沖縄の離島・粟国島を舞台に、死んだ身内の骨を洗う風習を描いた映画『洗骨』。
重ためのヒューマン・ドラマかと思いきや、本作のメガホンを取ったのは、お笑い芸人"ガレッジセール"のゴリ。「お笑い芸人が勢いで作った映画のような長いコント」と思うなかれ!
本作では、本名の"照屋年之"名義で監督業に専念。ある家族の再生を、実際に「死」をテーマに映画化。根源的なテーマの中で、本職である芸人エキスまで注入。クイックかつソリッドな笑いがスパーク。唯一無二な土着質コメディに仕上がっています。
"洗骨"とは?
"洗骨"とは遺体をお墓の中に入れ、一度風葬。時間を置き身内により、白骨化した遺体を手で洗う習慣です。本作の中でも、母親の葬儀のシーンから始り、4年後に家族が一同に揃います。物語は"洗骨の日"へ向かっていきます。
家族ドラマ・ミーツ・コントギャグ
母の死から4年。地元に残る洗骨の風習の為、一同に揃う一家。名古屋から戻った未婚の娘は妊娠中でお腹を大きくしており、東京の一流企業で働く兄貴は妻と上手くいってない様子。挙げ句、父親はアル中。そんな状態の主人公一家に対して、どこか抜けた感じの親戚一家とのギャップあるコラボがもはやコントレベルの笑い。
例えば、明かに妊娠している娘に対して、父親が「そのお腹どうしたの?」という真っ当な質問シーン。「太った」で押し通すコントのような場面に会場爆笑。
さらに、お腹を大きくして帰った娘が「好きな人とセックスして子供が出来た」という明け透けな告白シーン。重たい空気の大人たちへ無邪気に「セックスって何ー??」と聞いてくる子供たちというお約束のギャグ。
そんな家族ドラマ・ミーツ・コントギャグの夢のコラボになっているんです。
ギャグだけではないんです
そんなドタバタ喜劇な本作の中で描かれる"洗骨"という文化。この風習が切ない。遺体をお墓に戻し、4年放置。変わり果てた姿の遺族を洗うという工程も本作はしっかりと描いています。
この洗骨シーンまで、妻の死を受け入れられず、ほとんどセリフもないまま、ただオドオドとしている父親役の奥田瑛二。本人もオファーを受けた時は「なんで俺に?」と困惑したという奥田瑛二が奥田瑛二に見えない情けなさ。それでも、クライマックスの静かな演技に思わず涙。
未婚のまま妊娠して帰郷した娘役に水崎綾女。家族への愛情を素直に現せられない長男役には筒井道隆。亡くなった奥さん役には筒井真理子……と驚くほど品質保証なキャスティング。
一組の崩壊寸前ファミリーの再生物語でもあり、ドタバタ喜劇でもある映画『洗骨』は現在、公開中です。安定感のあるドラマ作品を観たい人にはオススメの一本です。
(C)「洗骨」製作委員会
ギボ・ログ★★★☆☆(星3つ)