雨と言えば、吉川晃司様の「RAIN-DANCEがきこえる」、ASKA様の「はじまりはいつも雨」、徳永英明様の「レイニーブルー」、八神純子様の「みずいろの雨」ですが、もう少し古いところでいうと、世界で初めて雨を直線で描いたと言われている浮世絵師の歌川広重(安藤広重)様でございます。
広重様は、代表作「東海道五十三次」のなかで、三つの宿場に雨を降らせております。「大磯・虎ケ雨」では左上から右下への斜線で、「土山・春之雨」では上から下へ、真っ直ぐに、そして細い線で雨を描かれております。
この直線の雨は、多くの西洋の印象派、アールヌーヴォーの芸術家たちに大きな影響を与えました。フィンセント・ファン・ゴッホ様が広重の「大はしあたけの夕立」を見て驚き、それを模写して「雨の大橋」を描いたという話も有名でございます。西洋には、そもそも「雨を描く」という発想自体が存在しなかったとか。
今では、漫画などであたりまえのように直線で描かれている雨にも、歴史があるのでございます。
梅雨シーズン、雨をどのように描いているかを気にしながら、本屋さんに並んでいる梅雨絵本、雨絵本を楽しんでみるのも、大人の粋な絵本の楽しみ方かもしれません。
そこで今回は、大人におすすめの「雨絵本」をいくつかご紹介!まずは、こちら。
「おじさんのかさ」(作・絵:佐野 洋子)
「100万回生きたねこ」でも有名な佐野洋子さんの人気作品でございます。こちら、一見子供向きの絵本のように見えますが、大人も「あるある!」と共感できる絵本でございます。
主人公のおじさんは、りっぱな傘を持っており、出かける時にはいつもその自慢の傘を持って出かけました。しかし!です。雨が降り出しても、そのおじさん、傘をさそうとしないのでございます。その理由は、“傘が濡れるから”でございます……。でも、その気持ち少しわかりませんか?子供の頃、同じような体験をしたことございませんか…。このあるある感が大人にも人気の理由ではないかと…。果たして、このおじさんは傘をさすのか?是非、絵本で確認くださいませ。
そして、もう一冊。
「カエルのおでかけ」(作・絵:高畠 那生)
こちらは、アクリルを使ったポップな画風が人気のナンセンス絵本作家、高畠那生様の作品でございます。
この作品もそうですが、高畠様の作品は基本、大人に大人気でございます。絵本ナビという絵本専門のサイトの読者年齢層を見ても圧倒的に大人からの支持が高い絵本作家様でございます。
こちらの絵本、どんなお話かというと…。
設定がユニーク。雨の日を満喫するカエルが主人公。天気予報が雨で大喜び。さらに雨が降り出すと、ウキウキして外に遊びに行き、雨の街を満喫!雨がやみそうになると、「雨がやんじゃうよ」と慌てて帰るのでございます。
カエルのいい天気は「雨」という、何もかも逆という設定が、とてもシュールなのでございます。小生の大好きなNHKのコント番組「LIFE!~人生に捧げるコント」に近いものがあるかと…。
こちらは、絵本は子供の読むものと思われている方に、是非、読んで頂きたい一冊でございます。読んで頂けたら、きっと!高畠様の他の作品はもちろん、他の大人絵本も読んでみようかなと思われるはずでございます。
(文:N田N昌)