グローバルで勝ち抜くためにも、目的から逆算してシナリオを描く戦略的思考を強化する必要性が高まっていると語る株式会社HRインスティテュートの代表取締役 三坂 健さんの考え

2022/07/13
マガジンサミット編集部

コンサルティングや研修を通して、組織開発や人材育成の支援を行なっている株式会社HRインスティテュートの代表取締役 三坂 健さん。戦略的思考を強化する必要性が高まっているという考えについてお話しを伺った。

仮にみなさんが日本人の友人から「ハリウッドスターになりたいんだけどどうすれば?」という相談を受けたとして、その時どうアドバイスするでしょうか?多くの人は英語を頑張りなさい、先ずは日本で演劇を学んで認められるようにならないと世界に羽ばたくのは難しいから、演劇経験を積みなさいと言う人がほとんどだろう。

それもその通りだが、実際に成功した人を見ると、英語や演劇をコツコツ勉強して習得していただけではないはずだ。最終的にハリウッドスターになるという目的から逆算して、どういう人に出会えばいいのか、どのような役をやったらいいのか、どのメディアに出たらいいのかというシナリオを描いていただろう。目標を達成するにはゴールから逆算してシナリオを描く戦略的な思考が必要だと三坂氏は話す。

ただ、積み上げていく発想で目標到達できるのは、よほど運に恵まれるか、周りの大きな助けがあって成り立つもの。こうしたアプローチも当然一つの道筋ではあるが、これからの人や企業は愚直にやっていれば誰かがそれを買ってくれる、市場に伝えてくれると考えるだけでは、世界レベルでスピーディに行動する頭の切れる人たちがたくさんいるので難しい。100点満点の商品を出そうと実直に試行錯誤している企業がいる中、商品がまだ60点くらいの状況で早くに市場に出してお客様のフィードバックを聞きながら改善している企業もたくさんある。

そして多くの場合、後者のような人達が勝ち組になる。このように発想の転換をしていかないと、おいていかれる。これがなかなかできないのが、自分を含めて日本企業や日本人の特性でもあるが、この状況こそが、戦略的思考を強化する必要性が高まっていると考えている。

実際に世界を見渡すとGAFA(Google, Amazon, Facebook(現Meta), Apple)の4社は既に日本の上場企業時価総額を上まわっている。Metaなどはすぐに見込みがある企業をM&Aするなど戦略的。こうした企業とも争っていかないといけない状況下において戦略的な思考を磨き、実践する必要があると問題意識があると三坂氏は話す。

戦略的な思考を高めるためにはどのようなことが必要かと聞くと、先ず一つに勝手な制約を置かないということがあると言う。努力という言葉はいい言葉だが、努力は目の前にある資源やすでに見えている範囲を前提としやすい。努力すれば実るということに依存しすぎると、費やした労働力に比例したアウトプットしか出ない。いかに努力と労働コストを減らして、エフォートレスに成果を達成するかを考えないと、なかなか戦略的な思考にはならない。そのことが制約を外すということだ。

例えば、多くの場合、「人がいないからできない」「時間がないからできない」「お金がないからできない」という制約をすぐに置きがちだが、それは既存のやり方を前提に考えているが故だ。お金がないなら調達してくればいいのだ。三坂氏も過去にベトナムの事業で1000万円必要だった時に当時の自分の会社の規模で支出してもらうことは無理だと思っていた。その時ある人から「○○さんなら聞いたら投資してくれるかもしれないよ。聞いたのですか?」と言われた。

その時の三坂氏は”Noと言われるに違いない”という勝手な制約を置いていて聞くことすらしていなかったのだ。このように知らず知らずに勝手に自分に制約を置いているのが自分の思考の範囲を狭めていて、努力に依存することになっている。このようなことに対して多くの人が少しでも制約を外せるようになると発想や思考が変わり、行動も変わると考えている。

ではどのような人が制約を外せるのかと聞くと、自分が到達したい目標に対して強い想いがあるかどうかが重要だと話す。人は自分の想いが強いほど制約を外して考えようとするし、逆に想いが弱い人は戦略的な思考の欠如にも繋がると思うと三坂氏は語る。

また、その強い想いを保つモチベーションの一つは「縁を辿る」ことだと言う。自分が成し遂げたい目標は過去からの延長線上にあるもの。今後どうなるかわからない未来を見るのは難しいが、過去を遡ると、あの人に恩返しがしたい、あの人のようになりたい、あの人を超えたいなどビジョンが明確化しやすい。

三坂氏は父を早くに亡くしているが、当時、母が見せてくれた「課長に就任した時の父のメモ書きを見て鳥肌が立ち、ビジョンを持って働いていた父の姿を感じ揺さぶられたと語る。こうした経験が今の組織開発や人材育成といった仕事につながるきっかけの一部ともなっているという。自分の過去を辿ると、どんな人生で、どのような人に対して、どのような機会を提供できていたのかということが大切だと実感する。そうやって縁を辿るのも、想いを保つモチベーションの一つである。

もう一つはやっておけばよかったなと思うことはやっておくこと。これも制約を外して考えることにつながる。自分が本当にやりたいと思っていることを考える時間を定期的に持つ。会社でどうありたいかと考える前に個人としてどうしたいかということを考えるのが重要だ。それが自分自身の主体性を引き出すことに繋がっていく。

最後に三坂代表が考える活躍できる人材を聞くと、上司に意見を聞く前にお客さんに意見を聞く人だと言う。お客さんと先にアイディアを膨らませてから上司に持っていける人が結果から逆算して行動していることにも繋がるからだ。また、人との関係づくりができないと仕事が広がらないので関係性を構築できる人も活躍できる人であると教えてくれた。

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