映画にドラマ…何度でも蘇るゾンビブーム。元祖ゾンビは実在の〇〇だった

2016/01/08
田中 元

映画、ドラマ、ゲーム、マンガと、メディアを問わずゾンビものが人気だ。

ゼロ年代の重要作ラッシュに比べると現在はやや落ち着きつつあるが、それでも海外ドラマ『ウォーキング・デッド』('10〜)『Zネーション』('14〜)等、現在進行中の作品も複数あり、死んだと思ったら生き返る、ゾンビそのもののようなブームを繰り返す定番ジャンルとなっている。

 

“ゾンビ”とは何か?

でも、どうしてこんなグロいのが人気なの?面白いの?

 

そもそもゾンビってなんなの?ということが気になる方に、『バタリアン』('85)を観て以来ゾンビ好きになって約30年、ホラー映画ムックにゾンビ映画記事を書いたり、城戸賞にゾンビもののシナリオを応募して一次選考を通過(二次選考落選……)したりした私が、ものすごくざっと解説させていただきたい。

 

そもそも多くの方が“ゾンビ”と聞いてイメージするのは、死んだはずなのに生き返って人を食い殺す、モンスター化した死者だろう。

 

こうした特徴を持つゾンビは、『BRUTUS』2015年12月15日号の特集『今日も映画好き』で谷口功一氏と伊東美和氏の対談で語られているように、映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』('68)がその起点。

1327741
BRUTUS(ブルータス) No.814
 2015年12月15日号
マガジンハウス
特集『今日も映画好き』

 

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生
デュアン・ジョーンズ(出演),ジョン・A・ルッソ(脚本),ジョージ・A・ロメロ(監督) /1968年・ウォルター・リード・オーガニゼーション。ニューヨーク近代美術館に所蔵。また、アメリカ国立フィルム登録簿にも永久保存登録されているゾンビ映画の記念碑的作品。
出典 wikipedia

 

といっても“ゾンビ”という言葉自体はもっと古い。

 

1929年、アメリカの探検家兼ジャーナリストであるウィリアム・ビューラー・シーブルックが、ハイチでは呪術で死体を蘇らせ労働力としていると自著『魔法の島 ハイチ』(大陸書房より1966年に邦訳刊行)にて紹介、この呪術や死者がゾンビと呼ばれていたと書かれていたことから、ゾンビが生き返った死者を指す言葉として英語圏で一般化。

 

1932年の『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』を皮切りに、数多くのゾンビ映画が作られている。

 

『魔法の島 ハイチ』

魔法の島 ハイチ
W.B.シーブルック 著/林剛至 訳/1969年 大陸書房 世界初の黒人共和国ハイチを訪ねたシーブルックの滞在記。1920年代の奴隷制度と労働力。ヴードゥー教の秘技とゾンビの実体が描かれている。
出典 ekizo.mandarake.co.jp

 

もちろん書物で紹介されているように、いずれも呪術師の支配下にあるモノとして描かれているため、先の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の登場までは、ゾンビ映画に人を食うようなスプラッター描写はない。

 

グロが苦手だけどゾンビ映画と呼ばれるものを観てみたい方は1968年以前の作品を選んでおけば安心だ。

そもそも低予算のB級映画ばかりなので面白さは保証できないが。

 

『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』

恐怖城(ホワイト・ゾンビ)
ベラ・ルゴシ(出演), ガーネット・ウェストン(脚本) ,ヴィクター・ハルペリン(監督)/ユナイテッド・アーティスツ1932年 ハイチが舞台。死者を蘇らせる魔法の粉がを巡るストーリーは、『魔法の島 ハイチ』が元ネタだ。
出典 wikipedia

【ゾンビ=人を食う死者】とは限らない

それではなにゆえ人食い死者をゾンビと呼ぶようになったのか。

ご覧になった方ならおわかりのとおり、人食いゾンビ映画の起点となる『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』では、邦題では“ゾンビの誕生”という副題があるにもかかわらず、劇中で彼らをゾンビと呼んでいるわけではない。他の人食いゾンビ映画においても、劇中で彼らをゾンビと呼ぶことが一般化している描写のない作品は相当に多い。

 

あくまでも筆者の持論だが、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編として製作された作品が、日本を含む主に英語圏以外の国々で『ゾンビ』('78/『ZOMBIE』『ZOMBI』等)のタイトルで公開されたことから、“人を食う死者=ゾンビ”というイメージが定着したと考えられる。

『ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE 』

恐怖城(ホワイト・ゾンビ)
デビット・エンゲ (出演), ケン・フォーリー (出演), ジョージ・A・ロメロ (監督, 脚本)。無名だった、ジョージ・A・ロメロを一躍有名にさせた大ヒット作。
出典 amazon

 

もっとも、その『ゾンビ』ですら、劇中で死者を指して「ゾンビども(共)め!」といった台詞はあるものの、あくまでも「そこのハゲ」「おい、デブ」「メガネ野郎」のような皮肉めいたニュアンス。『ウルトラマン』の第一話でウルトラマンが初登場した際、劇中の人々はそれがなんだかわからないので「巨人」などと呼んでいるのと同じようなものである。

 

作りが雑なゾンビ映画では最初から人食い死者をゾンビと呼んでいたりすることもあるが、完成度の高い作品ではそのあたりをきちんと自覚しているものも多く、例えば『ウォーキング・デッド』では「ウォーカー」と呼んでいるし、ゾンビコメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』('04)にいたっては「Zで始まるその呼び方はダサいからやめろ!」と止められる始末。人食い死者をゾンビと呼ぶのが一般化しているのは、劇中世界の人々ではなく、その外側で映画を観ている我々にとってなのである。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』

恐怖城(ホワイト・ゾンビ)
ケイト・アシュフィールド (出演),サイモン・ペグ (出演, 脚本), グロテスクな内容にも関わらず最後の最後まで悲壮感ゼロ。ゾンビ映画の金字塔と名高い名作。[DVD]
出典 amazon

『ウォーキング・デッド 』コンパクト DVD-BOX シーズン1

恐怖城(ホワイト・ゾンビ)
アンドリュー・リンカーン (出演), ジョン・バーンサル (出演), アメコミを原作とするTVドラマ。シーズン1は、第68回ゴールデングローブ賞のテレビシリーズ賞(ドラマ部門)などにノミネート。シーズン6が公開中。
出典 amazon

 

それでいて先に書いたようにそもそもの語源は別のところにあるわけで、要するに「ゾンビ」という言葉をきちんと定義しようとすること自体がそれほど意味をなさないのではないか。

 

ときどきある「走るゾンビなんてゾンビじゃない」などというこだわりもはっきりいってナンセンス、「吸血鬼はゾンビなの?」とか「キョンシーは?」などという質問にいたっては「どっちでもいい」としか言えないのである。

 

大雑把にいい加減に曖昧に、蘇った死者はゾンビであり、作品によってその特徴特性は異なる、と思っておけばいいのではなかろうか。

所詮はフィクションの話だ。質問しないであれこれ鑑賞して、進化するゾンビを楽しんでほしい。

 

 

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この記事を書いた人

田中 元

割りと何でも書くライター業。最近は「Yahoo!ライフマガジン」「このマンガがすごい!WEB」等、主にウェブメディアに執筆。購読雑誌は『映画秘宝』『本の雑誌』等。

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