日本の年末に欠かせない「年越しそば」。「新しい年も細く長く健康に」とか、切れやすいそばにかけて「一年の厄災を断ち切る」など諸説ある由来を語るのも大晦日の定番ですよね。そこであえて視点を変えて、「そば」ならぬ「そば湯」に注目してみました。
「そば湯ください」はおいしい蕎麦屋の証?
おそば屋さんで「ざるそば」や「もりそば」を頼むと〆に出てくる「そば湯」。一種のスープと考えれば、そば湯を飲む行為もうなづけますが、ふつうスープは食前にいただくもの。食後に料理のゆで汁を飲むというのはおそばならではの珍しい食習慣と言えるかもしれません。
そば湯の習慣はもともと信州ではじまって、その後江戸で広まったといわれています。気の短い江戸っ子は食事に時間をかけるようなことはせず、そばも噛まずにのど越しを楽しむのが“粋”。小腹がすいたらズズッっとそばを手繰っては、〆にそば湯で流し込んでいたのかも。また美味いそばを出す店はそば湯も美味いとされ、客からそば湯を求められると店主はとても喜んだと言います。そば湯は店の評価のバロメーターでもありました。
信州ではそば湯が胃腸に良いと言われていたことから、胃腸薬や消化薬としても利用されていたのだとか。事実、そば湯にはそばを茹でる際に溶け出したビタミンやミネラル、血液をサラサラにするといわれるルチンなどそばの栄養が豊富に凝縮されています。
おいしくて健康にもよいことから定着していった独自の食文化、それが今でも広く親しまれている「そば湯」です。
そば湯はまぜて飲むべし
そばつゆに割って飲むというのがそば湯の一般的な飲み方ですが、塩分の摂り過ぎを避けるためにも、そば湯はそのままいただくことをおすすめします。
ひとつ気をつけたいのは“よくかき混ぜて飲む”ということです。そば湯は成分が沈殿しやすいため、よくかき混ぜないとそば湯の上澄みばかり飲むことになってせっかくの栄養を摂取できません。
そば湯自体にはあまり味はありませんが独特のとろみとほのかな風味で、慣れると案外クセになる美味さで、体も温まります。
知ってると便利!そば湯の作り方
いろいろなアレンジができるのもそば湯の特徴。焼酎のそば湯割りや、和風カレーやしゃぶしゃぶ、お鍋の割り下用など、家庭でも様々な用途に使えます。ただ、そのためにいちいちそばを茹でるわけにもいきませんよね。でもご安心を。実はそば湯はちょっとしたコツさえ押さえれば、ご家庭でもおいしく簡単に作れます。
まず、使用するそば粉は小麦粉を加えていない100%のそば粉を選んでください。なるべく水に溶けやすい細かい粉が理想です。
そして湯呑などに小さじ1~3杯ほど(多いほどとろみが強くなります)のそば粉を入れます。最初からお湯で溶くとダマになってしまうため、まずは水で溶いてペースト状になるまでよくかき混ぜます。その後、器の半分くらいまでは少しずつ熱湯を加え、あとは一気に注ぎます。マドラーなどでよく混ぜれば出来上がり。とても簡単です。
現代人こそ「そば湯」が必要?
栄養過多と言われる現代ですが、実際はカロリー過多であっても栄養は偏り過ぎと言われます。
ビタミンB1、B2、食物繊維、ルチン、ナイアシンなど、現代人の健康に欠かせない栄養が豊富なそば湯は、整腸作用はもとより血糖値の上昇抑制やカロリー摂取の抑制効果もあるため、生活習慣病の予防の観点からも見直されています。また、満腹感も得られ美肌効果などにも効果があるので、美容・ダイエット食品としてもあらためて注目されています。
新しい年、あなたも「そば湯」をライフスタイルに取り入れてみてはいかがでしょう。