野球と言えば、やはりプロ野球や甲子園の高校野球を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。それらで使用されるボールは硬式と呼ばれており、ゴムで製造された軟式とは大きく異なるものです。さて、硬式と軟式の中間にあたるボールを使用するのが準硬式野球。ボールの中身は硬式とほぼ同じ。ボールの外側がゴムで覆われており「硬式と同じような使用感」、「硬式ほど危険ではない」、「ボールが飛びにくく、緻密な野球が求められる」と言った特徴を持ちます。
11月13日、全日本大学準硬式野球連盟設立75周年を記念した「全日本大学準硬式野球東西対抗日本一決定戦(JUNKO甲子園大会)」が、連盟初となる阪神甲子園球場で開催される予定でした。しかし、あいにくの雨でやむ無く中止。東日本選抜チームの中島健輔主将(日本大学)は「準硬式野球の歴史を変えるような大会に参加できて嬉しい。来年も開催できるよう、選手一同頑張っていきたい」と前を向きました。西日本選抜チームの大手美来主将(大阪経済大学)は「中止は残念だが、準硬式野球のこれからの発展につながるキーになったのでは。準硬式野球はまだ有名ではないけれど、皆さんの力も借りて頑張っていきたい」と語りました。
準硬式からプロへの道も
確かに、準硬式野球はテレビで放送される野球と比べ、知名度は高くありません。しかし、大学の準硬式野球というのは非常に多くの魅力が詰まっています。まず「誰もが入部でき、学生主体で運営している」というのが挙げられます。大学野球は「高校時代から名のしれた人が集まり、プロや社会人と言ったさらに先のステージを目指す4年間」というイメージを持っている人もいるはずです。強豪大学となるとセレクションもあり「気軽に入部」というわけにはいかないのが実情。一方、準硬式野球は野球が好きであれば誰でも入部できます。「野球は未経験だけれど、大学で本格的に挑戦してみたい」、「プロは諦めたけれど、野球は続けたい」「学業とアルバイトをしながらも本気で野球に向き合いたい」と言った人たちにぴったりのステージです。もちろん、女子の入部も増えてきています。
では、「大学の準硬式野球はみんなで楽しくやる愛好会的な感じなのか」というと、そうではありません。元高校球児も、プロへの道を諦めていない人もいます。2020年には福岡大学の大曲錬投手が、ドラフト5位で埼玉西武ライオンズに入団。これまで、準硬式野球出身のプロ野球選手は10人以上いるのです。楽しくやりたい人も本格的にやりたい人も、誰もが熱くなれるのが大学の準硬式野球。キャンパスライフと野球が両立できる、新しい野球との関わり方と言えます。
学生中心だからこその青春
残念ながら中止となってしまった甲子園大会。プロジェクトリーダーを務めた近藤みのりさん(愛知大学)は「数年前から甲子園でやりたいという話は出ていたが、コロナで先延ばしになっていた。今年、ようやくプロジェクトチームを発足させて、たくさんミーティングを重ねてこの日を迎えた。本当に悔しい。来年以降、後輩たちがもう一度甲子園での準硬式野球大会を実現させてくれると願っている」と話しました。
涙ながらに訴えた近藤さんを労うかのように、スタンドからは演奏が。本来、選手たちに向けて送るはずだったであろう応援メドレーが甲子園に鳴り響きます。選手たちは雨が降る中でも誰一人としてベンチに戻らず、グラウンドから応援席を見つめていました。
学生自ら企画、実現させるのが準硬式野球で一番の魅力かもしれません。確かに、今はまだマイナーな「ジュンコー」。それでも、熱い青春、熱い野球はここにもあるのです。