2月14日放送の「今夜くらべてみました」(日テレ)の“東京に慣れない女・大都会東京のここが嫌い”というテーマで、まるで芸人さんかと思うほどのトーク力と持ちネタ(?)に大笑いさせられた。
その人は、「ひがみソングの女王」と呼ばれ人気急上昇中のシンガーソングライター・関取花(26)さん。番組では、ひがみ・そねみ・ゆがみの目線というか、人間観察眼とツッコミどころが秀逸。
Twitterより @dosukoi87
例えばどんなことを話したかというと…
表参道の美容室のイキがった男性美容師
「おまかせで、流行りの感じで」とお願いしたら、鏡越しに両肩に手を置き、「前髪は、癖があるので」などといいながら、前髪の先端をクシでソロソロソロ~と撫で、「OK!絶対かわいくしますから」って、絶対思ってないのに
吉祥寺のお店でオーガニックなものを中心としたランチを食べて
味がボヤッとしてる。「私、優しいでしょ」みたいな味付け。出された小皿が全部小さく、「シルバニアファミリーのご飯みたいでしょ」みたいのがうざくて、うるさい!早く食わせろ! と言いたくなる
下北沢の王将前にて
ガードレールに腰掛けタバコをふかす男に対し、「俺達の庭感を漂わせながら、この姿がカッコイイと思って場所に酔っている」。こういう人に限って、「この街は、俺の若い頃と全然変わんないよな」と思っているが、昔と変わっていないことに対しもっと焦るべきだと思う。
…といった具合。都会スタイルのディスりというか、雰囲気の勘違いと言うか、このあるある感を本音でズバッと切り捨ててみせ、スタジオの女子に大ウケだった。
関取花のひがみ
関取花さんは、横浜市出身で慶應義塾大学卒業という才女。子供の頃にドイツに住んでいたこともあるそうだ。2010年「THE」というタイトルのアルバムをリリースしたのがデビューとなるようだ。基本的にアコースティック・ギター一本で弾き語り、遠くまで聴こえるようなパワフルな声量で歌う。2017年2月15日にニューアルバム「君によく似た人がいる」をリリースしたばかり。
彼女の名前が急に知れ渡ったのは、去年、「行列のできる法律相談所」に出演してから。“ひがみソングの女王”として紹介され、その時に歌ったのは『べつに』という曲。
(歌詞)
なぜだ なぜ君らは
終電間際現れる
なぜだ なぜ君らは
改札前でキスをする
柱の陰に隠れてほしい
できれば家でやってほしい
少しは恥を知ったほうがいい
とりあえず一応見ないふり
べつに べつに べつに
べつに べつに 悔しくない
べつに べつに べつに
べつに べつに 悔しくない
「いるいる」「わかるわかる」と言いたくなる。「関取花ってこんなひがんだ歌ばかり歌ってるんだ」と思った人も多いかもしれない。でも、実際「ひがみ」っぽい曲は少ないと思う。“ひがみで作った面白い曲を歌うシンガー”というイメージはちょっと捨ててみて欲しい。(営業妨害になるかな?)
関取花のコトバ
彼女がリリースしている殆どの曲の歌詞を読んでみた。その中には、若者へのメッセージソング的なものがいくつもある。恋愛ソングも多い。
そんな中、今回は特に10代~学生の若者に読んで聴いて吸収して欲しいと思った数曲をここにピックアップする。
世には応援ソングと呼ばれるものがあって、大概“人生いろんなことがあるけれど夢に向かって頑張れ”的な、ポジティブな内容が普通だ。
でも、関取花さんは、それって、“簡単に言い過ぎじゃね? 無責任じゃね? ポジティブばかり押しつけてね?” とでも言いたげで、それを時に薄らぼんやり、時にとても直接的な言葉で綴っていたりする。中には、胸の芯をゴリッとえぐってくるような曲もあり、思わず自分をふかんで見直してドキッとした。
「むすめ」
2012年、神戸女子大学のCMソング。あのインパクト。覚えている人も多いはず。しかし、その歌詞をちゃんと読んだ人は少ないかもしれない。是非、この春、都会へ旅立つ若者に読んで感じて欲しい、「軽い気持ち」じゃダメだってことを。
[歌詞]
もてたい 痩せたい 恋をしてみたい
少しちやほやされてみたい
新しい場所を思うと 自然と胸がおどるのよ
春が来たら家を出るわと
軽い気持ちで告げた夜
少し寂しそうに笑って
父と母は言ったのよ
学べ 学べ 学べよ 学べ
おまえの好きなこと見つけなされ
広い世界に触れてみなされ 夢を見つけなされ
適当に言葉を聞き流し
布団に入ってみたものの
どうにもこうにも眠れぬよ 言葉が回るのよ
小さな私が家を出る
それがどれほどのことなのか
軽い気持ちではいけないと
やっと気づいたのよ
学べ 学べ 学べよ 学べ
贅沢いう前に 学びやがれ
いつか素敵な大人になって 帰ってくるために
泣いて怒ってそして笑って
過ごしたこの家の日々のこと
そっと心の奥に隠して
私は学ぶのよ
夢を見つけるのよ
この歌詞の主人公は、事の重大さに気付けた。それがエライんだ。余談だけど、昔ソニンが歌った「カレーライスの女」を思い出した。
「もしも僕に」
[歌詞]
もしも僕に子供ができたら
どんなことを伝えるだろう
期待してるよ 頑張れよ
そんなこと まず言わないだろう
一日三食飯食って
よく笑いよく泣き遊べ
そして他人を褒められる人になれ
努力は大抵報われない
願いはそんなに叶わない
それでもどうか腐らずに
でかい夢見て歩いて行くんだよ
もしも僕に子供ができたら
どんな恋をするのだろう
父さんと母さんみたいになれよ
そんなこと言えたらいいな
一度や二度の過ちも
いつかはきっとするのだろう
立つ鳥跡を濁さずでうまくやれよ
初恋なんてまぼろしで
思いは大体届かない
それでもどうか忘れずに
胸の端っこで大事にするんだよ
うまくいかないことばかり
なぜいつもあいつばっかり
隣の芝はいつだって青いけれど
知りたくないこと知ったり
優しい嘘を覚えたり
いらない荷物は増えてしまうけれど
それもこれも 最後には
笑い話に変えられるように
人生なんてそうさネタ探し
楽しんだもん勝ち そういうものだよ
もしも僕に子供ができたら
そういうことを伝えたい
でもまだきっとずっと先の話
だからそれまで自分に言い聞かす
とりあえず自分に言い聞かす
頑張ってると思っているのに「頑張れ」と言われると、虚無感に襲われる。「夢はきっと叶う」という言葉は、言うのは容易いけれども、現実的には難しいものだ。自分の実力って、どんな形の物差しで測ればいいのだろう? とわからなくなることがある。
歌詞の主人公は、冷静になって自分を見つめ、希望だけは捨てていないみたいだ。見えない未来に向けて頑張っていこう、と実は前向きな歌だ。
「この海を越えて行け」
[歌詞]
嫌いになった人がいる
殴りたかった人がいる
殺しちまったことがある
誰かじゃなくて自分である
止まない雨に打たれて
濁流に飲み込まれ
それでも舵をとる 舵をとる
船よ涙の海を行け
憎しみも引き連れて
救えなかった人がいる
見殺しにした人がいる
守りきった人もいる
誰かじゃなくて自分である
孤独な夜に逆らって
真っ暗闇の中で
それでも舵をとる 舵をとる
船よ涙の海を行け
悲しみも引き連れて
息を飲むような朝焼け
飛び跳ねる魚たち
そこには何がある 何がある
船よ涙の海を行け
憎しみも引き連れて
船よ涙の海を行け
悲しみも引き連れて
この海を越えて行け
解釈が難しい気がする。でも、個人の受け取り方で感じればいいと思う。決まりはない。
私は、この人は自分のことが嫌いで、でも、環境が一新するのを気に変わろうとしているんだ・・・と思った。みんな不安な時期なんだ。
日本語が伝わる
関取花さんの歌の歌詞を全部見終わって気づいた。ひとつは、彼女の歌詞は日本語だけで綴られていること。もちろん、カタカナ語はあるけれど外国語の文はほとんどない。だから、心にドーンと響きやすいのか。
歌もそうだけど、今後は色んなテレビシーンで関取花さんが登場しそうな気がする。春から注目の一人だ。