、皆、尊敬できる技術力や個性を持っていらっしゃる。とても励みになり心強い気持ちになります。

写真)「障子の星空」(nakabi株式会社)。黒い障子があっても良いよね?という視点に気が付かせてくれました。細かい穴に光をあてると星空のように見えます。

写真 奥)「押し鉄巻物」(株式会社平山印刷)と、手前)「ガムテープ文字ジェネレーター」(有限会社三共印刷所)。ガムテ文字を作るのは意外に難しいのでジェネレーターがあると便利かも。

写真)「早弁専用ゴーハン英和辞典」(nakabi株式会社)いちばん笑ってしまった作品。ほしい!確かに欲しいけど! 出典 https://oogiri-insatsu.com/

写真)「パラパラまんがマシン「P16号」」(株式会社平山印刷)大人も子どもも楽しめる!図書館などの公共施設にあったら皆でパラパラ漫画を作成してみたいです。

現在、「大喜利印刷」では第2弾開催にむけてつぶやきを募集しています。次回があるとすれば、個人的にはプロダクトにこだわる必要もなく、例えば体験型のようなインスタレーションやワークショップなども面白いと思っています。他にも参加したい会社さんがでてくると思います。もっと自由に発想してワクワクするような、社会や地域の課題にソリューションを提供する種を見つけられたらいいですよね。

 

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