【映画レビュー】障害者を世話する”出稼ぎ家政婦”の夢とは?/映画『淪落の人』2/1公開

2020/01/31
マガジンサミット 儀保

半身不随となり人生に絶望した中年男性と、家族のために夢を諦めた出稼ぎ家政婦の交流を描いたヒューマン映画『淪落の人』

2019 年の本国公開と同時に香港中を涙と感動で包み大ヒットを記録。去年、第14回大阪アジアン映画祭にて『みじめな人』のタイトルで上映された際には、観客賞を受賞した本作。主演のアンソニー・ウォンが約10年ぶりに来日した舞台挨拶付き特別先行上映は発売わずか4分で完売!! そんな話題の本作が、いよいよ2月1日から日本公開となります。

異種文化交流!!

事故で半身不随となったチョンウィン。物語は、フィリピン人の出稼ぎ家政婦エヴリンが住み込む所からスタート。前半こそ、異国の地で困惑するエブリン。広東語が話せない彼女にイラ立ちを募らせるチョンウィン。そんなギクシャク関係から、片言の英語で歩み寄る内、距離が近づいていく2人。普段は気難しいオヤジのチョンウェン。エヴリンと打ち解けていく内、妻とも離婚し、妹との関係も悪く、唯一の楽しみは離れてくらす息子とのSkype電話というバックボーンも判明。

一方、エヴリンも地元での結婚が上手くいかず、家族へ仕送りをする為、写真家になる夢を諦めていた事が発覚。その夢を叶えて欲しいと思うようになったチョンウェンは、ある計画を立てるのですが……。

先程もお伝えした通り、チョンウェン役はベテランのアンソニー・ウォン。しかし、相手役のエヴリンは、これといった有名な映画には出演経験のない若手女優なんです。

名優&若手女優のコンビ

何の希望も抱けないまま日々を過ごしていた主人公を、「インファナル・アフェア」シリーズなど香港を代表する名優アンソニー・ウォンが演じています。いつもは包丁で人をメッタ刺しにしたり、銃を撃ちまくる激シブ俳優のイメージがありますが、今回はヒューマンドラマ。ゴキブリにビビり、隠れてAVを見たり、サプライズプレゼントを用意してドギマギ。さすがの演技力でガンコ親父のユーモラスさや哀愁、人間臭さを見事に体現。思わず感情移入を誘発させます。本作で香港のアカデミー賞と言われる香港電影金像奨の主演男優賞を受賞(しかも三度目の受賞!!)。

もう一人の主人公である、フィリピン人の出稼ぎ家政婦を演じるのは、本作が初主演となるクリセル・コンサンジ 。映画出演経験はほとんどないそうですが、異国の地でカルチャーショックを受けながら奮闘する姿には思わず涙。所が本作、それだけではないのです。

物語の背景に隠された差別や偏見!!

文化も習慣も違う2人が衝突。それでも、お互い情が湧き、距離の縮まっていくハートフル展開。ときにコミカルに。ときにピリピリと。様々な苦楽を乗り越える姿にカタルシス。ついつい2人のハッピーエンドを望んでしまいます。

それでいて、香港の出稼ぎ家政婦の問題や市場での外国人差別、外国人家政婦と雇い主である障害者への偏見……など、物語の背景には現実の問題も見え隠れ。単純な障害者へのお涙頂戴映画になっていないのが、素晴らしいです。

映画『淪落の人』は、2月1日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開となります。

映画『淪落の人』

原題:淪落人

英題:STILL HUMAN

監督:オリヴァー・チャン / 出演:アンソニー・ウォン、クリセル・コンサンジ、サム・リー、セシリア・イップ、ヒミー・ウォン

2018 年/香港/原題:淪落人/英題:STILL HUMAN/112 分/ビスタサイズ/5.1ch/G NO CEILING FILM PRODUCTION LIMITED © 2018

公式サイト:http://rinraku.musashino-k.jp / 

武蔵野エンタテインメント 

Twitter:@musashino_ent 

2020 年 2 月 1 日(土) 新宿武蔵野館 他 全国順次公開 

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マガジンサミット 儀保

表の顔はディレクター兼カメラマン。実は、年間700本の映画を観賞する映画好き。どんな作品でもオススメのポイントをピックアップ。映画好きから、普段、あまり映画を見ない方にも、幅広い映画の楽しみポイントをご提供できればと日々邁進中? 映画関連tweetも日々、更新してます @yungibo

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