梅雨の季節でございます。家の中で過ごす時間も長くなり、ストレスも溜まりがちな昨今でございます。
そんななか、今年の梅雨は、大人なアート絵本で“おうち時間”を過ごす、そんなライフスタイル、いかがでございましょう。
何度でも楽しめるところが絵本の魅力
まずは、絵本の魅力から。小説は一度読むと、なかなか、2回3回とは読むことはありません。だいたい、本棚に置きっぱなしでございます。しかし、絵本女子の方、絵本好きの大人の方ならご存知の通り、絵本は何度でも楽しめるのでございます。
「だって、短いから。小説みたいに読むのに何時間もかからないからでしょ!」
そのとおりでございます。が、しかし!それだけではございません。
絵本は、読んだその時々によって、違った印象を受けるのでございます。同じ映画を数年後、再び観た時に感想が変わりますが、それと同じ感覚でございます。その時の気分や、読んだ回数によって、刺さるポイントが違ってたりするのでございます。さらに、それまでに気がつかなかったことに気が付いたり、発見したり…。「あれ、こんなところに、こんなものがあったんだぁ」とか、「ああ、ここはこういう意味だったのかぁ」と。
映画や小説は、体験している間、現実から別世界に逃避できます。それと同じことが絵本でも可能なのででございます。それも、超短時間で。仕事が忙しくて時間のない方が、小説は時間がなくて読めないけど、寝る前に絵本を読んで癒されているという話は、よく耳にいたします。
“おうち時間”が長すぎてストレスが溜まっている時に、絵本も選択枝に加えて頂きたいのでございます。
でも、絵本って子供の読むものでしょ
大人が楽しむための絵本もございます。実は今、増えております。さらに、読者もカルチャー・アート好きな方々を中心に増えているようでございます。ただ、大人絵本をどうやって見つければいいの、見分ければいいのか……。
手始めに、こちらの絵本はいかがでございましょう。
「あめのひのおるすばん」(作・絵:岩崎 ちひろ 案:武市 八十雄 出版社: 至光社)
こちらの絵本、先日、テレビ東京の人気美術番組「新・美の巨人たち」で、“絵本の世界を大きく変えた永遠の傑作”と紹介されていた絵本でございます。
実はこの絵本、1968年に出版されておりますが、その際に、「物語に絵をつけるのではなく、絵本でなければ表現できないような一冊の芸術作品を作りたい」、そんなやりとりの末、誕生した絵本なのでございます。「絵本=児童書(こどもの読みもの)」というイメージは、今でもまだまだ残っておりますが、当時、「絵本=芸術作品」というのはゴイスーに革新的なコンセプトでございます。ちなみに、海外では、絵本はアートブックと呼ばれ、こういったコンセプトのものがたくさんございます。日本でも最近、大人をターゲットにした、こういったコンセプトの絵本が急増しております。
前置きが長くなりましたが、「あめのひのおるすばん」はどんな絵本なのか……
雨の日に女の子が一人でお留守番をしているお話でございます。ただ、それだけ。
物語は、眺めているだけで絵から(視覚から)直接伝わってくる、そんな絵本でございます。
とにかく、絵がゴイスーに美しいのでございます。美術館で、並べられた絵を順に鑑賞している感覚でございます。その一連の流れの中にストーリーが敷き詰められている。画集をストーリーを聴きながら楽しむ、そんな感覚でございます。水をたっぷり使ったにじみやぼかしはもちろん、様々な技法を駆使して描かれた水彩画でございます。清澄で温かみがあって、独特の色調でございます。ちなみに、あるシーンで青いカーテンが登場しますが、その青色は、塗っては水で洗い流しを何度も繰り返して出来上がった青色だそうでございます。
絵を眺めているだけで気持ちが癒される絵本でございます。大人なアート絵本で梅雨でジメジメした気分を癒してくださいませ。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)