コンサルティングや研修を通して、組織開発や人材育成の支援を行なっている株式会社HRインスティテュートの代表取締役 三坂 健さん。夢ではなく、目標を達成する実行力を鍛えるという考えについてお話しを伺った。
現在、企業や社員の戦略の立案や実行の支援をしているが、戦略が上手くいくか、いかないかの一番大きな要因は「実行したか、してないか」だと思う。考えたけれどやっていない、途中でやめてしまうことが目標達成できない一番大きな要因。そのような意味で実行し続けるというのがすごく大事だと思っている。
夢も目標も両方大事だが、夢はフワフワしていて叶わなくてもいいという文脈が含まれている感じがする。目標は到達を前提に考えているから、夢をできるだけ具体化して中間地点の目標に置き換えられるのが大事。その目標を到達するためにも目標をできるだけ細かく計画することも大切。企業としてなら1年、3年、5年後と細分化して達成できる目標に置き換えて実行に移すのが結果的には夢を達成することに繋がるのではないだろうか。そのため、このような実行力を支援していくことが大切だと三坂氏は話す。
目標を達成するためのシナリオをどのようにつくるのかと聞くと、3つの要素が必要だと言う。1つはアウトサイドインと言って、世の中の環境変化やマーケット、競合など外を分析して内を見るという視点。2つ目はインサイドアウトで自分たちの持っているリソースや技術、人材、お金の観点から何ができるのかを考える。3つ目はロードマップで段階を踏んで目標を達成する道筋を描く。
その時に外からの影響がどのように変わっていくのか、内の持っているものがどう進化していくのかの考察を合わせて目標に対してのシナリオを描いていくのが大切だと教えてくれた。
働く上でもシナリオを作る上でもコミュニケーション能力は大事だ。お互いがポジティブな影響を受けられる関係づくりには、相手が何を求めていて、何を欲しているのかを理解する力も必要だし、それにフィットする情報や人を紹介できるアクションが必要になる。そしてこちらも何が必要かをしっかり伝えていき、お互いが求めているものを理解しあう中でお互いが必要なモノを提供しあえるのが関係づくり。その時にコミュニケーション能力がないと察することができないので、ビジネスの上ではコミュニケーション能力はとても重要だと話す。
しかし、コロナ禍でコミュニケーションの憶測が増えた。やはりオンラインだと情報交換が限られてしまい、目で見たり耳で聞き取ったりする事実が見えないのが現状。その分、足りない部分を憶測でカバーしようとしている。無自覚な偏見で勝手に相手を決めつけていたり、相手を勝手に解釈したりしているため、関係性がギクシャクする可能性があるので、なるべく心を空にして人と向き合えるようにする必要があると思っている。
実行力を上げるために必要なことを聞くと、早く小さく失敗することが大切だと話す。時間がたてばたつほど、どんどん物事は大きくなる。例えば、お客様から提案依頼が入った時、15分後に回答する内容と2週間後に回答する内容で失敗が多いのはたった15分しか考えずに回答したものだ。ただ、そこで一度、失敗すると新たな経験を得たうえで、また後日、改めて提案できる。もちろん物事にもよるが、すぐやった方が回転数を増やすことができ成功率も高くなる。失敗を恐れている人がいるのなら、早く小さくやってみることがいいのではないかと教えてくれた。
三坂氏の場合も、15分単位で仕事を考えるようにしている。というのも15分で終わる仕事が意外にも多いからだ。しかし、その仕事を2週間後に設定する人もいる。そうしてしまうと忘れてしまい、叱咤され、相手に迷惑をかける悪循環が生まれるので、15分で終わると思う仕事に対してはすぐやるようにしている。企画書も打ち合わせが終わった時にたたき台を作る、そして関係性がいいクライアントだったら一度、見せてしまう。やはりスピード感が大事だと話す。
仕事で気をつけていることを聞くと、細部に神が宿ると考えていて、資料の誤字脱字やメールでの丁寧さなど細かいところに気をつけ、社員にもそのように伝えていると言う。細かいところに配慮することが結果的には気持ちのよい関係性がつくれ、ファンになってくれることに繋がるのではないかと思っている。緻密に大胆に、早く正確に、より少なく、より多くなど相反することを達成することに知恵や戦略が生まれると思うので、そのことは創業者から習ったことでもあり、大事だと感じている。
最後に仕事の中でやりがいを感じることを聞くと、一つは会社の代表でもあるのでメンバーが自発的に考え、行動してくれる姿を見た時だと話す。誰かが言う前に行動に移しているシーンが実際に増えるていることで、会社も人も成長していると感じ、やりがいを感じる。またコンサルタントという観点で言うと、自分が思っていることを人に伝えて、人と何か通じるものが生まれる瞬間や共感を示してくれた時などにやりがいを感じると三坂氏は想いを語ってくれた。